国会答弁で医工連携 (2019年11月6日衆議院厚生労働委員会)
厚生労働委員会
2019年11月の衆議院厚生労働委員会で吉田統彦委員より医工連携に関する答弁がありました。
【参考】衆議院: 第200回国会 厚生労働委員会 第3号 (令和元年11月6日)
【参考】吉田つねひこ: 【国会】厚生労働委員会 薬機法改正案に関する質疑 11月6日
珍しいこと
国会で医工学や医療機器開発などが話題に挙がることが非常に珍しいことです。
人工呼吸器や人工透析など、治療の一部としての機器が話題の上ることはあっても、その機器の開発や流通について議論されることは滅多にありません。
吉田議員は眼科医ということで、レンズ関連の話題にも触れていましたが、皆さんがわかりやすいところでペースメーカーを事例に出されました。
100%輸入品
欧米製の医療機器が悪いということは一切ありません。
現に、100%輸入に頼っている医療機器は、日本人の身体に使われ、ペースメーカーは年単位で植え込まれて使われ続けています。
ただし、1台数十万円~数百万円の機器がすべて海外製品という事は、海外企業の雇用や設備投資、仕入、納税などに費やされる対価を支払っていることになりなります。
まったく新しい医療機器で100億円市場を形成しようとすると容易ではありませんが、ペースメーカーの既存国内市場の3割も取れれば、恐らく100億円規模になると考えられます。
High risk, no challenge
ペースメーカーのように既存市場が欧米品で定着している上に、身体にとってリスクの高い製品の場合、中小零細企業やベンチャー企業がチャレンジするにはハードルが高くなります。
とはいえ、大企業もハイリスク医療機器に手を出さずともビジネスできるフィールドを持っているので、新規参入しようという機運にはなりません。
薬事承認が確実に得られるのか、保険償還は得られるのか、日本の先生(医師)らにファンになってもらい使用してもらえるのか。
色々と考えると、自ら資金調達して新規参入しようという人は現れないというのが現状だと思います。
昔の潜水艦などは国から声を掛けて、産学官連携で造られたと聞いたことがあります。
国の大号令で、目ぼしい企業を集めて、開発をする。
米国のNIH的なことができれば、国産ペースメーカーも作られるかもしれません。
国産品推進の周辺が欧米
『正座ができる人工骨は日本製のみ』ということで、座ってお祈りする国々へ日本製の人工骨を輸出していこうという動きがありました。
しかしながら、人工骨を足にインプラントする手術で使われる『手術用ナビゲーション』はストライカーやメドトロニックなど欧米製ばかりで、国産はありませんでした。
そうなると、国税を使って人工骨の輸出を推進することはできるが、手術手技の部分では人材を送り出すことはできるが手術環境については触れられないという事になり、アジア各国に手術室が整備されないので人工骨が輸出されない、という状況が起こりました。
このとき、国費で国産ナビゲーションを作れないかと経済産業省に頭を下げに行った覚えがあります。
そこに乗る企業を用意できていなかったことや、私の準備不足が色々とあったために前に進めることができませんでしたが、人工骨で頑張っているベンチャー的な企業群を医工連携専門人材として応援したい、と思ったことは間違いありません。
今後、同様のシーズ等と出会ったとき、もっと良い方法がとれるように日々勉強しています。
『この先は私が!!』と言って….
医工連携・医療機器開発の視察で米国ミネソタ州へ行ったとき、官民の連携と、民業としての相互連携体制のすごさを実感しました。
Medtronicの創業地であり拠点であるミネソタ州ミネアポリスには、多くの医療機器ベンチャーがあり、新規医療機器の開発に日々注力しています。
ベンチャー企業に薬事部門や法務部門などを設けるケースは少なく、外部に頼っていました。
ローファーム(法律事務所)には当然ながら弁理士や弁護士が居るのですが、それぞれが工学部や農学部など何かの専門課程を経て士業に就いているため、打合せの段階で複数の異なる専門を持った弁理士らが同席して話を進めます。
ほかに試作品を作る専門、非臨床試験の専門、治験を目指した動物実験の専門、治験の専門、保険収載の専門、いろいろな専門業者がありました。
そして、MedtronicやBoston Scientificなど大手医療機器メーカーが、どこかの時点でベンチャーを買収(M&A)すべく情報収集をしているという事も大きいと感じました。
TechnicianやEngineerしか居ないベンチャーでも医療機器開発ができる土壌が、米国ミネソタにはありました。
日本でも優秀なコンサルティング人材を育成し、適時適切な連携先を紹介し、低リスクで確実性の高い医療機器開発ができる環境づくりが必要だなと、常日頃から思っております。
商品に惚れ込み『それはオレが売ってくる』という心強い営業マンも見つけ、ニーズのある商品を、ニーズのある所へ少しでも早くお届けできるよう、当社でも努力して行こうと改めて思う答弁の議事録でした。
議事録
吉田統彦議員答弁議事録
○吉田委員
立憲民主党の吉田統彦でございます。
盛山委員長、どうもいつもお世話になっております。
本日は、大臣、三十五分間、よろしくお願いいたしたいと思います。
まず、この薬機法というのは、民主党政権時代に厚生労働省の皆様と私も一緒に立法作業をした、そういった法律でございます。七年経過して、法律の足らざるところがまた明らかになってきたところなんだと思います。そういった中で、法案、そして医薬品、医療機器行政にかかわるところを質問させていただきたいと思います。
まず、先ほど上野委員も触れられておりましたが、医薬品、医療機器に関するイノベーションという趣旨で質問をさせていただきます。
本年度も我が国では、ノーベル化学賞を、旭化成株式会社名誉フェローで、私の地元名古屋の名城大学の大学院理工学研究科教授を務めておられます吉野彰先生が受賞をされました。私も大変喜ばしいことだと思います。
また、私がアメリカ時代のメリーランドのジョンズ・ホプキンス大学のフェローであったころに共同研究者であったドクター・セメンザという方が、細胞が酸素の欠乏した環境に適応することを可能にするHIF-1を発見したこと等によって、本年度、ノーベル医学・生理学賞を受賞をされました。
その共同研究の中で、私の主著論文として二〇一〇年にファセブジャーナルに掲載された「ジゴキシン インヒビッツ レチナル イスキーミアインデュースト HIF-1アルファ エクスプレッション アンド オキュラー ネオバスキュラリゼーション」という論文があります。そして、私からアメリカ時代の私の研究を引き継いで、先月秋田大学の主任教授になった岩瀬という人物がいますが、彼が主著で、私とノーベル賞を受賞されたドクター・セメンザが共著となっていまして、二〇一三年にザ・ジャーナル・オブ・コントロールド・リリースに掲載された「サステーンド デリバリー オブ ア HIF-1 アンタゴニスト フォー オキュラー ネオバスキュラリゼーション」、こういった論文がありまして、こういったものも今回のノーベル賞の受賞に寄与させていただいたと私も自負をしております。
ノーベル賞の学者と一緒に研究して論文を書いた国会議員というのは余り今までもいないんじゃないかなとは思います。それを私は誇りに思っておりますが、これは、大臣、シーズの研究だったんです、シーズ。いわゆるジゴキシンという薬やさまざまな薬が薬としてのシーズとして力を発揮できるかどうか、そういった研究を私はノーベル賞学者と結構長い間させていただいて、今も実はそういった関係が続いているんですが、こういった研究を私もやってきた中で、日本において、こういう革新的な医薬品や、そしてさらに新しい医薬品のシーズに関する研究というのは、本当に日本は世界の最先端から大分おくれているのも、大臣、御存じでございますよね。
今回、法案には、さっき上野委員からもありましたとおり、先駆的、特定用途、そういったものが書かれています。しかし、これに加えて、戦略的に我が国に必要不可欠な医薬品、医療機器の応募、審査、承認についてお伺いをします。
今回の薬機法の改正では、先駆け審査指定制度、条件付早期承認制度の法制化、開発を促進する必要性が高い小児の用法用量設定などに対する優先審査などが定められていますね。また、AI等、継続的な性能改善に適切に対応するために新たな医療機器承認制度の導入を図るということで、必要な医薬品等への患者アクセスの一層の迅速化が図られているということで、これは私も、審査の一層の迅速化、すなわち、審査ラグの解消、そういったものに引き続く審査前のラグを解消する方向に進んだものと評価させていただきます。
しかし、翻って我が国の現状を鑑みると、これだけでは極めて不十分なのも、大臣、おわかりだと思います。
例えば、ペースメーカー、ございますね。大臣にはこの質問を前にもさせていただきましたね。国産のペースメーカーはゼロですね。私は眼科が専門でございますが、多焦点眼内レンズという、今とかく、いろいろとさまざまな、保険適用や、議論の俎上に上がっているこの医療機器は国産品は存在しないんですよね。現状は一〇〇%輸入に頼っています。これがどれだけ国益に反することか、大臣、もうよくおわかりですよね。こういった状況を厚生労働省としてどのように考えているのか。
私から提案ですが、まず、我が国に不可欠である、そして、医薬品、医療機器産業という観点からも戦略的に開発が必要な医薬品、特に医療機器については、今回法制度化した承認制度だけでは不十分ではないかと私は考えますので、例えば、前述したように、一〇〇%輸入に頼っていて、かつ日本の医療に必要不可欠な医薬品と医療機器を一度厚生労働省でしっかりとピックアップをしていただいて、おのおのに対して、場合により政府から声がけをして、開発可能な企業を選抜して助成金の支給などをする、そして、もちろん適切な審査と承認を、産官学一体となって集中的に、可能な限り短時間で製品化する努力をするつもりは、大臣、ないですか。
こういったことをやらないと、もう日本の今一〇〇%輸入に頼っている医薬品、医療機器が製品、商品となって日本国内で販売されるということは絶対ないと思うんですけれども、大臣、どうですか。
○加藤国務大臣
まず、吉田委員が一緒に研究された方のノーベル賞の受賞を改めてお祝いを申し上げたいというふうに思います。
その上で、医療機器ということを中心にお話をさせていただくと、私も、これだけ製造業、鉱工業が盛んなこの国において、特に、そうした製品で割と小さいというかダウンサイズしたものも非常にいろいろなものが出てきているにもかかわらず、医療機器に関しては余りない。さっき言ったペースメーカーとかさまざまなものが何でもっと日本で開発されないんだろうかという思い、これは私も一緒に共有をさせていただいているところでありまして、その一助になるということで、今回、今あります薬機法の改正もさせていただきました。
それから、これまで、御承知のように、PMDAをつくって、そこに厚労省、文科省、経産省が一緒になって一連の開発をしていく仕組みもつくらせていただいて、さらに、その中では、いわゆる研究内容に公費による支援が可能となるよう、プロジェクトの実施に当たっては、研究者から研究テーマや内容を公募により広く募集し、研究課題を採択する、こんなやり方をとらせていただいているところであります。
また、医療機器の開発に当たる人材をより手厚くしていくための、そうした皆さんが、企業で開発される人が大学病院等の臨床現場での研修、実習等を受け、医療現場のニーズに合った医療機器の開発につなげるための人材育成の事業等も実施をしているところでございます。
そういったさまざまな施策を通じて、国内におけるそうした医療機器の開発力を高めて、そして、まさに日本の患者さんによりフィットした製品が提供できるように努力をしているところでございますけれども、今委員から御提案がありましたそういったやり方、どこまで国産品に限定してやっていけるかどうか、いろいろな観点があると思いますけれども、ただ、共有するところは、そういった形での力をつけて、そして、それによって、日本の患者さんによりフィットするものが安定的に供給できる体制、これをしっかりつくっていくということは必要だというふうに思っています。
○吉田委員
大臣、ありがとうございます。
しかし、大臣、状況はかなり深刻なんです。私の地元、愛知県三河、大西議員もいらっしゃいますけれども、三河も、物づくり、特に医療機器産業、萌芽的なものはあるんですが、大臣、特にペースメーカーは絶対国産品をつくらないとだめですよ。中国も国産品をつくっていますから。
ただ、大変失礼ですけれども、今の政府のやり方ではペースメーカーをつくろうという企業は出てこないですよ、出てこない。それはもう私はわかりますよ。承認されるかどうかもわからない、どれぐらい時間がかかるかもわからない、そういった不透明な状況で、こういったペースメーカーを、手挙げを、相手が応募してくるのを待っている状況はもう今看過できないと思います。
だから、私の地元も、カテーテルの有名な東海メディカルプロダクツ、多分もう大臣は御存じですね、そういうすばらしい企業があります。そういった力のありそうなところに、ペースメーカーであれば機械を得意とする、そういったところに政府の方から、こういったものを開発する気はないかという声をかけてあげて、いろいろなルール、制約はあるかもしれないですけれども、そういった道筋をつけてあげて可能性をしっかり提示させてあげないと、特にペースメーカーは僕は無理だと思います、残念ながら今のままでは。
多焦点眼内レンズ、大臣もいつか白内障の手術を受けられるかもしれませんね。そのときに、今、多焦点レンズというのが、自費ですけれども、結構使われるようになってきました。これはほとんど欧米のものですよね。全部欧米のものですよね。日本は、これから一億総活躍と政府がおっしゃっていて、人生百年社会と言っているわけで、必要性は高まってきますよね。
ただ、今のまま手をこまねいていると、これも開発する力がある企業はあると思いますよ。しかし、これもやはり、今のまま放置をして相手が手を挙げてくるのを待っているだけであれば、絶対に日本では手が挙がってこないですよ。
大臣、だから、ここはもうちょっと踏み込んだ御答弁をいただきたいんですよね。やはり、そういったことをまずピックアップして、どれが必要なのか、必要不可欠、そして市場規模とかも調べていただいて、産業になって、雇用、そして税収だって最終的に生んでくるわけですから、大臣、この危機的な状況を鑑みて、少しのんびりした御答弁だったので、ここだけに特化してもうちょっとしっかりとした御答弁をいただけませんか。
○加藤国務大臣
済みません、さっきちょっとPMDAと申し上げたのはAMEDの間違いだったので、訂正させていただきたいと思います。
別にのんびりしているわけではありません。今委員御指摘の、なぜ開発されないのか、どこに要因があるのか、これはいろんな理由があって、私も、そういうメーカーの方に、何で開発しないんですか、市場規模は一定あるではないですかという中で、いろんな課題があるということをお聞きをさせていただきました。
改めて、今委員御指摘の、特にこれからにおいて必要なものに対して、まず、安定的な供給を国内において、しかも、かつ日本人の方にフィットするような形で提供されるという面において、どういう機器が必要なのか、そして、それがなぜ、企業が力がありながら、力がなければ仕方がありませんが、技術的に力があるにもかかわらず開発されないのか、その辺をしっかりと分析をさせていただいて、我々の方で乗り越えられる部分があれば、しっかりそれを乗り越えていけるように努力をしていきたいと思います。
○吉田委員
ダビンチなんかも中のものは結構国産のものが使われていますので、国産のダビンチなんというものもそのうちできてくるといいと思いますが。
大臣、じゃ、ちょっと関連で、次のお話をさせていただきます。
重ねて申し上げますけれども、国内の製薬会社、医療機器メーカーの自主的な開発だけじゃなくて、やはり健康・医療戦略として、大臣、本当に考えていただきたい。ぜひしっかりと、企業が手を挙げていただける環境をつくっていただくことをお願いしたい。
そこで、もう一点、日本は、野心的なベンチャー、特に医療機器だと思うんですが、医薬品も欧米では野心的なベンチャーが結構手を挙げて、しっかりアカデミアとタッグを組んでやるんですね。私も、補体というものを抑える成分のシーズを日本において猿に対して投与するという実験をしたこともあります。これは欧米の薬だったわけですが。
あと、アカデミアが深く関与したり、若しくはつくり上げてきたベンチャーがやはり日本は弱いですよね。私がジョンズ・ホプキンス大学時代にお仕えしていたピーター・カンパチアロという教授は、積極的にそういった自前のベンチャーなどをしっかりと用意して、そこから今度、治験に入る新しい薬なんかも出てきているわけなんです。
そういったアカデミアと非常に密接な関係にあるベンチャーだとか、野心的な若い人たちがやるベンチャー、そういったものを特に支援していくようなことを何かお考えですか。
○加藤国務大臣
革新的な医薬品、医療機器を研究開発するためには、本当に、そうしたベンチャーあるいは非常にアイデアを持った方々がそれをどう具体化していくか。日本でもかなりそれに取り組んでいる方がおられますけれども、拡大していく規模感からすると、アメリカ、欧米に比べると、今委員御指摘のように、随分彼我の差があるなということは感じております。
一体、じゃ、なぜ拡大できないのか。資金を集める、集めないというのは、これはあるのかもしれませんが、それ以外に、開発から実用化を進める中において、私どもの所掌でいえば、薬事規制がどうなっているのかとか、保険制度が実際どうなるのかとか、そういった知識がある中でビジネスを描いていかなきゃいけない。
そういったことを支援をしていこうということで、専門家から支援を受ける相談窓口を厚生労働省に設置をして、去年の二月からですけれども、一年八カ月で三百件近い相談もあります。
そうした相談に応えるということと同時に、相談内容をもう少し分析しながら、そこにおいてどういう支援が必要なのかということもこれから考えていかなきゃいけないというふうに思います。
○吉田委員
ぜひ、大臣、積極的にその辺は、野心的なベンチャーがしっかりと頑張れるような素地をつくっていただいて、また、相談窓口は本当に大事だと思いますね。彼らもそういう薬事行政の専門家でもないわけですから、もともとが。アイデアはあっても、法に照らし合わせて、規制、どのような承認をするか、わからない人も中にはいるわけですから、そこはしっかりとやっていただいて、こういったベンチャー企業がどんどんといろんなシーズの開発等に突き進んでいただきたい、そのように考えます。
次の質問に移らせていただきます。
今回の改正案の中に血液法の改正も含まれますね。それに関連してお伺いしたいんですが、まず、血液製剤の有効活用という部分に関して伺いたいと思います。
現在、我が国では、血液製剤が廃棄される確率というのは約一%と聞いております。確かに、この比率を聞くと低い確率であるようにも感じます。しかし、実際に私も研修医時代に、日赤の血液センターに病院から派遣されてアルバイトに行ったことがありますが、輸血の現場や、また輸血をお願いする現場からすると、一%というのは結構大きな廃棄量だなという印象を常々受けています。
日ごろから、血液が不足していますといってさまざまなところで輸血の協力のお願いをしてくださる方々がいますよね。こういった状況を考えると、血液製剤の廃棄をより少なくする必要というのは、絶対に努力する、そして対策をするべきではないかと思います。
もちろん、血液製剤は厳重な管理が必要です。温度管理は特に重要ですね。そういった中で、ただ、今はちょっとルールが欧米に比べても厳格過ぎる部分があるんじゃないかなというのは感じるんです。
適切な管理が可能な限り、例えば医療機関同士で融通し合う、そういったことが可能なのかどうかということを大臣にお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣
まず、制度としてでありますけれども、医薬品医療機器法等において、輸血用血液製剤を含む医薬品について、その品質、有効性及び安全性を確保するため、卸売販売業の許可を受けた者の適切な管理のもとに供給するという制度になっておりまして、医療機関間で融通することは認められておりません。
また、卸売販売業というのは営利でありますから、一般の医療機関がそれをとるというのも、例えば、社会医療法人のように別途業務ができればともかく、一般的には卸売免許を受けるということは余り想定されていないと思います。
ただ、その中で、卸売販売業の許可を受けていない医療機関同士において、夜間に大量の出血があって自分の手持ちが不足しているから、貸すというか、近くの病院からもらう、そういった融通については、これは法律には抵触していない。すなわち、緊急に融通することは業には該当しないという解釈でありますから、その辺が余り周知されていなければ、しっかり周知していく必要があると思います。
また、輸血用血液製剤は、きちんと病院内でうまく管理することによって、随分廃棄率の低いところ、〇・一%を切っているところから、場合によっては四%、五%廃棄しているところ、かなりばらばら感があります。したがって、特に廃棄率が高いところに対しては、供給されている日赤を通じて、大事なものである、管理をしてほしい、そういったことのアプローチを含めて、適正な管理がなされ、廃棄率が減少されるように引き続き取組をしていきたいと思います。
○吉田委員
ありがとうございます。
今、大臣は緊急避難のお話をしていただきましたね。確かにそれも絶対必要。
大臣、ちょっと確認で、私のところにレクに来ていただいた方が、医療機関も事業所となることができるような趣旨のことをおっしゃっていたんですが、大臣の今の御答弁だと、医療機関が、卸というか、血液製剤を融通する、これは業としてすることはできないんですか、それとも、その登録は可能なんですか。
○加藤国務大臣
すなわち収益事業ということになりますから、非営利が原則の医療機関がするということはできませんけれども、先ほど申し上げた社会医療法人のように、収益事業を別に行って、そこの事業をまた自分の医療に取り込むという仕組みを持っている、そういったところであれば、先ほど申し上げた卸売販売業の許可を受けること、これは可能だと思います。
したがって、全てではありませんけれども、一部には可能な機関があるということであります。
○吉田委員
よくわかりました。大臣、ありがとうございます。
なぜ廃棄されてしまうか。多くの場合は、やはり患者さんが亡くなってしまうんだと思いますね。予定されている輸血をしていく方が、不幸なことに寿命が来て亡くなってしまう。その分の血液が多いんだとは思います。
そういった中で、先ほど、緊急避難的な話もしていただきました。実は後で聞こうと思っていたんですけれども、例えば、大臣は御存じだと思いますが、Rh抗原というのがありますね。D抗原がない場合はRhマイナス、Rh陰性というんですけれども、これは日本人が実はすごく少ないんですよ。白人は一五%、Rhマイナスがいるんですけれども、日本人は〇・五%しかいないんです。だから、RhマイナスABというパターンだと、二千五百人に一人以下と一応統計上は言われています。計算上はもうちょっといるはずなんですけれども、ちょっと少ない。そういった方の緊急避難的なときは、そのルールを度外視してもやっていいという理解ですね、大臣。そこは改めてここで確認させていただきます。ぜひ、貴重な血液製剤が無駄にならない努力は今後も行政としてしていただきたいと思います。
さて、その血液製剤に関してなんですが、我が国は、大臣、今、在宅医療の推進ということで、厚生労働省がさまざまな施策を行っていることは大変に国民の皆様にも浸透して認識されていると思います。現に、厚生労働省のホームページにはこうやって書いてありますね。在宅医療の推進のページで、「重度の要介護状態となってもできる限り住み慣れた地域で療養することができるよう、在宅医療の推進施策を講じています。」と書かれています。それは確認しました。
ところが、現状では、大臣、白血病、MDS、リンフォーマ、ミエローマといった血液の悪性疾患の場合、ターミナルの状態を迎えてくる中で、在宅で輸血をしたり血液製剤を投与するということがなかなかできない、されていないという現実があります。
そこで、大臣にまずお伺いするんですが、厚生労働省として、輸血や血液製剤などの在宅投与ということに関しては今後推進をしていくおつもりがあるのでしょうか。
○加藤国務大臣
まず、一般的に、多くの皆さん方が、やはり自宅での療養、生活を送りたいという希望を持っておられる。また、それを尊重して、住みなれた生活の場において必要な医療が受けられるようにしていく、これは私たちの務めだと思います。そういった意味で、今御指摘のあった、在宅でも患者の方が輸血を受けながら療養できる体制を整備すること、これは非常に重要だと思います。
ただ、輸血ということになると、やはり、さまざまな管理が適正に行われていくということで、十分な知識や経験を積んだ医師の方が、また、副作用対策を含む医学的な管理の適切な運営が求められるわけでありますから、そこがしっかりしていく中で、在宅におけるそうした輸血を受けながら治療できる体制をつくっていく。
そういった意味で、在宅赤血球輸血ガイドというのがあるようでありますけれども、そういったものを通じて、在宅医療に取り組もうとしている医師や看護師の方々にそういったガイドの中身をよく周知していただいて、今申し上げたような在宅における輸血を受けながら療養できる体制の整備、これを我々は積極的に進めていきたいと思っています。
○吉田委員
大臣、ありがとうございます。
ちょっとこれは局長に事務的なことなので伺いたいんですけれども、逆に、今、そういったアカデミアや学会というのは、こういう部分に関していろいろな提言などをしてくると思います、厚生労働省に。こういった血液学会を含めた各学会から、逆に、在宅における血液製剤、輸血に関して、今、厚生労働省には、行政としてしてほしいというどんな要望が、局長、上がってきていますかね。これは私、通告を簡単にはしておきましたけれども、局長、お願いします。
○樽見政府参考人
恐縮でございます。
具体的に在宅で輸血を進められる体制をつくってほしいという形での要望では出ておらないということでございますけれども、先ほど大臣から申し上げました在宅赤血球輸血ガイドというようなものをつくっています。こういうものについて進めていくべきだということについてのお話を伺っているというふうに承知をしています。
○吉田委員
私が現場で聞くと、具体的な要望なんかも出しているというふうに聞いているんですが、局長、ここは、レクに来ていただいたとき、そこに関しては少しディスカッションしていただいているんですが、具体的に本当にないですか、局長。
○樽見政府参考人
失礼しました。
AMEDの研究事業で、さらなる適正使用に向けた血液製剤の使用と輸血療法の実施に関する研究というものをやっておりまして、これをやるということについて要望をいただいて、これをやっているということでございます。
○吉田委員
私もそのAMEDの研究のことを聞いておりましたので、ちょうどレクのときに。そこをもうちょっと具体的にお話ししてほしかったんですけれども、また今度で結構です。ここはそのときお話ししていますから、結構細かく。ごめんなさい、通告として明確にしてはいなかったので、もうそれで結構です。わかりました。
大臣、今後これを進めていくとしたら、やはり細かくカテゴリー分けをするなどして、さっき大臣がおっしゃったように、厳格なルールやリスクというのもあります。岡本議員は血液内科ですけれども、血液内科だった医師がやはり一番なれてはいるんですよね。やはりそういった方々が在宅でそういうものをしっかりやっていけるようなカテゴリーやいろいろなルールもつくっていただいて、推進されるといいんじゃないかなと思っております。
では、次の議題に行きたいと思います。
本法案の課徴金について大臣にお伺いをさせていただきます。
景品表示法では、不当表示の課徴金は三・〇%となっていますね。しかし、今回の改正では、虚偽、誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に係る課徴金制度を導入するということですが、これについて一律に四・五%と決まっています。この四・五%の課徴金の比率の根拠を簡潔にお聞かせください。
○加藤国務大臣
課徴金というのは、そもそも、事業者による違反行為に対して経済的不利益を課すことで、今回の場合は広告ですから、広告違反を行う動機を失わせて抑止力を高めようという意味であります。
今回の算定率でありますけれども、医薬品等の製造販売業者における営業利益率は他の業態に比べても高いということから、医薬品等の製造販売業者全体の営業利益率の中央値、これを参考として四・五%ということにさせていただく。
また、一律というのは、ほかの景品表示法の課徴金算定等も基本的には一律の率、場合によっては製造業とか分かれてやっている独禁法みたいな例もありますけれども、基本的には一律でやっているので、四・五%で一律というふうになっていると聞いております。
○吉田委員
四・五が適正かどうか今後また検討されていかれるとは思うんですけれども、薬というのは、やはり研究開発に非常に、大臣、お金がかかりますね。一旦つくり上がってしまうと、これはいかにも言い過ぎだと思うんですけれども、昔、MRの方が、薬はできてしまえば後は製造にほとんどお金がかからないとか、そういったことをおっしゃる方も、これは大げさだとは思いますよ。だけれども、そうやっておっしゃるぐらい、できてからの利益率が高いんですよね、大臣。
そうすると、私が以前質疑で取り上げた抗VEGFヒト化モノクローナル抗体だとかヒト型抗ヒトPD―1モノクローナル抗体、こういったものも非常に高価ですよね。原価がそんなにかかっているとは思えませんね。原価はそれなりにあるんでしょうけれども、あの莫大な金額の中のどの割合かということは、いろいろ考えるところがございます。ディオバンというのも、あれも当然高価な薬だったわけですね、開発不正があったと言われた。
そういった中で一番大事なことは、研究というのはチャンピオンデータというのが出るんですよ。一番理想とする自分の仮説に基づいて一番いいデータというのが出る。しかし、その再現性というものが非常に大事なんです。研究開発のときもまたしかりなんですよね。研究開発のときも、そのチャンピオンデータが再現できるかということを繰り返しやっていくということが非常に大事なんですが、やはり、科学と論文は、本当に研究者、科学者の良心にかかるところが非常に大きいんですよね、大臣。
そこで、やはり、立ちどまって再現性というのを重要視するためには、ある一定程度、課徴金をもうちょっと上げるべきものは上げたり、もうちょっと逆に下げるべきものもきっとあるでしょうね。利益率が低いけれども必要なもの、こういったものもあるわけですが、課徴金というのは違反した者にされるものなので、いろいろな思いはあると思うんですが、逆に、四・五%で一律にするということが本当に正しいのかどうか、またゆっくり考えていただきたいと思います。
結局、本当にチャンピオンデータを絶対に出してくるんですよ。例えば、時間がなくなってきましたけれども、STAP細胞の問題だってそうだと思うんですよね。あれは意図的に捏造したのかもしれないし、ES細胞が混入した結果をチャンピオンデータとして、そこに固執し過ぎた余り捏造が起こったのか、ちょっと私はわかりませんけれども、研究開発というのは、チャンピオンデータというものが出てしまうと、それをどの程度しっかり再現していくかということがやはりかなり大きな課題になってくるんです。
ここに関して、やはり、人の命にかかわる医薬品、医療機器に関してしっかりとした再現をとっていく、本当に信頼できるデータを出していく、そういったことの抑止にある程度はなるようなものにもなる必要があるのかな、そのように考えますので、大臣、私の話を今聞いて、いかがお考えになられますか。
○加藤国務大臣
これは、基本的に広告に対する課徴金。今委員が御指摘になったのは、それがずっとつながっていって、研究開発における姿勢という部分にもつながっていく、多分そういうお話なんだろうと思います。
今回一律にさせていただいたのは、先ほど申し上げた景品表示法、他の制度においてそうなっているということと、今度は、余り複雑にしちゃうと、どういう場合にどういう課徴金がつくかわからないという観点もあって、今回はこういうことにさせていただいたということでありますけれども、ただ、これに関してもいろいろな御意見があります。今も言われたように、それぞれ利益率もかなりばらつきがあるのではないかとか。
したがって、施行後において、実際、抑止効果がどうなっているのか、あるいは、ほかの法律の制度においても多分同じ課題を抱えていると思いますから、そういったところでの議論がどうなっていくのか、そういったこともしっかり踏まえながら、必要に応じた検討をしていくという姿勢で取り組んでいきたいと思います。
○吉田委員
時間が少なくなってまいりましたが、次は、消費増税の影響。特に、先ほど安藤委員からもお話がありましたが、院内調剤を持っている病院はかなり苦しいですよね、今回の消費増税の影響。
まず、今回の消費税の税率引上げについて、医薬品にどのような対処をされるのかということを簡潔に大臣からお話しいただきたいと思います。
○加藤国務大臣
医薬品に対する課税ですか。
医薬品に対しては、もちろん、事前にかかっていたところを反映していくということでありますけれども、医療に関して言えば、基本的には、初再診料、入院基本料、ここを中心に前段階でかかってきた消費税について配慮する、そういうことで対応しております。
○吉田委員
大臣、ありがとうございます。私の質問の仕方が悪かったのをしっかり解釈いただいて。
大臣、そうすると、院内調剤を持っている医療機関と院内調剤をほとんどしていない医療機関、一律にそういった対応をされているわけですよね。そうすると、院内調剤を保持したり、ある程度の規模の院内調剤をやっている医療機関というのは、非常に負担が更に増すということになりませんか。ここに関してはどのようにお考えになりますか。
○加藤国務大臣
それぞれ、今、院内調剤もあります。それから、それぞれ病院によって、どういうことをやっているかによって診療内容の構成も違います。
ですから、本当に個々に見て一つ一つチェックして消費税の影響を加算していくという考え方ももちろんあるんだろうと思いますけれども、そういったことも踏まえながら、中医協において、今回の議論においては、初再診料、入院基本料、ここで乗せていく、そういう結論になったということでありますから、おっしゃるように個々で見たら、Aという病院とBという病院と診療の中身が違いますから、今回の消費税の反映の仕方においてある程度の差がつくというのは、それは先ほど申し上げた形で今回の消費税を処理しておりますから、そうした面はあるというふうに思います。
○吉田委員
大臣がおっしゃるとおり、それは個々の細かい診療内容の違いに全部対応なんて不可能ですよね。おっしゃるとおりで、一律にされるのはいいんですが、ただ、明確に院内調剤というのは、明らかな形で損税分をふやすわけですよね、おわかりになると思いますけれども。納入するときにはかかるし、あと、設備費、いろいろなものが必要になってくるわけですから。
先ほど来、安藤委員からもあったんですけれども、今本当に、院内の薬剤師さんは人材も枯渇しているし、なかなかなり手がいない。そして、いい人材を集めたくても、なかなか給料がしっかり払われない中で、院内の、例えばオンコロジー、もう時間が参っておりますので簡潔にしますが、がんの治療なんかをしていく場合に、薬剤師さんはかなり能力の高い方に参画していただいた方が患者さんにとってメリットが高いわけです。
しかし、そういった現状がある中でここを対応しないということは、明確に院内調剤にしわ寄せが来て、薬剤師さんの病院における確保や患者さんの利便性に影響する可能性が極めて高いと思って、あえてここだけ大変恐縮ですが切り取って、大臣の見解を伺っているんです。
大臣、診療報酬改定における一律の増額分でここの院内調剤の充実というところは担保できるとお考えかどうか、最後にちょっとお伺いしたいんですが。
○盛山委員長
時間が参っておりますので、簡潔に答弁をお願いします。
○加藤国務大臣
そこは、まさに中医協でいろいろな立場から議論された結果でありまして、じゃ、調剤を足すと、ほかのものがどうなのかという議論も多分あるんだと思います、個々の診療行為ごとに物を見ていくということでありますから。そういった意味で、今回、中医協においてこういう御判断をされたことを我々は受けとめさせていただきました。
一方で、委員御指摘のように、薬剤師、特に病院勤務の薬剤師さんにおいて、病院にもよりますけれども、人手が不足しているということは承知をしておりまして、これまでも、診療報酬上、そういう対応を加味した診療報酬改定もさせていただきました。それが処遇にもつながっていくんだろうと思います。
そういったことを通じながら、院内における薬剤師さんの役割、これも非常に重要であります。特に、これからチーム医療等を含めて大変大事でありますから、そういった観点をしっかり持って今後とも取り組んでいきたいと思います。
○吉田委員
質問を終わらせていただきますが、大臣、しっかりと注視して、今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました。