避難所を想定した温度調査の公表(自験例)
弊社の主要事業であるBCP(事業継続計画)策定支援で用いるデータの多くは行政資料や論文等を引用させて頂いております。当然ながらお客様も他社様も同じデータを利用することができます。
より付加価値の高いサービスの提供を目指し、私たちは自験例の積み上げに努めております。
今回公表させて頂くデータは、避難所となる体育館を想定し、コンクリート上の温度を独自に調査しました。本調査は昨年夏にも実施しておりますが、今回は冬の調査結果を得ましたので公表致します。
調査場所となった兵庫県伊丹市は約25年前の阪神淡路大震災で震度6を記録、今回の調査場所の敷地内では住宅が倒壊するほどの被害がありました。震災のあった1月、寒い中で避難所生活を強いられた住民が多く居る地域であることを回顧し、調査を実施しました。
結果を見ると日影の温度は12月の調査では約10℃、8月の調査では約30℃でした。10℃の床上で何時間も過ごし、毛布1枚で寝る事は過酷であることを察することができます。また夏場には床上で30℃となり、トイレ事情が悪い避難所では水分摂取を控えてしまう被災者も少なく無いため、熱中症の危険が迫りやすいことが予想されます。
今回の公表結果以外にも1週間の変動や地方気象台のデータとの比較なども行っており、さらに精査を進めてお客様のBCP策定に役立てたいと考えております。
私たちは根拠に基づくサービスの提供を目指し、新たな調査・研究を進めて参ります。
2020年1月3日
NES株式会社
試験概要
標題
避難所を想定した屋外温度調査
方法
- 温度計を3個用意し、3箇所の温度を1分間隔で測定
- 測定箇所Aは壁の無いテントで作った日影の高さ1mの温度
- 測定箇所Bは1日中直射日光が当たらない日影に置いたブロックの下の地表面
- 測定箇所Cは昼間に直射日光が当たる日なたに置いたブロックの下の地表面
- 結果をグラフにまとめて考察
期間
2019年8月の3日間、12月の3日間、各日0時~24時
実験者
西 謙一(臨床工学技士・電気工事士)
場所
NES株式会社 (兵庫県伊丹市野間5-10-13)
結果
夏・冬ともに日影は温度変化が少なかった。
夏の昼間、日なたでは45℃を超える時間があり、35℃以上が5時間以上続いた。日影であってもほとんど30℃程で推移した。
冬は気温から大きく差が出ることなく推移した。日なたでは1日の温度差が10℃以上ある日もあったが、日影では概ね10℃で上下幅少なく推移していた。
夏・冬ともに健康上の危険が迫る可能性があると考える。
夏日や熱帯夜の基準温度である25℃を下回る事は一度もなかった夏場は常に汗ばむような気温であり、体育館のような人が密集する場所では湿度が高まり、熱中症リスクが高まると考える。また、避難所はトイレ事情が悪いため水分摂取を敬遠する人が多くなることが既知であり、水分補給の少なさが熱中症リスクを更に高めると考える。
阪神大震災や東日本大震災が発生した冬場は、気温が高くならないため避難所でも寒い状況が続く。本調査でも15℃を超えたのは日なたで僅かな時間であり、10℃前後が長時間続いた。食品衛生法では冷蔵を10℃以下と定めており、気温10℃は正に冷蔵庫並みと言える。深部体温が35℃以下になれば低体温症を発症し生命危機にもつながりかねないため、毛布1枚で過ごす事となる避難所では体温維持のための方策が不可欠であると考える。