Press release
簡易フェイスシールドのための3D造形試作とデータ無償提供
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により『医療崩壊』の危機に直面しています。
新型コロナウイルス感染症陽性患者は感染症指定医療機関での対応に限定されていましたが、現在では軽症者等をホテルや自宅で療養させる措置がとられています。
新型コロナウイルス感染者の診療を行っていない医療機関にも、外来受診等で偶発的に患者が来院する可能性があるため、平時には行わない高いレベルの個人防護が実施されています。
このような状況の下、マスクやガウンなどの個人防護具は不足し、医療機関では再使用するなど苦肉の策で対応しておりますが、絶対数が足りないため再使用してもスタッフ全員分の確保は難しい状況です。
3Dプリンタを用いたフェイスシールドのフレーム提供の動きが世界中で起きていることから、当社でも微力ながら3D造形を開始し、その造形に用いたデータの無償配信も開始しました。
試作品として、3Dプリンタをフル稼働させ、3Dデータを用いた3D造形を継続しております。
この簡易フェイスシールドフレームを試してみたい先生、評価してみたい先生、物資が無いから何でも良いので使いたい先生、ご一報頂ければお送りいたします。
非常時ですので、医療機関様に限らせて頂きます。
材料費、制作費、送料は当社負担とします。
評価用として2個をお送りします。
2020年4月16日
2020年4月25日
NES株式会社
簡易フェイスシールド
フレーム
私たちの制作したモノはフレームです。
画像では、額に当てている青色の樹脂製品が造形物です。
シールドの要となるフィルムを作る技術はありませんので、フィルムは現地調達となります。
また、頭に固定するためのゴムや紐も3Dプリンタでは作れませんので別途調達します。
造形データ
3Dプリンタで造形するための元となるSTLデータを公開しています。
登録などは不要で、下記ファイルをダウンロードして頂ければ無償で利用できます。
サイズは縦108mm、横198mm、高さ8.8mmです。当社で使用している3Dプリンタは225mm×145mm×150mmまで造形できますので問題ありませんが、機種によっては造形台に収まりませんのでご注意ください。
フィルムを挟むためのスリットがあります。3Dプリンタの精度によりスリットの厚みは変化しますが、概ね千円札程度の厚みの物が1枚~数枚程度挟めます。
左右にゴム紐を掛ける穴が飛び出ています。穴径は3.5mmです。
3Dプリンタの制御の問題で半月状の曲線部が倒れてしまうことがあるため、サポート材として底面だけ1層、薄く塗られる仕様になっています。
ロゴなどは入っていません。
造形データを制作するにあたり、米国NIHのライブラリが多くの事を示唆して下さいました。
デザインは”Magarin Dynamics PPE Face Sheild”に近いですが、ゴムバンドの脱落は危険であるため穴に通すようにしています。なるべくフラットに頭に沿うように、紐穴はサイドに飛び出させています。
フィルムの固定については、フィルムに開けたパンチ穴で固定すると割れやすいことが既知であったため、フィルムを挟む方法を採用しています。
スタック式で1回の造形で何本も作れるというデザインも多く見られましたが、最初に1本目の造形でコケると上の段のすべてが失敗するので採用は見送りました。
NIH: NIH 3D Print Exchange, Magarin Dynamics PPE Face Sheild
NIH: NIH 3D Print Exchange, Stackable Face Shield – Works With Any Screen
造形品
手元にある3Dプリンタをフル稼働させて試作を重ねています。
材料はABS樹脂とPLA樹脂の2種類、色は灰色(ABS)、白色(PLA)、青色(PLA)の3種類です。
シンプルな半月状の造形品ですが、造形に1時間半ほどかかります。
シールドとゴム紐無しの状態ですが、連携先である医療機関へ無償配布して評価して頂いております。
評価を希望する医療機関様がございましたら、お知らせ頂ければ『2個』お送りいたします。お問い合わせフォームをご利用ください。
材料費、制作費、送料は当社負担とします。非常時ですので、医療機関様に限らせて頂きます。
数に限りがありますので、先着順に配送手配させて頂き、応募多数の場合は打ち切りさせて頂く場合もございますので、予めご了承ください。
費用負担してでも調達したいという場合には別途ご相談ください。当社の3Dプリンタではなく、連携先の3Dプリンタの空き状況などを確認します。
造形品の使い方
このデータで造形した場合、1つだけ取り除いて頂くパーツがあります。
カッターナイフが無いと切り落とせないと思いますので、ご面倒ですがナイフをご用意ください。
造形直後
造形直後の形は三日月形、フレームのスペースは薄い板で埋まっています。
切り落とす
半円状のフレームの間にある薄膜のような部分を、カッターで切り落とします。
1回で強く切り落とすよりは、少しずつ傷つけるようにして、ときどき薄膜部を指で押すなどして外れないか確認します。
シールド取付
フィルム等の何らかのシールドを取り付ける位置は、半円の最外周の内側にあるスリットです。
3Dプリンタやフィラメントの調子によっては、このスリットが埋まってしまっていることがありますので、隙間を見つけて広げます。
隙間がうっすら見える程度でくっついてしまっているときは、カッターナイフで傷をつけて、定規やマイナスドライバーなどを挟んで広げます。
ゴム・紐
頭にどのように固定するかは任意ですが、ゴムや紐などをフレームのサイドにある穴に通します。
私たちの造形品の特徴
文房具や事務用品を使う事もできるように配慮しスリット部は約28cmあり、A4判のラミネートフィルムやクリアホルダが入る様になっています。厚みにも配慮しています。
事務用品ではなく、医療用のシールドであってもサイズが合えば装着できるため品薄状態が解消された後もお使いいただけます。
半月状のバインド部は、A4判なら21cmの幅でホールドしますので、パンチ穴など点で支える物より安定し、脱落してしまうリスク低減を図っています。
医療従事者から『落ちてしまったときが危険』と強く要望を受けていましたので特に注意しました。
額(おでこ)に当たる部分は柔らかく仕上げており、女性の多い看護師さんの小顔にもフィットするように配慮しています。
バインド部とおでこのフィット部との間には数センチの空間がありますので、鼻が当たる事も無く、メガネを掛けていてもフェイスシールドとして使えます。
頭への固定方法はゴムバンド等で全周的に行います。
ヘアバンド型で全周を囲っているため、耳にかける眼鏡フレーム型に比べて脱落のリスクが低いと考えています。
ゴムバンドが使えるため、個人の頭の大きさに調整がしやすくなっています。
3D造形する際、なるべく時間を短くしたいと思い高さを低くしています。1cm未満でありながら、おでこにフィットする程度の高さを残しています。
世界中で様々なデザインが出ていますので、お使いやすい物をご利用なさると良いと思います。
A4判シートでつくるシールド
透明度や歪みなどを考える、医療従事者のためには市販の専用シールドを使って頂きたいのですが、急場をしのぐために事務用品を使う場合には、型紙を利用して使いやすい形に加工して頂ければと思います。
準備して頂く物はA4判のシート類と、ハサミです。
型紙の線は目安なので、厳密に合わせて切らなくても大丈夫です。
文房具
いま、医療機関では手元にある文房具を使った防護具が作られています。
フェイスシールドはクリアホルダとクリップを使って顔の前に遮蔽板を固定する試みが行われています。
クリップは金属製のゴツイ感じの製品が多いため、フェイスシールドやマスクの固定に使うには、顔や頭に違和感を覚え、また床ずれのようになってしまう場合もあります。
クリアホルダの新品が無く傷だらけで透明でないことやそもそも半透明製品の方が多く流通している事で困っておられます。
私たちの検証では、ブック型のクリアホルダや、OHPフィルムが透明感や厚みなどがちょうど良かったです。
厚さ0.1mmとは、だいたい日本の紙幣の厚さと同じくらいです。
レールクリアホルダ(ブック型)
PET素材のレールクリヤーホルダーは透明度が高いです。冊子を保護する目的の商品なので、フィルムは1枚で構成されており、中央の折り目でカットすれば2枚取れます。目的外使用なので仕方ありませんが、反射します。 |
OHPフィルム
2000年頃までは講演等でも多用されていたOHPフィルムです。医系の講演では100枚以上のOHPフィルムが使われることもあり、大学や病院には普通に在庫がありましたが、今はほとんどが処分されてしまったようです。商品によってはやや薄いなと思う物もあります。プリンタで印刷したり、油性ペンで描き込んだりできますので、ゾーン分けや個人名記入などができます。 |
他者の形状
ハサミを使って自作
手元にある文具を使って自作する事例が発表されています。
カードケース+スポンジ
ANA(全日空)のグランドスタッフ(地上係員)が考案したものです。
文房具のカードケースを切って使います。
産経新聞: ANAスタッフがフェイスシールド製作 コロナ感染防止策 (2020年4月17日)
朝日新聞: ANA地上職員がフェースガード自作 発熱者応対で着用 (2020年4月20日)
Aviation Wire: カードケースをフェイスシールドに 羽田のANA地上係員が自作 (2020年4月21日)
市販眼鏡+クリアファイル(文具)
東京五輪のトーチをデザインした吉岡徳仁さんが、自作できるフェイスシールドの設計図を公開しています。
TOKUJIN YOSHIOKA+TYD: Easy-to-make FACE SHIELD
TOKUJIN YOSHIOKA+TYD: Easy-to-make FACE SHIELD Template (DropBox)
読売新聞: 簡易フェースシールドの作り方を公開…聖火リレーのトーチ手がけたデザイナーが考案 (2020年4月19日)
他者の形状
3Dデータ
世界中でフェイスシールドの3Dデータが公開されています。
参考までに、わかる範囲のデータを掲載しておきます。
大阪大学
大阪大学大学院医学系研究科にある次世代内視鏡治療学共同研究講座(プロジェクトENGINE)の中島清一先生が発信しているフェイスシールド用のフレームデータです。
新聞やテレビで大々的に報道されましたので、恐らく日本で一番認知度が高い製品だと思います。
3D造形データ以外にも、組み立て方の動画なども閲覧することができます。
次世代内視鏡治療学共同研究講座 (プロジェクトENGINE)
NIH (米国保健福祉省 国立衛生研究所)
アメリカのNIHが各種シールドのデータを集めて公開しています。
NIH公認というかどうかわかりませんが、多種多様な物が用意されています
PRUSA RESEARCH(プルサ・リサーチ)
3Dプリンタユーザーのコミュニティサイトです。
何種類かのデータを公開しています。
オレンジ色がイメージカラーのようで、オレンジ色で造形した物の写真がいくつかupされています。
新型コロナウイルスへの対応ページが設けられています。
COVID-19へのPPE対策として3Dプリンタを活用する人々のためにフィラメントを特価で提供しています。
PETGのオレンジ色、1kgを22.49ドルです。