公立専門病院
(特定診療災害医療センター)
特徴
こちらの医療機関様の特徴は以下のとおりです。
- 専門性が高い公立病院
- 特定診療災害医療センター
- 敷地面積7ha以上、複数の鉄筋コンクリート造の建物が点在
- 病床規模は300~399床
- 平時の外来患者数は700人程度
- 10km圏内に海・山・都市部がある立地で近隣には十数万人規模の大型団地
災害拠点病院と特定診療災害医療センターの違い
災害拠点病院とは、災害時に多発する挫滅症候群、多発外傷、広範囲熱傷等の重篤救急患者の救命を行うための高度な診療機能を有し、被災地から一時的に重症患者を受け入れる災害医療のための拠点病院です。
特定診療災害医療センターは自治体が独自に運用している仕組みで、特定の疾患のある傷病者を受け入れるための拠点病院です。
災害拠点病院については厚生労働省防災業務計画や災害対策基本法などに関連の記述があり、厚生労働省医政局通知などにより要件定義がされています。
特定診療災害医療センターについては自治体独自の仕組みで運用されています。
厚生労働省: 災害拠点病院指定要件の一部改正及び医療機関の平時からの協定締結の必要性について (厚生労働省医政局長・医政発0905第8号・2018年9月5日)
厚生労働省: 災害拠時における医療体制の充実強化について (厚生労働省医政局長・医政発0321第2号・2012年3月21日)
都道府県と二次医療圏
災害拠点病院は『地域災害拠点病院』を二次医療圏に1カ所以上、『基幹災害拠点病院』を都道府県に1カ所整備することが必要であるとされています。
特定診療災害医療センターは専門領域について都道府県内全域を担当することが想定されています。
南海トラフ地震
日々発災へと近づいている南海トラフ地震について、被災が予想される多くの自治体が地域防災計画に南海トラフ地震を想定しており、エリア内にある医療機関もBCP上で同震災を想定に入れています。
都市直下型の阪神淡路大震災、津波災害や計画停電を伴った東日本大震災、前震と本震に分かれた熊本地震、全道停電が生じた北海道地震など、近年の震災を教訓に次代のBCP策定が求められています。
BCP方針・戦略
脅威の定義
当該医療機関における当社が依頼を受けたBCP上の脅威は『地震』としました。
具体的には地元自治体が制作した地域防災計画にも想定されている『南海トラフ巨大地震』のうち『冬の平日夕方18時』を脅威と定義しました。
提供すべき医療
特定診療災害医療センターとして専門領域については継続することが求められています。
重要業務は何であるかを検討してもらいました。
患者想定(シミュレーション)
前述の『提供すべき医療』を仮定した上で、対象となる患者がどの程度発生するのかを当方にてシミュレーションして提示しました。
近隣2つの二次医療圏で重軽症者5千名、当該地域の救急車台数は50台程のため交通混乱が無い場合でも救急搬送よりウォークインが多くなることが想定できます。
当社にはシミュレーションした数値に基づき、後述する戦略や計画を策定しました。
BCP上の戦略と方針
災害という非常事態にも屈せず医療関として提供すべきサービスを継続するためには戦略が不可欠となります。
シミュレーション
分娩数
今回のBCP策定では『地域のすべての分娩を当院が扱う』ことになったとしても対応できるようにすべきかどうか、という事でエリアの分娩数を推定しました。
簡単に言えば、日本国民1億2千万人に対し毎年100万人の子供が生まれているという統計から、エリア人口から比較して出生数を推計する方法を取りました。実際は年齢階級別の人口などを加味し精緻性を高めています。
他のエリアで産科医療が破綻した場合、当院でどの程度まで受け入れるべきか、どの程度の妊婦がヘリコプター搬送などに耐えられるかなどは今後の課題となりました。
外傷数
南海トラフ地震を想定した場合、どの程度の外傷患者が発生するのかをシミュレーションしました。
国が出している試算を利用し、地域人口などから外傷患者数を割り出しました。
この数値をBCP上の仮説として、全体の調整にも用いられました。
救急搬送
大震災や大嵐のあとは交通混乱が予想されるため救急車での搬送は少ないと考えられますが、根拠を得るために救急車の配車状況を調査しました。
地域にある消防本部が保有する救急車は約50台であることがわかりました。
先のシミュレーションで予想された外傷患者数は桁違いであることから、救急車が正常に運行していても台数不足になることがわかり、ウォークインで『近医受診』として当院にも患者が押し寄せるであろう予想が立ちました。
行動計画
大綱
ヒト・モノ・情報などそれぞれについて非常時に何が起こり、どのような行動を起こすのかを書き込んでいきました。
その行動に必要となる備蓄なども併記しました。
重要業務
戦略策定時に掲げた重要業務に対する行動計画を立てました。
例えば人工呼吸療法を重要業務とし、その継続を計画する場合、患者の安全が確認できたあとで装置の正常性を確認、次に酸素ガスや電源の確保を確認することになります。
どれか1つでも欠落すると本業務の継続は困難となりますので、確認方法やバックアップ手段について深掘りすることになります。
職員参集と受援
発災後に参集できる職員の数で、サービスの量・質が左右されます。
街路樹や電柱が倒壊し道路は寸断、鉄道も数日は運休が予想されるので出勤して来ることすら容易ではありません。
2018年の西日本豪雨では7月の炎天下に徒歩出勤した医療従事者が熱中症で倒れ、自らが患者になってしまった事例にも遭遇しましたので、職員参集については慎重に検討を行います。
また、DMATに代表される災害医療チームの受援も検討します。受援は確実性が低いため、こちらも慎重に検討を行います。
情報発信
災害時の情報収集は当然のこととして行われると思います。BCPにもその手段や頻度などを明記しています。
当社では情報発信の重要性についてもご案内しております。
BCM
マネジメント
BCPは計画です。希望も含めた内容を盛り込んだ文書であるとも言えます。
その計画が最適に実践されるためにはマネジメントが必要になります。
当社ではBCP策定のみならず、BCMについてもお手伝いさせて頂いております。
調整
マネジメントの重要業務として各種調整があります。
院内調整としては備蓄量の調整や職種横断的な役割分担など多種多様です。
院外にも調整先があり、例えば市役所の水道局や交通局、医薬品卸会社や門前調剤薬局、同じ診療科を持つ近隣の医療機関も調整相手となることがあります。
訓練
災害訓練に立ち会いました。
訓練を実施することで課題が抽出できるだけでなく、スタッフの皆さんが自身の進捗を把握でき自信を持つ事につながる場合もあります。