Full Face Respirator
フルフェイスマスク
新型コロナウイルスは呼吸器感染症であり、鼻や口からウイルスが取り込まれることで肺炎などの症状を起こします。
食事中に会話をすれば飛沫に混ざってウイルスが舞いますので危険であることは周知されましたが、面と向かって飛沫を浴びなくても感染は起こります。
マスクやフェイシシールドである程度の感染は防護できますが、雰囲気中に高濃度のウイルス等が飛散している状況では、防護具の隙間から入る可能性も少なからずあります。
医療現場では、感染の危険性が高いためスタッフを守るためのツールとしてフルフェイス型マスクの需要がありました。
COVID-19と接触
医療従事者の皆様は、緊急事態宣言下でも業務を継続しています。
普段も感染防護には注意を払っていますが、それ以上の注意が必要になりました。
どれだけ注意しても防ぎようのない飛沫感染もあると思います。
そこで当社では、少しでも感染リスクを低減させるために、フルフェイスマスクに人工鼻やHEPAフィルタを装着するためのコネクタを独自開発しました。
Remodel Full Face Respirator with 3D Printer (English)
国立京都医療センター救命救急センター
スノーケルマスクに人工鼻を装着するという素案は国立京都医療センターの救命救急センターの臨床医からの発信が始まりでした。
2020年のゴールデンウィーク前、同院に勤務する同級生から3Dプリンタで実現可能であるか問い合わせがあり、当方で試作を開始しました。
3Dデータは当社のオリジナルですが、スノーケルマスクは医師が自費購入なさった物を使い始めました。
試作段階では、当社でも顔に装着して作業していたため、同じ型番の商品を調達し実験を重ねました。
5月19日、最初の完成版を同院にお届けしました。
紹介ビデオ
フルフェイスマスク装着
顎から
ラバーバンドを両手で持ち、マスクの下端を装着者の顎に掛けます。
かぶる
帽子をかぶるように、ラバーバンドを後頭部に引き下げて装着します。
位置調整
マスクの位置を合わせます。
マスク内部は口と鼻の呼吸部が別室になっているため、そこがしっくりと鼻と口を覆うようにフィットさせます。
また、外周が顔とピタリとフィットしていないとエア漏れの原因となり、無用な空気を吸い込むことになります。
ラバーバンド
左右の下側のラバーバンドを引き、マスクを顔面に強くフィットさせます。
ラバーバンドを引いてもフィットしない場合は、ラバーバンドが伸びていないか確認してください。ラバーバンドは消耗品です。
フルフェイスマスク準備
コネクタ
マスク上面にある給気コネクタをOリング(ゴムパッキン)に密着させるようにした上で、スナップ錠(パッチン錠)のラッチを引っ掛けて『パチン』となるまでレバーを引き下げます。
目視でOリングとの密着を確認します。
HEPAフィルタ(人工鼻)
任意でHEPAフィルタを取り付けることができます。
少し回転させながらコネクタに差し込み、動かなくなることを確認します。
デュアルタイプコネクタの場合はHEPAフィルタは2個、シングルタイプは1個装着してください。
フィルタは人工鼻などに用いられている標準規格が嵌合するように設計されています。
フルフェイスマスクの特徴
スノーケルマスク・改
このフルフェイスマスクのベースはスノーケル用のマスクです。
水が入らないように密着性が高い設計になっています。
また、空気は水面より上から取り込んで、吐き出すのは水中。それを応用しフィルタを介して吸気、口元から呼気という流れが作れます。
呼吸用HEPAフィルタ装着可能
人工鼻や微粒子フィルタなどとして使われている各種HEPAフィルタを装着できるよう、コネクタサイズを合わせています。一般的な人工鼻は装着可能であることを確認しております。
シングルタイプとデュアルタイプの2設計
一般的には通気口は1個で足りますが、激しく動く事もある人には2個のタイプもご用意しました。
医療機関で働く医師や看護師はデュアルタイプを強くお勧めしております。シングルポートに人工鼻を取り付けて動き回ると、かなり息苦しく感じると思います。
サイズ2種類
サイズバリエーションは2種類ご用意しました。
透明な表側のマスク部分は共通部品なのでサイズは同じです。
内側の顔にフィットするシリコンラバーのサイズが2種類あります。
柔らかく吸着しやすい素材のため、多少の顔の大小には自然とフィットしますが、そもそも顎にかからななど小顔の女性陣には小さいタイプをお薦めしております。
製品紹介動画
利用シーン
医療現場
このマスクはCOVID-19感染患者を診る医師からの要望で開発が始まった経緯から、医療従事者が装着することを想定しています。
患者への装着は想定していないため、医療機器としての用途は想定していませんし、効果効能も謳っていません。
医療従事者様が自らの判断で、自らのためにお使いになることを想定し、欲しいときにいつでも手に入れられるよう準備しています。
ベッドサイド・病棟
COVID-19の感染が明らかな患者の傍に行く際には完全防備が施されると思いますが、感染疑いの段階では用いられる個人防護具(PPE)は限定的になることがあります。
また、COVID-19以外にも恐れるべき感染症があり、医療従事者の身を守れなければ十分な医療を提供することができなくなります。
救急外来
感染疑いの初期段階、何も情報が無い段階での初療に当たる救急外来では常に緊張感があります。
路上で倒れていた意識不明患者では、倒れるに至るエピソードもわかりませんし直近数日の発熱や咳の状況もわかりません。
どの患者もCOVID-19感染者である可能性を否定できないまま、診療にあたる医療従事者の利用が想定されます。
気管内挿管・抜管
COVID-19は飛沫感染するであろうことがわかっていますが、気管内挿管の操作中は患者の口腔にアクセスするため飛沫を回避する事は容易ではありません。
飛沫を浴びる事を想定し、患者にビニル袋を被せさせてもらい挿管・抜管しているケースも増えています。
患者がおとなしくしている前提ですが、急に暴れて防護用のビニルを取り払う可能性もあり、医療従事者自身を守る術が必要になります。
気管内挿管・抜管の現場での利用が想定されます。
喀痰吸引
主に看護師が病棟で行う、頻度の高い処置の1つに喀痰吸引がありますが、この操作は飛沫を浴びる事が既知であるためビニルエプロンの装着などが以前から徹底されていた業務です。
COVID-19陽性で入院した人には細心の注意を払いますが、一般病棟や療養病棟に入院している患者に対しては、指定感染症のレベルで対応していては業務がまわらなくなるため、一定程度の注意の中で喀痰吸引が行われています。
看護師を守るため、喀痰吸引の現場での利用が想定されます。
内視鏡検査・鏡視下手術
健康診断でも精密検査でも多用される内視鏡検査ですが、飛沫は不可避な処置になります。
いま、不要不急の内視鏡検査は行われないようにもなっていますが、いつまでも健診を先延ばしすれば胃癌などの発見が遅れてしまうため、いずれは検査が再開されるようになります。
急を要する内視鏡検査はCOVID-19流行拡大後も継続されており、消化器内科の医師らは飛沫と隣り合わせで診療しています。
腹腔鏡手術のような手技でも飛沫を浴びる事は避けがたいです。一般にCOVID-19の感染は呼吸というイメージがありますが、糞便の中からもコロナウイルスは検出されますし、口腔粘膜などから検出されなくなっても便からは検出されたという報告も上がっています。
消化器内科・消化器外科などでの内視鏡検査・治療の現場での利用が想定されます。
マーゲンチューブ・イレウス管
摂食や排泄に課題を抱える患者に口や鼻からチューブを入れて身体の機能の補完や代行をすることがあります。
鼻や口からチューブを入れる操作は飛沫感染のリスクがあるとともに、比較的長期間留置されるため日々の診療においても鼻や口の粘液と接触してしまうリスクが高まります。
これらのチューブは定期的に管内の洗浄が必要な場合があり、看護師らがその処置を行う際には挿入口である鼻や口、管の末端がある消化器との濃厚な接触機会となるため注意が必要になります。
マーゲンチューブやイレウス管を使用する現場での利用が想定されます。
耳鼻咽喉科
文字通り鼻や口などの疾患を対象とするため、診察の段階では飛沫を浴びる可能性が高くなります。
COVID-19感染症流行拡大後は積極的利用が減っていますが、ネブライザを用いる治療では薬剤を超音波で微粒子化して浮遊させるため、それを吸い込む患者からも微粒子状のものが出やすくなります。
耳鼻咽喉科の各種処置ではむぜたり吐き出したりすることが多くなるため、平時からも注意が払われています。
耳鼻咽喉科の現場での利用が想定されます。
歯科・口腔外科
歯科はCOVID-19で患者が減ったとはいえ、長期にわたり計画的な治療を行っている患者や、インプラント等のメンテナンスが必要な患者も少なくないため診療は停まることなく続いています。
口の中を観察しながら診療するため、飛沫を浴びる可能性は高くなります。
COVID-19に現に感染している人がわざわざ歯科治療を受けるに来る事は考えにくいかもしれませんが、無症状患者は世にあふれていると考えられますので感染リスクは高いと考えられます。
歯科・口腔外科の現場での利用が想定されます。
医療廃棄物処理・リネンサプライ
医療廃棄物や医療用リネンは病院内で何らかの感染者に接触している可能性があります。
業者は運搬する際に注意を怠れば感染する可能性がありますので、個人防護具の装着や感染対策が必要になります。
医療廃棄物処理、リネンサプライの現場での利用が想定されます。
一時利用(保健室・高齢者施設・福祉施設)
医療では感染者や易感染者と接する機会が多いですが、学校の保健室や高齢者施設などでは急な発熱や咳などの症状を呈し病院に連れて行く必要がありそうな児童生徒や入所者と接する機会があります。
医療従事者不在の現場ゆえに診断はできまえんが、症状をみる限りは感染症を疑うべきときでも、その児童生徒や入所者らを放置はできないため、誰かが傍につくことになります。
そのような従業者の身の安全を守る必要があります。
学校の保健室、高齢者施設、福祉施設、幼稚園、保育園などの現場での利用が想定されます。
医療従事者による評価
医師による評価
本品は臨床医による評価を受けました。
寄付
寄付しました
最初に作られたフルフェイスマスク用コネクタは、当社より医師に寄付しました。
2020年5月19日、西謙一(NES株式会社代表取締役)が病院を訪問し、完成品を手渡しました。
先生方にはとても喜んでもらえました。
手に入れるには?
非売品
ご希望者様には個別に提供させて頂きます。
原価が掛かりますので、その分はご負担願います。
当社の3Dプリンタで造形に12時間以上、その後の仕上げ作業に半日程度の手間がかかります。