紙媒体の場合、ファイル管理が部署内では統一されていたり、会社全体でもファイルの型番まで指定されていたりと、統制がとれている事がよくあります。
パソコンとなると、添付ファイルで貰ったときのファイル名にしても、Wordファイル等の印刷体裁にしても、個人差が大きいと思う事、ありませんか。
今日は無秩序から統制へ、我流から標準化へという話題です。
ファイル共有の基本
ファイル管理は自己流
みなさんはパソコンの中のファイル・フォルダ管理はどのようになさっているでしょうか。
ファイル名に日付を入れる、案件名や取引先名を入れるなど工夫されている人は多いと思います。
ファイル名は考えずフォルダで分ける、デスクトップに貼り付けて時間があるときに分類する、管理方法は様々だと思います。
他人が見てわかる(?)
自分のパソコンを他人が操作して、すぐにファイルを見つけられるか、何のファイルか判断できるか、そう考えてみたとき、あなたのパソコン内はいかがでしょうか。
業務で指示されたファイルを提出するという事には慣れていても、ファイルを共有して誰もが見てわかるようにするとなると、簡単ではない事に気づきます。
無尽蔵な
業務でパソコンを使うのは当たり前、毎日メールの送受信があり、WordやExcel、PDFなどのファイルが行きかいます。
無尽蔵とも言えるようなファイルの管理は容易な事ではありません。
無秩序では統制困難
他人とファイルを共有する事を目指す上で、無秩序ではその実現可能性は高まりません。
何らかのルールを明示し、そのルールに従って共有することで全体の統制が取れるようになります。
何のために統制するのか?
標準化
このような内部での統制が必要になるのは、何らかの標準化が生じた時です。
『ISO』の取得経験がある方々は標準化にも馴染みがあるかもしれません。
誰がしても同じ結果、誰が見てもわかる、成功も失敗も検証できる、標準化とはこのような目的で行われます。
ISO
ISOはInternational Organization for Standardizationの略称で国際標準化機構などと訳されます。
ISO9001やISO14001などはマネジメントシステム規格に基づく認証制度で、その適格性を認証されれば『ISO9001取得』などと公明正大に広告することができます。
認証基準に適合しているか否が評価されるため、評価を受ける側は基準に合わせて職場環境を整えていきます。
ISO13485
ISO13485は医療機器や体外診断薬を対象としたマネジメントシステムです。
品質管理、そこから及ぶリスクマネジメントを対象としています。医療機器が事故と結びつく要因は製造や使用方法の問題だけではなく設計段階でも滅菌や配送の段階でもリスクが仕込まれてしまう可能性があるため、医療機器のライフサイクルを見据えた品質管理が求められています。
QMS
QMSはQuality Management Systemの略称で、品質管理システムと訳されます。
前述のISOは法令ではなくいわば民間認証のようなもので、検定の合否に法的な影響はありません。
一方で医薬品医療機器等法(旧薬事法)は法律のため遵守義務があります。
医療機器におけるQMSとはすなわちQMS省令を指す事が多く、QMS省令は正しくは『医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令』という法令を指しています。
[Link] 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令
医療機器をつくるために統制する
『何のために統制するのか?』と問われると、当社の関りが深い医工連携で言えば『医療機器をつくるため』と答えられると思います。
民生品であれば企画して、作って、売るという流れを自社判断、社内基準で進める事もできますが、医療機器においては統制された管理下で作られた物で無ければ世に出せません。
例えレポート1枚であっても、統制された中にあるか否かで、その真価に大きな違いが生まれます。
ファイル総背番号制と医療機器
なぜ総背番号なのか?
新しい医療機器を企画し、開発し、試作し、製造し、販売するという流れの中で、なぜファイルの総背番号という話題が出てくるのでしょうか。
それは、適正なマネジメントの実施のためです。
存在しない事の確証も重要
『悪魔の証明』とは、存在しないものを、存在しないと証明することで『宇宙人は居ない』と証明するのが難しいといった意味合いで使われます。
過去から現在にかけて、一度も作成したことが無いファイル、受け取ったことが無いファイルが存在するのか否かの確証はどこで得る物でしょうか。
全ファイルをしっかりと管理していれば、台帳に無いのだから存在しないと言い切りやすくなります。
医療では当たり前(!?)
以前、病院勤務時代に保健所から『○○の検査は実施していますか?』と聞かれたので『はい!』と答えると、『では証憑類を拝見します』というお決まりの流れになりました。
通常通り検査済リストや手順書を提示すると『検査していないものがわかるリストを出してください』と言われました。
私は想定内でしたので、すぐにそういったリストが提示できるようにシステムを構築していましたが、他部署では面を食らった感じで手間取っていました。
研修会などでも『未受講者リスト』の提出を求められるため、これまでに開発した研修会出欠管理システムでは未受講者リストを表示する機能を搭載していました。
総背番号はどうやって付与したか
付与システムの開発
フォルダ名を指定すれば、自動的に全ファイル名を抽出してExcelシートを作成するシステムを開発しました。
Excelに出力する際に、上から順に固有番号を付けていく事も並行することで、対象の全ファイルに背番号が付くことになります。
これは台帳作成システム
今回開発したシステムは、その瞬間を切り取って一覧表にするシステムです。
このあとから出入りするファイルは監視できません。
したがって、このシステムでは管理の最初となる台帳をつくるに過ぎず、このあとは従業員の皆さんがルールに従って台帳に登録していく必要があります。
どんなルールが要るのか?
理想的にはファイル作成時点、遅くともファイル共有の時点で台帳に登録します。
登録時にはなるべく、どんな目的で作成された、どんな情報が入っているファイルであるかを明示します。
新規作成ファイルはもちろんですが、過去のファイル群もExcel台帳にはファイル名しか記録されないので、目的や内容を付記していく必要があります。
電子カルテの三原則
電子カルテの三原則とは見読性、真正性、保存性の3つを指します。
医療情報に該当するものを電子管理する場合にはこの三原則を遵守します。
私たちはこの三原則に基づくシステムを開発した経験があり、実際に医療機関の従業者としてシステムユーザーでもあったのでなじみがあります。
今回のファイル管理においてもこの三原則を意識してルールづくりを行っています。
[Link] 厚生労働省: 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版(令和3年1月)
システム開発の裏側
Visual Basic 6.0
今回のシステム開発はMicrosoftのVisual Basic 6.0を使って行いました。
20年以上前にリリースされた開発言語ですが、いまだに使っています。
Visual Studio2005や2010も手元にはありますが、20年来の使い慣れたVB6で開発しました。
プログラムの構成
DirListBoxで対象となるフォルダを選んでもらい、実行ボタンを押す事でサブフォルダを含めたすべてのファイル名を抽出するプログラムが動きます。
ファイル名は『buf = Dir(Path & “\*.*”』というコードで抜き出し、『Do While buf <>””』というDo~Loopでbufに入れたファイル名一覧の末端までDo処理を続けることで、そのフォルダ内の全ファイル名を取り出しました。
次にExcelのセルにデータを転記するプログラムを作り、セル1つずつにデータを転記していきました。
完全内製
今回のシステムは構成などの企画からプログラミング、動作確認まで社内で完結しています。
そもそも、もうしたシステムが必要だというニーズ抽出も社内ですが、ニーズがあるのか検証は終わって居ません。
欲しいという人が現れるのを待つばかりです。
今回はVisual Basic 6.0を使って、パソコン用ファイルに背番号となるIDを付与するシステムを独自開発しました。
開発は土日を活用し、電話やメールで集中力が途切れない中で行いました。
プログラミングはマルチタスク、同時にいくつもの出入り口や処理室をつくるため、集中が途切れると、もう一度すべてを見直さなければなりません。
論理性が求められるため、論理的な不具合はバグとなってプログラムを異常な物にしてしまいます。
最近、医工連携では3Dプリンタを活用する事が増えていますが、コンピュータープログラミングもお客さんに喜んでもらえました。