ドイツでは大変な豪雨に見舞われ、甚大な被害が出ています。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
被害の中心になっているノルトライン=ヴェストファーレン州(Nordrhein-Westfalen)はヨーロッパ有数の工業地帯で、州都は日本人にも耳馴染みの都市『デュッセルドルフ』(Düsseldorf)です。他にもドルトムント、エッセン、ケルン、ボンなど有名都市が所在します。
筆者もデュッセルドルフやケルンは仕事で訪問した事があります。
デュッセルドルフは経済的にも発展している都会で、日本国領事館もあり、日本企業も多く拠点を構えています。
[Link] ドイツ連邦共和国大使館総領事館: ノルトライン=ヴェストファーレン州
豪雨
2021年7月14日~15日にかけてドイツ西部やベルギーを豪雨が遅い、洪水などの被害が発生しました。
現地の様子はTwitterで報道機関も住民も伝えて下さっています。
[Link] ノルトライン=ヴェストファーレン州: 洪水について
[Link] ノルトライン=ヴェストファーレン州の水位
[Link] ノルトライン=ヴェストファーレン州: 自然・環境・消費者保護局
交通マヒ
報道によると、高速道路(アウトバーン)や鉄道が使えない状況が続いているようです。
デュッセルドルフ⇔ケルン間の鉄道は運休となっており、その影響はかなり大きいと思います。
ケルンはターミナル駅で、各方面への電車が乗り入れていますが、多くの路線で運休になっているようです。
教訓とすべき点
『ライン川』というと教科書で習った覚えがある人も多いと思います。
スイス、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、オーストライ、リヒテンシュタイン、ベルギー、イタリアを流れる全長1,200km余り、歴史上の大きな戦争や国境に関係して出てくる事も多い大きな川です。
水運としても発達しており、貨物船が往来しています。
ライン川の流域は約20万平方キロメートルです。日本の本州と同じくらいの面積になります。
水域人口は約5,800万人、人口密度は290人/平方キロになります。
水害が発生すれば被害の大きさは計り知れない事が既知の流域です。
[Link] ICPR: ライン川 洪水
[Link] ICPR: ライン川について
この経済や生活に密接な川の流域で、観測史上最多となる降水量を記録し、ケルンなどの都市で洪水が発生しました。
発災から2日で死者は100人以上、行方不明者は1,000人以上となっています。
地震の場合は一瞬の出来事で家屋に被害が出るか出ないかがハッキリしますが、水害の場合は徐々に被害が出るためその程度を推定する事は容易ではありません。
建物が頑丈でも浸水しますので、避難者数は増大する傾向にあり、要救助者も増えます。
下記投稿のような勢いで街に水が流れていては避難も救助もできません。
もし、自身の居る建物が崩壊しそうになったとき、隣の建物に避難させて貰えれば助かりそうですが、落水したら生命の危機を感じると思います。
水害が想定される地域では、人数分の救命胴衣が必要であることがわかります。
被災人数は人口と関係するため災害規模とは直結しませんので、洪水になった面積や水深などに注目する方が教訓を得られやすいです。
洪水の原因となった雨ですが、記録的な量だったようです。24時間雨量が平年の1か月分以上の量であった地域が多くあり、大都市ケルンでは24時間雨量が154mm、これは7月の平均87mm/月のほぼ倍量に当たります。
ヨーロッパ荒天データベースで7月11日0時~7月18日24時までを検索すると最大の”heavy rain”を示す地域がライン川に沿って多く見られる事がわかります。
その結果、水位が2mを超える洪水が起こった地域があり、建物や橋が流されるなどの被害につながっています。
ライン川流域は非常に広大な面積になります。
小さな村も大きな都市も流域にはあります。
当初1週間くらいは安否不明者の捜索に人員が割かれると思いますが、広域での停電や通信遮断があり、どこかに一時退避している方々も孤立したまま連絡も取れない状態なのではないかと思います。
平成30年7月西日本豪雨では、報道により支援の偏りが大きくなりました。当時『真備町』という言葉が連呼されたため、真備町にはボランティアが千人規模で集まるが、広島の小さな町にはほとんど来ないという状況になりました。義援金も同様です。
このような無用な格差は解消されて欲しいですが、ドイツやベルギーで起こっていない事を願います。
この水害のニュースの中で日本との違いを感じたのが救援隊の装備です。
自衛隊は『災害派遣』の横断幕を付けてトラックなどで被災地入りする姿はよくみかけますが、ドイツでは戦車のような車両が街に出て復旧作業に当たっています。
ぬかるみでも動じないキャタピラと重量が大型トラックの引き揚げにも役立っていました。
民間では保有し得ない車両を政府が持っているのであれば、明確にエリアを決めて展開させたら良いのではないかと思いました。
民間でも採掘場やトンネル工事などで航空機のタイヤのような大きな車輪の重機が使われています。土砂災害では、活躍できると思いますが公道は走れません。
人命に被害はなかった家屋や店舗でも、泥水が押し寄せて掃除をするのも大変です。
これは日本の豪雨災害でも毎回目にする光景ですが、軒数が多いため公的な救援が入るのは難しく、ボランティアに依存せざるを得ないのが実状です。
2020年の球磨川、2021年の熱海でもボランティア受け入れを地元民に限定したことで、参集した人数はそれまでの災害に比べて大きく減少しています。
被災地で感染症がまん延してしまうと危機的であるがゆえに、仕方が無い事ですが、泥だらけの建物を何日も放置すればニオイや汚れが浸み渡り、取り返しがつかなくなります。
筆者が育った家は毎年洪水、床下浸水は何十回と経験しています。自転車のサドルが冠水する程度の洪水であれば、自力で駅から家に帰っていました。
ある程度の生活ができてしまうので、救援や支援の手も少ないのが実状で、自宅が1m近い洪水であっても、近所の市営体育館は通常営業しており、洪水で行けないと電話したらキャンセル料を取られました。市営体育館から最も近い小学校は避難所になっていましたが、同じ市役所内でも温度差を感じました。
現地報道の中で、下記のリポーターが伝えている内容がわかりやすく、現場を反映しているなと思いました。
[Link] DW correspondent update on German flood situation
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ノルトライン=ヴェストファーレン州
筆者が出張中に撮影した画像をいくつかご紹介します。当時はケルンに宿泊し、仕事は主にデュッセルドルフでした。