本日は防災の日です。
1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒発災ですので、今年で98年が経過したことになります。
まだ調理機器や消火設備なども発達していない時代の正午2分前、被害が広がったであろう事が容易に想像できます。
死者105,385人、全壊・全焼・流出した家屋は293,387軒です。
2021年3月現在の東日本大震災の死者・行方不明者は1万8千人余りですので、関東大震災の甚大さが伝わってきます。
関東大震災の直後には大雨が降ったとされ、土砂災害も多発したとの記録があります。
関東大震災の最中に流言飛語(流言蜚語)がありました。
富士山大爆発や井戸に毒が盛られたなどのデマが流れた記録があります。警視庁『大正大震災火災誌』をまとめた文献にも類似の記載がありますが、全体として目立つのが朝鮮人による悪事があるかのようなデマです。デマですので事実ではないのですが、このデマにより虐殺事件がありました。
[Link] 内閣府: 報告書(1923 関東大震災第2編) 第4章 混乱による被害の拡大 第1節 流言蜚語と都市
近年もフェイクニュースやデマが問題視されています。
2016年の熊本地震では動物園から猛獣が逃げ出したというデマが写真付きで流されました。
2018年の北海道地震でもSNS上でデマが拡散されました。
2020年春、新型コロナウイルス感染症流行拡大に伴い、トイレットペーパーなどの輸入が減るなどのデマが流れ品薄になりました。紙製品は国産が多く品薄にはならないはずでしたが、このデマにより品薄になってしまいました。
情報を発する側、受ける側の双方のリテラシーを高めていかなければデマを信じてしまう人が絶えないと考えられます。
2016年の熊本地震の際、知人がNHKニュースの情報を東京から熊本へ発信し続けていましたが、日時を確認せず、発する情報にも日時を付与していなかったため、断水などの情報が前後してしまい現場を混乱させました。
周囲から止めるよう告げられても、本人は善行だと思い込んでいるため止まりません。悪意のないデマ情報の流布を関係者は目の当たりにしました。
今日は情報発信の重要性を鑑みて、当社の2つの取り組みをご案内します。
1つはホームページの災害モードです。通信が制限される中でアクセス数が増大する非常時には、ライトなページを提供する事が自治体等のサイトでは定着しつつあります。
もう1つが院内掲示物です。来院した人に状況を正しく明確に伝えることで、限られたマンパワーを説明や謝罪という労務から解放し、診療に注ぐことができます。スタッフ向けにも、わかりやすく情報提供する事で無用なストレスを掛けずに済みます。
今回は特別に、当社が制作したファイルもダウンロードできるように開放しますので、ぜひご活用ください。
98年前とは大きく異なる点としてエネルギー依存があります。特に医療は電力依存が高まり、電源喪失にどこまで対処できるかわかっていない部分もあります。
後半では、停電対策について当社の取り組みなどをご紹介しております。
電気工事業の業許可を持っている医療BCPコンサルは稀です。臨床工学技士と電気工事士の実務経験に基づく停電対策を、この防災の日に再考してみます。
災害モード
ウェブサイトは単位時間あたりのアクセス数やデータ量に上限があり、それを超えるとウェブサーバへのアクセスが一定時間遮断されるか、特定本数だけ接続されます。
災害が発生すると避難所や給水などの情報を求めて市民が役所のサイトにアクセスするため混雑します。
データ量を抑止するために、ウェブサイトから画像やボタンなどを取り払います。なるべく白背景と文字だけのページにします。
市役所などは世帯数からアクセス数を予想できますが、医療機関では予想しづらいです。
大災害では、エリアで1割程の人が負傷し、持病なども含め2~3割の人が医療に関心を高めると思います。その中の半数はウェブ検索すると想定すると、おおよそのアクセス数を予想できると思います。
下記ボタンから、災害モードの病院ホームページのデモ版をご覧いただけます。当社ウェブサーバ上に置いています。
災害モードのウェブサイトはMicrosoft Wordがあれば編集することができます。前述のデモページはWordで制作しています。
災害モードに関するお問い合わせは下記のお問い合わせフォームよりお願い致します。
院内掲示物
当社より提供させて頂いている掲示物です。
A3判で印刷して頂くと見やすく、貼る場所の確保にも困らないと思います。
発災後はプリンタの電力を確保するのも容易でない可能性がありますので、印刷して保管しておくと良いです。
できれば、ラミネートして、両面テープを付けておくと良いです。
院内掲示物についてのご意見、ご要望、リクエストなどございましたらお気軽に当社宛にお申し付けください。
令和時代の停電対策
日本初と言われる電力会社『東京電燈』の創立は1886年、関東大震災は1923年ですので電力の普及や依存度はそう高くないことが想像できます。
2011年の東日本大震災の時点では多くの電子医用機器が普及し、パソコンの普及率は8割、スマホの普及も急伸している頃でした。2000年問題の時に医療現場では強く警戒しましたが、その比ではないほどに電子機器が多く使われていました。
2021年のいま、医療現場で電力を使わない機器は非常に少なくなりました。
体温計や血圧計なども電子化が普遍化しましたが、これらは電池式が多いため停電の影響は軽微です。
それよりも電子カルテやナースコール、圧縮空気や吸引器、電動ベッドやエレベーターなど生命維持に直結しない部分でも電力依存が強く、人工呼吸器や血液浄化装置など生命維持管理装置はほとんどが電子制御された電子機器となっています。
停電しない病院を作る事は容易ではありません。どんなに大きな発電機があっても、分電盤が浸水すれば電力供給できません。
令和時代の停電対策は『分散管理』だと当社は考えます。
大型の自家発電装置や蓄電池で中央から供給する方式は温存しつつ、その補完、または中央方式に全く依存しない形で分散型を備える事に大きな意義があると考えます。
例えば病棟のハイケアユニット(HCU)に4床配置があったとして、最低限必要な電力はどの程度とお考えでしょうか。
仮に1床あたり1000W、圧縮空気や吸引器など共用できる設備で1000Wとした場合、4床のHCUで5000W、100V換算で50Aあれば足りる計算です。
ここに55Aの発電機が専用で配備されていればHCUの患者を救う事ができます。HCUの患者は病棟を離れてコンセントの無い食堂に移したとしても、発電機を帯同させれば診療を継続することができます。
このような臨機応変な病床再編にも対応するためには、中央方式だけでは難しい事が窺い知れます。
当社では発電機メーカーと連携し、分散型の電力保持について研究し、現場配備を進めています。
病棟や病室よりも小さな単位として『個人』があります。
在宅医療における人工呼吸療法の患者保護を目指した停電対策を10年以上前から実施してきましたが、当社では2018年の台風21号で実際に停電被災し、その対応を実証しました。
カセットガスボンベで動く可搬型発電機enepoを使い、52時間の停電にも対応できました。
いくつかの課題は見えましたが、2018年9月4日~6日の停電期間中、冷蔵庫やエアコン、テレビ、洗濯機などを動かす事が出来ましたので、人工呼吸器を装着した家族が居ても乗り切れると考えています。
enepoを使った停電対策については、医療的ケア児を抱えるご家庭にも展開していこうと考えております。COVID-19が無ければ昨年にもご家族向けのセミナーを開催予定でしたが、残念ながら実施できていません。
災害は忘れた頃にやって来ると言われますが、COVID-19が流行しているからといって自然災害が来ない訳ではないので、この防災の日を1つのきっかけに、改めて在宅医療の停電対策についても現場の意見を聴いて回ろうと思います。
個人対応用のデバイスとして去年、蓄電池を調達しました。
それが今年、コロナ専門病院における患者搬送用に使われました。救急車内での患者呼吸管理用の電源について相談があり、当社保有機を貸出ました。
enepoは救急車には積載できませんので、このような蓄電池が役立つシーンもある事を実感しました。
常に先読みして実験、その実験結果があったからこそ医療現場でも即時試用できました。試用にとどまらず、同院では同じ機種を調達して患者搬送に使い続けました。
当社では電源品質アナライザを用いた試験や、現場で想定される環境の再現試験などを実施しています。
在宅医療にお勧めの機器類は、Amazonで買えるような汎用品です。医療用の物はありません。医療機器に安全に使えるという確約はありませんが、何も手を打てないよりは良いと考えます。
令和時代、電力なしの医療は考えづらい中、当社は独自に停電対策を研究し、社会実装を目指しています。
停電対策にご意見、ご相談などございましたらお気軽に当社宛にお申し付けください。
アーカイブ
官民を問わず関東大震災を振り返る資料を提供しています。簡単にまとめましたのでご参照頂ければと思います。
公共・公的
内閣府: 防災情報のページ, 報告書(1923 関東大震災)
国立国会図書館: 史料にみる日本の近代 第3章 大正デモクラシー, 3-11 関東大震災
民間
消防防災博物館(一般財団法人消防防災科学センター):大正期の消防
住友電工: 住友電工の1枚 – あの日、あの時 1923 関東大震災発生