BCPとは?
BCPはBusiness Continuity Planの略称で、業務継続計画や事業継続計画などとも言います。短期的には目先の業務の継続、長期的には存続を目指して計画します。
BCMとは?
BCMはBusiness Continuity Managementの略称で、BCPを実用するためのマネジメント全般を指します。
医療福祉BCPは平時業務の延長線上
私たちが得意とするのは『平時からの延長』『非常時も続ける日常』の医療や福祉です。
狭義には『災害医療』『DMAT』などのキーワードに属する、災害に特化した医療が存在します。救急や集中治療のように1つの学問領域とも言えます。専門性が高いので、専門家が居ます。
私たちのお客様は、災害医療を扱わないケースも多いです。
平時から入院・入所していた方々に必要なケアを提供し続けることを目指すBCP/BCMの実装に努めています。
災害時に特化した医療には手を出さなくても、災害時に医療は提供し続けることを目指しています。
この『災害時の医療』と『災害医療』を区別することで、身の丈に合う対応を目指し、実践性を高めています。
企業BCPは中長期的な廃業回避
医療福祉では目の前の患者や入所者をどう守るか、新規に発生した患者にどう対処するかなど発災直後から忙しさが続きます。
一方で企業は、その業態や立場で対応が異なります。
業種を問わず共通することとしては、発災直後に従業者や関係者の安全を確保する、という点です。
交通系であれば車両を停止させて一時的な安全確保、次に安全な場所までの移動を終えて一段落という計画を立てます。
生産現場では機器類を安全に停止し、二次災害が起こらない状態にして待避することになりますが、既に火災等が発生している場合には避難を優先するような計画を立てます。
重要なのはその後、非常事態の発生を機に数か月後や数年後の仕事が無くならないためにどう対処すべきか、という点にあります。
飲食店に食材を卸す企業が、飲食店の再開後も納品できなければ同業他社に参入余地を与えることになります。
会員制のジムなどが、長期休業すると他社のサービスに乗り換えられる上に、休業期間中の会費返納も求められます。
企業の存廃を掛けて、しっかり計画する必要があります。
実績のあるコンサルタント
弊社では医療・福祉系のBCP/BCMの実績が多数あります。
ご契約が複数年継続しているケースもあり、ご高評いただいております。
医療福祉業界に関わる方々に共感して頂けるような非常時対応コンテンツの充実が当社の強みだと考えております。
そして、発災直後から延々と忙しい医療BCPを策定できるからこそ、休業を選択する企業も、休業を選択しない企業も、私たちにはBCP策定ノウハウがあります。
実際、どのような仕事をしているのか、実績のページもご参照ください。
BCPには対象がある
BCPには必ず対象があります。
地震は1分以内の震動が大きなダメージを与えます。
台風は数時間の暴風雨が大きなダメージを与えます。
発災を時間軸で見ても大きな違いがあり、与えるダメージも大きく違います。
一方で断水や停電などは地震でも台風でも起こり得ます。いわゆる二次災害は、それだけ切り取ってもBCPの対象とすることができます。
脅威の分析
BCPを策定する際に、脅威について検討することは不可欠です。
日本列島で地震や台風が来ない地域は無いと思いますし、新型コロナウイルス感染症は世界中で流行が拡大しました。
脅威分析にはトップダウン型とボトムアップ型があります。
前者は事故や災害などを選定し、そこから生じる脅威を分析します。
後者は重要な業務を阻害する要因から脅威を分析します。
いずれにしても脅威が存在することが明らかになれば、その脅威を甘受するのか排除するのか検討し、対処方針を掲げます。この方針がBCPの基本方針にもつながります。
マニュアルではない
BCPをマニュアルだと思って向き合うと不整合が生じます。
細かいオペレーションを記載してしまうと応用しづらくなりますので、方針や役割分担などを示すにとどめるのがBCPです。
消防計画では『消火する』方針の下に『消火器を使って』などの具体的な方法が示されることがあります。火災では報知、初期消火、避難の手順があり、初期消火には消火器か消火栓くらいしか方法がありませんので、具体的に示す事ができています。
医療や福祉では特に、臨機応変が求められるため、BCPはマニュアル化せずに、戦略を示して戦術は現場任せとすることが多くあります。
方針に従い目標志向で行動
BCPはマニュアルではなく戦略なので、現場は戦略に沿った戦術を選んで行動します。
言い換えると、細かな指示は受けずに現場裁量で事が運ばれます。
非常事態に直面している状況下では、多少のルール逸脱や法律違反もあるかもしれませんが、それらも現場判断になります。
このとき、足並みが揃うように目標志向で行動するよう規律されます。これをgoal-oriented action(GOA: 目標志向行動)と呼びます。
GOAを規律するマネジメント(BCM)
秩序と良心の中でGOA(目標志向行動)は上手く回ります。
ルール逸脱を許されることと、無秩序に何でもして良い事とは違います。
その線引きや抑止力にはマネジメントが必要となります。
どこまでが許される/許されないのかのボーダーラインは非常事態に直面する前から内部でコンセンサスを得る機会を設ける必要があります。
研修や訓練を通じて『当院ならここまでできる』『これはやり過ぎだろう』という議論を生むことに意義があります。
『ボンベが足りず三方活栓を使って分岐して酸素投与する』という方法は平時ではあり得ない方法ですが、図上演習で誰かが実施した場合、演習後のディスカッションで良否を判断していきます。『状況に依る』という前置きは付くものの、こうした逸脱行為の多くが緊急回避的な手段として参加者の記憶に残ります。
限界を知るための非常時情報管理
錯綜や輻輳など普段は使わない言葉が合う状況になる非常時には、新鮮な情報を素早く活用する手段が必要です。
情報の確からしさを見分けられる術も身に付ける必要があります。
正しい情報が手元にあれば、限界も見極めやすくなります。
このまま籠城を続けるのが良いのか、遠隔地へ避難させるのが良いのかといった判断は重要になります。
医薬品では製薬工場が被災し、国内在庫と工場復旧のタイムラグ分だけ治療ができないという事も想定されます。安易な減薬はすべきではありませんが、戦略のないどんぶり勘定という訳にもいきません。
発災当初は、参集できる職員は誰で、それは何時間後になるのかという情報の精緻性が最初のフェーズである72時間に大きく影響します。
最悪は3日間、発災時に勤務していたメンバーだけで回していくことになりますので、体力温存なども考えると、非常時の情報管理は非常に重要です。
当社では、取得しづらい情報、取得する価値がある情報などの取捨選択や、取得すべき情報の確実性向上に向けたシステム開発などを自社でも行っています。
在宅医療を守る
弊社では在宅医療を守る仕事もしています。
特に人工呼吸器のような生命維持管理装置を使っている患者さんのお宅は、守るべきものが多くあるため、専門コンサルとしてお手伝いさせて頂いております。
エビデンスをつくる
漠然と『当たり前』のように思われていることでも、根拠が無ければ非常時に想定外となることもあります。
医学・医療では Evidence Based Medicine (EBM)が当然のごとく行われていますが、私たちのBCP/BCMにおいてもエビデンスに基づいた非常時対応の実践に努めています。
医療従事者の多くが研修を受ける用手換気(Bag Valve Mask)ですが、研修では数分、実務でも長くて30分程度です。災害では3日間停電することもあります。
当社では長時間使用の安全性向上のために、いくつかの方法を比較する実験を行い、学会発表しています。
長時間の停電時には冷凍庫・冷蔵庫の温度は『経時的に上昇』することは容易に想像できますが、何時間後に何℃になっているかのデータがありませんでした。
糖尿病患者が使用するインスリンは患宅の冷蔵庫で保管されていますが、停電後何時間で廃棄対象になるか不確かです。
当社で実験した家庭用冷凍冷蔵庫の停電実験結果が、日本糖尿病学会誌に掲載されました。
自社で科学的検証まで実施するBCP/BCMコンサルタントは珍しい存在です。
プレスリリース: 停電時の冷蔵品保管の新知見発表ならびに医学論文掲載のお知らせ
調査例:避難所の暑さ/寒さ
避難所は小学校の体育館など広いスペースに雑魚寝というスタイルが一般的です。そこに空調は無く、人の出入りで空気の流れが生まれ、COVID-19流行以降は定期的な換気も必要となったため窓も開けっぱなしという可能性があります。
雨風がしのげるため屋外よりはましですが、どのくらい過酷な環境であるのか調査しました。
真夏であれば、気象台発表の気温よりも日陰の方が5℃以上涼しい時間帯もありますが、それでも30℃を超えています。
真冬の昼間はさほど差が出ませんが、風が吹き晒す開放された日なたでは、風を遮る場所よりも寒くなることがわかりました。
【参考】NES株式会社:避難所を想定した温度調査の公表(2020年1月3日)
- 5,000日目 ~ 東日本大震災から五千日です | NES’s blog
- NESの介護施設BCP研修・訓練サービスについて | NES株式会社
- 長周期地震動 | NES’s blog
- 津波は『注意報』でも脅威 | NES’s blog
- Essential Business | NES’s blog
- 簡単 マイ・個別避難計画のつくり方 | BCP | NES株式会社
- 県内病院の災害対応の体制 | NES’s blog
- 患家減災リーダー | NES’s blog