先日のブログで、小児の在宅人工呼吸患者数の推計値をお示ししました。
『児』の定義次第ですが、14歳までを患児とした場合、4,068人、19歳までを患児とした場合5,114人の在宅人工呼吸療法患者が居ると推測されます。
さらに拡大して、在宅酸素療法まで含めれば1万人規模です。
患児の数だけ家族あり
患児が入院ではなく在宅を選択しているということは、患児を迎え入れる家族があるはずです。
子供のために、家に人工呼吸器を持ち込んでいる家庭が4千~5千世帯くらいあると推測されます。
24時間看護師が駐在しているケースを除けば、基本的には家族ら非医療従事者によるケアが実践されていることになります。
退院する際に、最低1人のケアラー(ケアギバー)が居ることを病院が確認していると思いますし、喀痰吸引などの技術を身に付けた場合に限り退院していると思います。すなわち、宅内に1人はケアラー(ケアギバー)が居ると推測されます。
女性ケアラー
男女共同参画白書(令和5年版)によると、若い世代の女性の女性の就業率は過去20年で61.2%から81.4%と20ポイントも上昇しています。
ただし、男性の就業率が90%程で横這いであるのに対し、やっと80%を超えたというのが女性の現状です。
既婚者で考えた場合、男性は働き続けるが、女性は家庭に入る、非正規で就業するといった働き方になっていると推測されます。
家に居るのが女性である率が高いことから、医療的ケア児の主たるケアラーが女性、母親であるケースが多くなります。
療養住環境の災害対策
主たるケアラーである母親、女性が災害時にも患児の傍に居合わせる可能性が高いです。
発災の初動から、救援が到着するまでの間、居合わせた家族1人で何十時間も対応しなければならない可能性があります。
在宅用の人工呼吸器には電池が内蔵されており、予備電池や発電機も用意されていますが、いずれも無尽蔵に使える訳ではありません。
人工呼吸器は電源と酸素があれば動き続けますが、喀痰吸引は人の手が必要になります。加温加湿器の蒸留水交換や経腸栄養なども多少の人手が必要になります。
停電、断水、ガス遮断、通信途絶、社会インフラの停止は生活面でも大きなダメージを受けます。
療養と生活が混在する療養住環境では、一般家庭とも病院とも異なる、独特の対策を講じる必要があります。
ケアラー = 防災女子
食事やトイレ、入浴などをどうするのか、避難所などに行く間は患児を1人にして良いのか、災害時には色々と考えることがあります。
どのタイミングで、何をするのがベストなのか、それを考案して実行できるスキルが必要になります。
状況判断や取捨選択ができるだけの医療や設備に関する知識・技術を身に付けるには、しっかりと災害に向き合い、適切な教育を受ける必要があります。
災害リテラシーが高まれば、患家だけでなく地域の防災にも寄与できる人材になると思います。とはいえ、患児のケアラーとして災害時は忙しいので、地域に貢献している場合ではありません。
もし、余力があれば、平時に地域の防災活動に参加して知見を提供し、発災時には自身のサポートをしてもらう、そうした互助関係、隣保協同ができれば理想的かもしれません。
ケアラーである母親が『防災女子』になる、何となくレベルアップ感があって良さそうです。
防災女子1万人増
患家でケアラーとしていざという時に備えている母親が、人工呼吸器と酸素療法だけで1万人です。
病院に指導されたまま、その備えだけしているというケアラーも少なく無いと思いますが、ワンランク上の『防災女子』を目指したいと思う人も少なくないと思います。
我が子のためではありますが、それが自身のため、家族のため、地域のために役立つかもしれません。
機運が高まれば在宅1万人の母親たちが『防災女子』になり、社会の防災リーダーになる日が来るかもしれません。