我が国の在宅医療の統計的な数字はあまり公表されていません。おそらく、調査が実施されていないと思われます。
今回は在宅人工呼吸器患者数に占める小児の割合を試算してみました。
C107 在宅人工呼吸指導管理料
診療報酬における『医科』の『医療行為』の『在宅医療』は『C』に分類されます。
C107は在宅人工呼吸指導管理料です。
その内容は『在宅人工呼吸を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅人工呼吸に関する指導管理を行った場合に算定する。』となっています。
入院中以外、すなわち外来や在宅などです。
東京都医師会の資料を見ると月1回の算定なので、その月の算定回数を見れば、患者数がわかります。
三重県小児科医会小児在宅検討委員会:小児在宅医療診療報酬の手引き
2020年度実績
2020年度のC107在宅人工呼吸指導管理料の算定回数は232,640回です。
保険点数は2,800点なので1点10円で総額65億1,392万円です。
1年間で232,640回なので、12で割ると19,387回、すなわち月平均19,387人が在宅人工呼吸療法をしていたと推算できます。
難病患者の総合的支援体制に関する研究の報告書によると、人工呼吸器取扱企業 8 社の調査では2018年度末において在宅TPPV 装着者7,754 名、在宅NPPV装着者12,539名という報告があり、合計20,293人です。
先述の診療報酬算定回数を12で除した数と4.5%差であり、概ね2万人と考えて差し支えなさそうです。
厚生労働行政推進調査事業費補助金 難治性疾患政策研究事業 難病患者の総合的支援体制に関する研究 平成31年度 総括・分担研究報告書
小児・未成年の人工呼吸療法患者数(推算)
先述の診療報酬算定回数を年齢別でみると0~19歳が61,364回/年、12で割ると5,114回/月になります。
0~14歳の場合は48,814回/年、12で割ると4,068回/月になります。
割合で言うと0~19歳は26.4%、0~14歳は21.0%でした。
ざっくり言えば0~19歳は4分の1、0~14歳は5分の1になります。
C103 在宅酸素療法指導管理料
診療報酬の在宅医療の中に『C103 在宅酸素療法指導管理料』があります。
『C107 在宅人工呼吸指導管理料』と同時に算定するケースは少ないと思いますので、独立したものではないかと考えます。
算定回数から算出すると、0~14歳が5,593回/月、0~19歳が6,374/月であり、この月単位を『人』に置き換えると0~14歳が5,593人、0~19歳が6,374人と推算されます。
0~14歳 | 0~19歳 | |
男 | 35,845回/年 | 41,052回/年 |
女 | 31,270回/年 | 35,434回/年 |
合計 | 67,115回/年 | 76,486回/年 |
小児・未成年
私たちが推算した結果を以下にまとめます。
医療的ケア児が約2万人という推計値を厚生労働省が使っていますので、その半数は人工呼吸器か酸素加療法を受けていることになります。
0~14歳 | 0~19歳 | |
在宅人工呼吸療法 | 4,068人 | 5,114人 |
在宅酸素療法 | 5,593人 | 6,374人 |
合計 | 9,661人 | 11,488人 |
簡単に検索されない
この数字はあくまで私的な試算、推算です。
実際にどのくらいの児が居るのかわかりません。
入退院を繰り返している児が居ると思います。
20歳でも小児科が診ている患者も居ると思います。
データの精緻性を高める調査方法を検討して参ります。
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