2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は2週間が半月が経ち、色々なことが見えてきました。情報量が多くなり、また被災者が求める情報が多様化する中で、その情報発信と取捨選択に課題が出てきます。
全国ネットのニュースでは、被災地全体の中から選抜された数個の話題が提供されるだけで『断水2万戸』程度の包括的な情報になります。
NHK金沢局では、石川県内の給水所など細かく情報提供されていますが、それでも非常に広域なエリアについて紹介していくため、20分間の番組の中で、自身に居る地域の話題は1分もないことがあります。
地上波が見られなくなった地域の方のためBSの3チャンネル(=旧BSP・BS103チャンネル)で、石川県で放送している総合テレビのほぼすべての番組を放送しています。
くわしくはリンク先をご覧ください。金沢局のラジオ第1放送はインターネットでも聞くことができるようになりました。 能登半島地震関連の情報を随時お伝えしています。 同時配信はこちらから、配信後は聞き逃しでこちらで、まとめています。
今回の令和6年能登半島地震で亡くなられた方のお名前を掲載しています。
放送しているライフライン情報は以下でテキストでも掲載しています。市町村ごとに分かれていますのでご利用ください。
珠洲市 輪島市 能登町 穴水町 七尾市 志賀町 中能登町 羽咋市 宝達志水町 かほく市 津幡町 内灘町 金沢市 野々市市 川北町 能美市 白山市 小松市 加賀市
避難所・給水所の地図はこちら聴覚障害(ろう・難聴)のある人たちの状況(1月15日)、障害のある人たちの状況は(1月9日)はこちら
【被災地つながるメッセージ募集中】
被災地からの 被災地への 被災地どうしの 心がつながるメッセージを募集しています。
NHK金沢から随時放送中のライフライン情報をお伝えするラジオ放送でご紹介して被災地のみなさんに届けます。
こちらからお寄せくださいNHK金沢放送局
臨時災害FM開設要望
そのような中で、1月15日に開催された災害対策本部員会議にウェブで参加していた志賀町長から『臨時災害FMの開催をお願いしたい』との要望が出されました。
【参考】令和6年1月15日 第22回災害対策本部員会議 志賀町長発言(41分34秒)
ぜひ、開局を
筆者は災害時に臨時FM局を開局することは賛成です。
自身で開局できないかと思い、ここ数年は色々と調査していましたが、閉局するニュースばかりであまりポジティブな話題はありません。
どのような器材が必要であるのか、放送免許を取得するためにはどのような人員配置が必要であるのか、といったことを調べていましたがわからないことだらけです。
開局の手間はわかりませんが、被災地にコミュニティFM局が開局する価値は理解できます。
地元民にしかわからない道路情報などを発信することで、無用な混乱や渋滞を回避できるかもしれません。
『○○商店から、○○医院にかけて通行止めです』という情報発信の方法はコミュニティFM局らしさがあります。
発災当日から、どこの避難所が開いているとか、どの程度の混雑具合であるとか、医師が居る救護所はどこにあるとか、そうした細かな情報をコミュニティFM局が流すことに意義があると思います。
【参考】地域FM(コミュニティ放送局)再開・尼崎FM82.0MHz
【参考】FM局の発展を願って~勝手にコンサルをシミュレーション
テクノロジーSWAT
COVID-19の流行拡大を受けてニューヨーク州では『New York State COVID-19 Technology SWAT Team』を立ち上げました。
未知なるウイルスに立ち向かうためには、あらゆる手段を講じていく必要があるが、その専門家が居る訳ではないので、皆で知見を出し合って欲しいというような主旨です。
基本的にボランティアです。
例えばデータサイエンスの専門家がボランティア登録し、あるデータを用意できれば、あることを予測することができる、といった提案をします。
あるいは、ニューヨーク州側から『人工呼吸器に使う○○が不足している』という呼びかけがあれば、それを製造できる企業や、代替品として候補できるパーツなどをTechnology SWATのボランティアたちが提案する仕組みです。
今回の能登半島地震でも『Noto Technology SWAT Team』のようなものが立ち上がると良いのではないかと思っています。
生活用水に使う簡易浄水場を作れないか、仮設トイレの衛生状態を保つ方法には何があるか、体育館の換気を効率的に実施するためのテクノロジーは無いか、といったことに行政の職員だけで考えるのではなく、広く国民から意見を募れると良いと思います。
とはいえ、このような取り組みを始めると、善意で情報提供する素人が多く居る事も事実です。
膨大な情報量になるのでむやみやたらと送ってもらうのではなく、何か基準を設ける必要はあると思います。
【参考】New York State COVID-19 Technology SWAT Team
放送を空想
行政から確かな情報を
発災当初は、入ってくる情報を右から左へ流す時期だと思います。
ただし、単純に流すだけではなく、放送局としての精査が求められます。
平時から情報源を確保しておく必要があります。コミュニティFM局として地元自治体や行政機関との連携を図ることが重要だと思います。
発災時は3~6時間毎に、行政機関側から情報を送ってもらうことで、先方都合で情報を提供してもらうことができます。
過去の災害を見る限り、頻繁に新しい情報が入ってくるわけではないので、現況をまとめた原稿読み上げは1時間に1回の収録でも良さそうな気がします。
『1月2日午前7時現在の状況を5分程でお伝えします』といった前置きから、『1月2日午前7時現在までにわかっている道路情報です』『1月2日午前7時現在までにわかっている今日の給水の予定です』と順次紹介していく音声を繰り返し放送するとわかりやすいかなと思います。日時を付けずにひたすら読み上げているラジオやテレビが多いため、自身が記憶している情報とのアップデートがあるのか否かがわかりづらいです。
『1月2日午前9時に更新された情報をまとめてお伝えします』という前置きで、アップデート情報だけ伝えてくれると、そこだけ集中して聴けば良いという人も多いと思います。その後、アップデートがない情報を再び流せば良いかなと思います。
このあたりはプロではないので、放送のプロから言わせると違うかもしれません。あくまで筆者がラジオ局を持ったら、こう流そうかなと考えているだけです。
リエゾンの配置も重要だと思います。
リエゾンとは連絡調整員のようなもので、できれば県庁と市役所に1人ずつリエゾンを配置し、生の情報を提供してもらう一方で、逆に情報を提供する立場になったり、放送枠を用意して知事や市長らからのメッセージを届ける場を提供する調整もできると思います。
市民から確からしい情報を
可能な限り平時から本人確認などを進めておくべきですが、市民からの情報を集めてまとめ、放送します。
私案では『半径300mの情報』を提供してもらうことで、だいぶ細かい情報が集まると思います。
ある程度の安全が確認でき、動き回れる人は半径1kmほどの情報も集めて貰えると良いと思いますが、半径1kmということは1km×1km×3.14で外周だけでも3km以上あり、外周に辿り着くまでに1kmあるので5kmくらい歩くことになります。
火災が起きているが消火活動は進んでいない、延焼面積が広がっているなど客観的な情報だけを送ってもらい、主観は伝えないことで確からしさは高まると思います。
指定避難所からのレポートも重要ですし、自主避難所を作っている人が居れば、その情報を行政に伝えることも重要だと思います。
データから独自の情報を
トヨタ自動車は、どこの道をどのような車種が通行できたかというデータを公表しています。
熊本地震ではこのデータが非常に役立ち、わずかな段差でも通行が困難になったセダン車などと、ランクルのように通り抜けられる車などのデータが役立ちました。
気象情報も客観的な部分があります。
人流データも役立ちます。能登半島地震では定住者と来訪者を見分けることが可能でした。来訪者が異常に多い状況で発災すれば、避難所キャパが足りなくなることや、土地勘がない人が多い事が垣間見えます。特に土地勘が無い人に『○○小学校へ行きなさい』と言っても理解できないと思います。
FM尼崎
兵庫県尼崎市に今年開局した『みんなのあま咲き放送局』の前身は『エフエムあまがさき』(FM尼崎)です。
阪神淡路大震災が発災したのが1995年1月17日、翌1996年に開局したFM尼崎は、震災時の市民への情報伝達の反省を踏まえて開局しました。
補助金打ち切りなどを背景に2023年3月に閉局したFM尼崎は、クラウドファンディングを経て2023年10月に再開局に至りました。周波数は従前と同じ82.0MHzでした。
FM尼崎はいわゆるコミュニティFM、1992年に制度化された超短波放送で最大出力は20W、概ね5kmが可聴エリアになります。
【参考】地域FM(コミュニティ放送局)再開・尼崎FM82.0MHz
【参考】FM局の発展を願って~勝手にコンサルをシミュレーション
年3千万円?
臨時でFM局を開設することは良いと思いますが、それを定常化するとなると大きな費用がかかるので、閉局時期も見据えて事業計画を立てる必要があると思います。
私見では、仮設住宅の居住期間が2年間なので、ある程度の入居が完了する時期を鑑みて2年半くらいでFM局を閉局する計画を立てておくと良いのではないかと思います。
その上で、FM局を継続するための新たな事業計画を立てて、閉局後に事業継承する受け皿を作るか否か、検討すると良いと思います。
全額税負担で考えてしまうと年額3千万円~4千万円の負担になるので、そこまでする必要があるのかどうか、検討する必要はあると思います。
市役所の職員が交代でDJを務めるFM局であれば人件費の部分が大きく削られるので、そうした運営方法を選択すれば永続性は高まると思います。
市職員全員がFM放送の機材を操作できるレベルになれば、発災時に誰が居合わせたとしても放送を開始することができます。
【参考】やおコミュニティ放送株式会社(FM ちゃお)の閉局について(2023年9月21日)
志賀町に期待
志賀町にはぜひ、臨時のFM局を開局してもらいたいです。
その過程がどのようなものであったのか、器材はどのように調達して、誰が管理するのか、町長の出演スケジュールなどはどのように調整しているのか、色々と知りたいことがあります。
開局と併せて、ストーリーも広報してもらえると今後の災害に役立つと思います。
災害について放送
2024年2月23日に旧FM尼崎、みんなのあま咲き放送局で筆者が出演します。
主に災害対策についてお話しします。
この放送枠は、同局の再開に向けたクラウドファンディングの返礼品です。筆者も影ながら応援していました。