『医工連携とは何ですか?』という質問に答えてください、というリクエストがあったため、先日の講演では下記のようなスライドを作りました。
医工連携の『医』の部分は『医療』や『医学』であることは変わっていませんが、『工』の部分が時代と共に変化したかもしれません。
かつては医学者や工学者が、医療のために研究した成果、実際に目の前で困っていることが多すぎたので、1つ1つを解決していった時代の医工連携は、工学が医療のカウンターパートであったかもしれません。
1800年代にアイントホーフェンによって発明された心電計は、今の教科書にも『アイントホーフェンの三角形』などとして載っています。
第二次世界大戦後は、個人名ではなく企業名と共に新たな医療機器が開発されるようになり『工』の部分は『工業』や『産業』に変わっていったと思います。
No Money, No Mission
医療が施しや恵みといったものから措置へ、そして保険の仕組みが社会実装された今では治療を受ける患者と、支払いをする保険者は色々な意味で乖離する時代となりました。
医療経済的に適正でなければ医療機器は社会実装されない、既に社会実装されている保険との相性が悪ければ生き残れないとも言えます。
保険適用外のもの、例えば食事、運動、睡眠などの生活習慣を改善し病気を予防しようとするものも、経済性は重要です。
いずれにしても、提供する企業が利益を出せなければ永続性はありまえん。
2013年の安倍内閣が出した『日本再興戦略』では『健康寿命の延伸』を掲げていますが、これは単に元気で長生きしてくださいということだけではなく、医療を産業としても捉えて雇用や税収につなげていこうという意味も持っていました。
医療機器、特に治療機器は輸入品が多く、ペースメーカーや人工呼吸器などはほぼ輸入品です。
これを国産に置き換えるだけでも何千億円や何兆円という生産高になり得ます。
そして、医療は福祉や保健、ヘルスケアなどとの境界が曖昧になりつつあります。
医療行為自体は医師法などで線引きされても、患者の状態としては曖昧です。
本来であれば治療を開始すべき骨粗鬆症の患者が居ても、自身が骨粗鬆症と知らなければ治療は始まりません。
危機感だけはあるという人は、サプリメントを飲むかもしれませんが、それは民間療法のようなもので、ネット通販で買っているかもしれません。
それが医学的にどうかという議論ではなく、市場が形成されていれば1つの産業なので、医工連携としてはそれを否定する必要はありません。
単独行動なら連携ではない
『これは医工連携で開発した』と言って見せられた製品が、よくよく話を聞いてみると、医療側は誰も関わっておらず、工業製品として仕上がっているだけということがあります。
このとき、トラブルになるのが『これだけ良い品を作ったのに使わない医療従事者がおかしい』という考えに至ってしまうことです。
なぜそうなるのか?
実は『工業製品として』という主語が抜けていることが問題です。
工業製品として優れていても『医療現場では使えない』物であればまったく意味を成しません。
例えば、皮膚や肉を縫い付けるのに優れた糸を開発したという企業があったとします。工業試験場での数値は抜群に良く、工業製品として超優秀な物があったとします。
実際に傷口の縫合に使ったところ、良かったとします。
しかしながら、傷が治ったので糸を抜こうとしたら、固着してしまって抜けなくなってしまい、放置すれば膿んでくるし、抜こうと思えば皮膚を切開しなければならず、また縫わなければならないとすれば、臨床上は使う事ができない品になります。
なぜ、現場では使われないのかを知る事が必要です。
それ以前に、なにが障壁になるのか知った上で開発することが重要です。
関西で医工連携の相談先は….
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弊社は医工連携の黎明期、まだ政策としても強く押されている訳ではないという時代から携わっているコンサルタントが課題に寄り添います。