2024年5月18日~19日に福井市で開催された第34回日本臨床工学会に参加しました。
今回は関連した仕事もあり5月17日~19日の3日間、福井市内に滞在しました。
関西から福井へは、今年3月15日までは特急サンダーバードで乗り換えなしでしたが、北陸新幹線の延伸によりサンダーバードは敦賀まで、そこで乗り換えて福井駅に行く事になりました。
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福井駅は、以前は無かった新幹線のりばが出来ています。福井駅前では、動く恐竜が出迎えてくれます。学会場へ行くルート上に居ました。
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登壇
今回の学会では、初日にワークショップの演者、2日目に一般演題(BPA)の演者を務めました。
医療DX
ワークショップでは『IT素人がマネジメントする創造的医療DX』と題してプレゼンテーション後、4人の演者でパネルディスカッションのような形式の公開意見交換をしました。
『IT素人』は、IT関係を生業にして来なかった、プロとして報酬を貰っていないため非玄人、すなわち素人という意味です。素人レベルのソフトウェアを50本以上制作してきたので、部分的には『ハイアマチュア』と呼べた時期もあるかもしれませんが日進月歩の世界、短期間で陳腐化するのでやはりアマチュア、IT素人がちょうど良いです。
プレゼンは3章に分けてお話ししましたが、第1章の”take-home message”として、素人の仕事、高度な技術を伴わなくてもDXは成り立つといったお話をさせて頂きました。
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第2章ではビジネスについてお話ししました。
今回のセッションは医工連携をテーマにしていますので、ビジネスの話題は欠かせません。
先述のとおり演者はIT素人ですが、事業化は生業なので、ある意味ではプロです。
反対に、ITはプロでも事業化は素人という人が居ます。プログラマーやエンジニアと呼ばれる人、ITの研究者もその道のプロと言えます。
ITのプロは成果物を創出することはできますが、それを世に出して使ってもらう、社会実装ができる訳ではありません。もちろん、社会実装まで出来てしまう人も居ます。
今回、AIには詳しくないが、AIを事業化するという事案において演者が関わっている事例を紹介しました。
第2章の”take-home message”として、研究として優れていても、それはビジネスとは相関しない可能性がある、といったことをお話ししました。
研究としては突き詰めた方が良いことが多いです。精度が99%と99.99%では大きな違いがあるのが研究です。
一方でビジネスでは、90%の精度であっても手軽に使える方が良い場合があります。
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医療用のプログラムをビジネスでとらえたとき、最初に出て来るのが『SaMD』(サムディ)なのか『non SaMD』(ノン・サムディ)なのかという選択です。
充血や色などで病気の予兆がわかる表在臓器があったとします。例えば眼や舌などです。
この写真を撮る、画像を残すだけでは医療機器にはならないと思います。
SaMDとは、医療機器としての目的性を有するソフトウェアのことなので、画像データに基づいて診断する、受診勧奨するといった場合には医療機器になる可能性があります。
ビジネスには費用負担者と消費者(ユーザー)必要です。健康志向のコンシューマー向けビジネスが成り立つならば、医療機器でない方が良いかもしれません。診療報酬で費用回収するならば医療機器でないと点数が付かないと思います。
研究開発と並行して事業計画を立てることで、何をすべきかが見えてきます。
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最後は人材についてでした。
研究と事業化、製造者と販売者、利用者と提供者など二極化する両者の間を埋める、最適化人材が希少な領域がたくさんあります。
昔は家電店がメーカーとユーザーの橋渡し役、最適な商品をセレクトして提案してくれたり、故障時の対応をしてくれました。境界領域を埋めることでビジネスも成り立っていたと言えます。
ITは開発や製造が平易とは言えないため、専門と非専門の間に境界領域が生まれます。さらに、IT業界と医療業界の双方が専門的であるとすれば、業界間にの境界領域が生まれます。
『医療×IT』を考えると、色々な専門と非専門が交差するので、この混線しそうな場を最適化する『境界領域の専門家』が必要になると考えられます。
医療専門でもIT専門でもない、単なるユーザーでもない、『私の専門は境界領域です』という人材の付加価値が増しています。
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在宅医療BCP
一般演題の中のBPA (best presentation award)での発表なのですが、そもそもBCP(business continuity plan)が臨床工学の学会に相応しいのか、というあたりから意見が割れそうです。
人工呼吸療法については臨床工学技士の業務範疇、今回は在宅医療が題材ですが、そこに携わる技士も増えていますので、臨床工学会で扱うべき話題であると言っても良いかなと思います。
発表の冒頭では、在宅医療と医療機関で行われる医療の違いをBCPという観点から比較しました。
臨床的な違いは医療従事者が常駐するか否かです。BCPでは療養と生活が混在する、ケアラーは患者と生活の両方を見なければならない可能性があるという点です。
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今回、患家BCPが策定されれば患者の生命危機は遠ざけられるのではないかという仮説の下、BCP策定の平易化について研究しました。
雛型の空欄を埋めて行けばBCPが策定できるというストーリーで、実際に作られたものをお示ししました。
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”take-home message”としては、療養住環境は医療機関内と異なるということを考えて欲しい、ということだったと思います。
『療養住環境』を深く考えると、医療側も患者側も、意見したくなることが多くあると思います。
学会場×3
本学会は、学会場が3箇所に分かれました。メイン会場は駅から最も遠く、徒歩30分ほどです。2番目の会場と3番目の会場は駅から徒歩圏、2施設相互も近くにありました。
フェニックス・プラザ
福井駅からえちぜん鉄道三国芦原線、または福井鉄道福武線で180円の区間、田原町で下車してすぐの場所にあります。
福井鉄道福武線は路面電車、福井駅で乗車すると福井城跡大名町と仁愛女子高校の2駅を挟んで田原町です。約10分です。
えちぜん鉄道三国芦原線は専用線路を走行する、よくある鉄道です。こちらは新福井、福井口、まつもと町屋、西別院の4駅を挟んで田原町です。
田原町駅は路面電車と鉄道が同じプラットフォームにある珍しい駅です。
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グラン・ユアーズ・フクイ
繊協ビルから徒歩3分くらいの場所にある、ホテルフジタ福井と一体となっているコンベンション施設です。
ホテルのフロントは5階にありますが、学会は3~4階で行われていました。
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繊協ビル
筆者が登壇したセッションの会場は繊協ビルという、駅から5分ほどの場所にある利便性の高いビルでした。ここの6階と10階が学会場になりました。
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