防災における性差解消、五分五分の関係は提唱されているものの実装されているとは思えません。
男女の腕力の差、体格の差はDNAの問題なので仕方ないとしても、社会的な立場については、解決されるべきでしょう。
以前も本ブログで取り上げた内閣府の男女共同参画局のガイドラインは令和2年5月発行ですが、令和6年の段階でも議論が続いている程度で形になっていない項目がたくさんあります。
改めて状況を見てみました。
過去記事(ブログ)
ガイドライン
内閣府男女共同参画局の『災害対応力を強化する女性の視点』は80ページ以上あるガイドラインです。PDFで無料配布されています。
第1部 7つの基本方針
第1部では、このガイドラインの基本方針を述べています。
- 平常時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基盤となる
- 女性は防災・復興の『主体的な担い手』である
- 災害から受ける影響やニーズの男女の違いに配慮する
- 男女の人権を尊重して安全・安心を確保する
- 女性の視点を入れて必要な民間との連携・協働体制を構築する
- 男女共同参画担当部局・男女共同参画センターの役割を位置付ける
- 要配慮者への対応においても女性のニーズに配慮する
第2部 段階ごとに取り組むべき事項
第2部では、具体的な活動について記載されています。
- 平常時の備え
- 1.職員の体制と研修
- 2.地方防災会議
- 3.地域防災計画の作成・修正
- 4.避難所運営マニュアルの作成・改定
- 5.応援・受援体制
- 6.物資の備蓄・調達・配布
- 7.自主防災組織
- 8.災害に強いまちづくりへの女性の参画
- 9.様々な場面で災害に対応する女性の発掘
- 10.女性団体を始めとする市民団体等との連携
- 11.防災知識の普及、訓練
- 12.マイ・タイムラインの活用促進
- 13. 男女別データの収集・分析
- 初動段階
- 14.避難誘導
- 15.災害対策本部
- 16.災害対応に携わる女性職員等への支援
- 17.帰宅困難者への対応
- 18.女性に対する暴力の防止・安全確保
- 避難生活
- 19.避難所の開設・運営
- 20.避難所の環境整備
- 21.要配慮者支援における女性のニーズへの対応
- 22.在宅避難・車中泊避難対策
- 23.災害関連死の予防
- 24.物資の供給
- 25.保健衛生・栄養管理
- 26.避難所の生活環境の改善
- 27.子供や若年女性への支援
- 28.市町村域等を越えた避難生活 …
- 復旧・復興
- 29.復興対策本部
- 30.復興計画の作成・改定
- 31.住まいづくり(応急仮設住宅・復興住宅の提供と運営)
- 32.復興まちづくり
- 33.保健・健康増進
- 34.生活再建のための生業や就労の回復
- 35.生活再建のための心のケア …
災害対策本部員会議など意見交換や意思決定の場に女性の参画が少ないと内閣府が指摘していましたが、現状は変わらないようです。
下図は国土交通省の訓練の様子ですが、2枚の画像は年が違います。しかしながらいずれも、女性ゼロです。
下図は首相官邸の実際の会議の様子です。岸田首相の後方の椅子に座って居る官僚でしょうか、その中に1人だけ女性が居るように見えますが、意見する場のメインテーブルは男性のみです。
【参考】国土交通省:【令和3年9月6日】 国土交通省緊急災害対策本部会議運営訓練を実施
【参考】国土交通省:【令和4年9月1日】 国土交通省緊急災害対策本部会議運営訓練を実施
【参考】首相官邸:令和3年7月1日からの大雨非常災害対策本部会議(第2回)
【参考】首相官邸:令和6年能登半島地震に関する非常災害対策本部会議(第6回)
避難所運営の状況についても、車中泊や自宅避難(在宅避難)の人々は公助の対象外、存在すら把握していないという状況が令和6年能登半島地震では見られました。
災害関連死についても、やはり死者数で騒ぎ立てるマスコミの姿勢は変わっていないかもしれません。マスコミが言いたいということは、国民が死者数の更新に期待している、ということかもしれません。
令和6年能登半島地震の報道の中では『女性』をキーワードにした特集も散見されたので、課題を教訓として残す、活かすという意味では前進しているかもしれません。
一方で、女性が不満を言わなければならないということは、課題解決には至っていないのだと思います。
ケアラーを応援
筆者は、医療的ケア児の患家やケアラーを応援しています。
特に災害対策については、患家を訪問して対策の助言を行うプロボノを実施中です。
現実として、医療的ケア児の主たるケアラーは母親です。20歳代から30歳代の若年層が多いです。
皆が地元に住んでいる訳ではなく、地域に友達が居ない、無理を言える相手が居ないというケアラーも少なくありません。
患児と家族が安心して身を寄せられる場づくりが必要です。筆者は場づくりに努めています。
筆者一人にできることは微々たるものです。裾野を広げるためにケアラーである女性人材にノウハウを伝授し、防災女子を増やしていきたいと思います。
防災女子に、ニーズあり
令和6年能登半島地震から半年が経過し、様々な問題が積み残したまま置き去りにされている現状があります。
例えば車中泊をしている人をどうするのかという問題。車中泊をしている人の中には性犯罪などを恐れて施錠できる個室となる車内に留まっている人が居ますが、その食事は自費、ガソリンも自費、何もかも自費です。トイレや入浴も、避難所によっては入所手続きを済ませないと使わせて貰えない状況があり、困ったことになっているようです。
女性特有のこと、女性だから妥協できないこと、女性の視点で物申すことができれば、色々な課題が解消していくと思います。
災害に関して一定の知識を持ち、自らのために、周囲のために活動できる『防災女子』の育成を推進していきたいと思います。