2022年の新たな研究テーマとしてNFCタグを搭載した電子ペーパーについて掘り下げ始めています。
今はイントロダクション、NFCタグや電子ペーパーについて学んでいる段階です。
電子棚板(ESL: Electric Shelf Label)
スーパーや家電屋など陳列棚がある店舗では、棚の手前に商品名と価格が書かれた札が付いていると思います。
その札は紙やシールが一般的でしたが、スーパーでは日ごとに価格変更があり、家電量販店では1日に何度も価格変更が行われたりしています。
お店が忙しければ棚札の差替えが追い付かなくなりますが、電子棚札の導入により、その手間が軽減され、常に新しい情報をお客さんに提供する事ができるようになりました。
国内企業も積極的に電子棚札の商品ラインアップを揃えていますので、成長市場であると思われます。
通信手段は2種類
電子棚札はコンピューターとの通信によって書き換えられますが、その方法は大きく2種類あります。
1つは無線LANのような数十メートル程度の近距離通信です。棚札であれば店内限定、基地局が1つでも足りるかもしれませんが中継器を使って隅々まで電波を行き渡らせる事もできます。
店舗のパソコンだけでなく、本部のサーバと通信することで、全国一斉に値札を書き換える事もできます。
もう1つがNFCのような近接した短距離での通信です。スマホ端末をタグにかざすといった10cm以内での通信です。
現場に行かなければ通信できないという事がデメリットとも言えますが、目の前にある物だけが通信できるという事で、間違いが起こりづらいと見ることもできます。
例えばNFCを使った電子マネーでは、誤って隣のレジの支払いをしてしまうような事はありません。
利点・欠点
近距離通信と短距離通信(NFC)を簡単に比較してみます。
通信距離が長く、パソコン1台で施設内の全てのタグを書き換えできるのが近距離通信タイプの特徴です。
海外では433MHzタイプが主流なので、それが使えればボリュームディスカウントで安く整備できます。ただし、日本では病院のテレメーターやアマチュア無線などと周波数が近いため使えません(電波法の制約)。
無線LANで使われる2.4GHzのタイプになると値段が10倍くらいになります。通信機器などを揃えて100万円超という事もあります。『トライアルセット』(アイニックス)でも48万円します。
複数店舗や倉庫などで使う事業者にとっては安い投資かもしれませんが、我々には高嶺の花です。
短距離通信は市販のスマホ1台で運用を開始できます。いま日常的に使っているスマホでも大丈夫です。NFC対応のスマホでも廉価品がありますので、1万円台から運用を開始できます。
近距離無線通信 (無線LAN・UHF等) | 短距離無線通信 (NFC等) | |
通信距離 | 数十~100m | 10cm以下 |
周波数 | 2.4GHz無線LAN(主に日本) 433MHz UHF(海外) | 13.56MHz |
通信機器 | 専用中継器/汎用中継器 | NFC端末 |
タグ電源 | 電池内蔵 | 不要 (NFC給電) |
タグ単価 | 1,000~2,000円 | 2,000~3,000円 |
設備投資 | 十数万円~ (汎用PC、通信機、回線) | 1万円~ (スマホ1台で可) |
ロック | パスワードによるロック可 | パスワードによるロック可 |
遠隔操作 | 可 | 不可 |
本研究ではNFC
当社の研究は医療現場をターゲットにしていますので、汎用性が重要になります。
初期投資に200万円、院内の電波状況の調整が必要となると受入施設は限られてしまうので無線LANは難しいと考えました。
輸液ポンプなど汎用医療機器でNFCが採用になり、医療機関での市民権も得ているので、今回はNFCを選んでいます。
試しにタグを1つ購入
AmazonでNFCタグが売っていたので購入しました。3,057円、納期3週間という事でしたが実際は1週間程で届きました。
しっかりした箱に入り、国内では佐川急便さんが手渡しで配達してくれました。
2.13インチ パッシブNFCタグ電子ペーパー
電子ペーパーや電子インクと呼ばれる技術を応用した製品に、NFCタグを載せた製品です。バッテリを搭載していませんのでメンテナンスは不要、小型軽量に仕上がっています。1個3千円を高いと見るかどうかは難しいところです。 |
このタグはWaveshare Electronicsという会社が関わっているであろうという事が商品画像からわかったので、同社サイトを探ってみるとAndroid向けのアプリがダウンロードできました。
使い方
Waveshare Electronicsのサイトにこのタグの使い方が掲載されていたので、参考にしました。
同じ事ができて当然なのですが、調達したタグにスマホのNFC機能を使って書き込みしてみました。
動画は撮りそびれてしまいましたが、iPhone8を借りて同じ試験を実施し、同じ結果を得ています。
研究進行
手元のデバイスでNFCタグに書き込むことができる事がわかりました。
スマホ向けプログラムが内製化できるのか否かがわからないので、これからいくつかの試験を重ねる事になります。
プログラミングの内製/外注のいかんを問わず、臨床に持ち込むことはできそうである所感を得ました。
すなわち、電池を使わない、既にME機器に搭載された規格であるNFCを用いている、医療機関に配備するのはスマホだけでも大丈夫、という点から医療機関および臨床に持ち込んでも良さそうだと考えています。
既存の医療機器安全管理システムと連動させるにはハードルが高そうですが、このシステムだけ単体で実証試験をすることはできると考えています。
共同研究
今後、医療機関や医療従事者と共同研究を行う予定です。
進捗がありましたら当サイトやプレスリリース等でご案内申し上げます。
当社シーズ
本件に関し、当社にはシーズや経験等があります。
(1)医療機器安全管理
当社代表である西謙一は、医療機器安全管理を専門として研究や実務を経験して参りました。多くの学会発表や講演をして参りましたし、現在でも熱心に研究をしています。
また、当社では現在、医療機関(病院)様より医療機器安全管理業務を受託しています。
(2)医療機器安全管理システム
医療機器安全管理システム【CEME】という名称で独自にシステムを開発し、400施設以上に提供して参りました。
病院は8千余りしかありませんので、400という数字は非常に大きな数字であると自負しています。
システムを開発してきたノウハウがあり、今回のタグを医療に活かすための研究成果も持ち合わせています。
(3)自動認識
バーコードやRFIDなどを総じて自動認識と言いますが、医療機器安全管理システムの開発と並行して、自動認識の医療応用について研究して参りました。
医療機器のバーコード管理の規格を預かる一般財団法人流通システム開発センターにも講演等で訪問したこともあります。
月刊自動認識という雑誌の記事も執筆した事があり、この分野に明るい方だと思います。
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