企業ではBCP(事業継続計画)について、考え方が大きく2つに分かれます。
- BCP対策
- 対策としてのBCP
前者はBCP策定を目的化しており、他社から未策定を指摘されないようにしようといった場合に使われる言葉です。
後者は、災害をはじめとする何らかの非常事態に備えるための手段としてBCPを策定しようという場合に使われる言葉です。
いずれにしても、BCPが必要になります。
策定スキルが課題
帝国データバンクが毎年公表している意識調査の『BCP』(事業継続計画)に関するものがあります。今年の結果の概要は以下のとおりです。
- BCP『策定意向あり』は50.0%で4年ぶりに5割に、BCP策定率は19.8%で過去最高
- 事業継続に対して想定するリスク、「自然災害」が71.1%でトップ
- リスクへの備え、「従業員の安否確認手段の整備」(68.9%)や「情報システムのバックアップ」(57.9%)が上位に
- BCPを策定しない理由、「スキル」「人手」「時間」の3要素がハードルに
危機感はあるがBCP策定には至っていない、スキル・人手・時間が阻害要因であると認識している、といったことがわかります。
【参考】帝国データバンク:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)
実践性・具体性
意識調査では『BCPを策定していない理由』を問う設問があります。
先述のとおり『スキル』『人手』『時間』が上位ですが、細かく見ていくと『書類作りで終わる』『自社のみ策定しても効果が期待できない』といった意見が多く出されています。
弊社では具体性を高めるために、ハザードやリスクの想定、脅威の分析などをご依頼元様と一緒に考えていきます。
リスクはいくつも想定されてしまうため、その中から優先度の高いものを選抜していくことになりますが、この作業をすることによって『リスク想定が具体的ではない』といったことが起こらないようにしています。
リスクに対して理想論を掲げるのではなく、現状で保有しているリソースでの対策を講じていくため、実践性の高い計画書が策定されます。
BCP策定の実際
『地震対策のBCPをつくりたい』と相談を受けることが多くありますが、弊社の場合はどのようにコンサルティングしていくのか少しご紹介いたします。
まず、地震といっても対象が幅広いです。揺れ自体で起こることなのか、地震という災害に係るものかを検討します。
揺れで装置や什器が転倒するといった事象は対策もわかりやすいです。
それよりも地震によって起こる停電や断水などの社会インフラの被害は業務を停滞させる要因となります。取引先の操業停止による影響も業務の遂行に影響すると思います。
弊社では医療や介護の業界での経験値が多いため、地震などの要因を見るよりも、想像される結果から見てコンサルしていきます。
『電話やネットが使えないことで、どのくらい困りますか?』という問いに、病院であれば『すぐに患者の生死には関わらない』と答えるかもしれませんが、物品販売業では品出しや決済ができず仕事にならないかもしれません。
何が起きると、どう困るのかがBCP策定では重要になります。
策定の費用感
『いくらかかりますか?』と聞かれることも多々あります。
『50~100万円』と答えれば『高い!』と返されることも少なくありませんが、大手損保さんでは弊社の10倍の提示をしていたこともありますので、費用については相場がわかりません。
成果物については、BCP策定依頼をすればBCPが納品されますので、ある程度は同じようなものになります。
弊社の標準的なBCPコンサルでは、依頼元へのアンケートやインタビューに基づいてBCPを仕上げていくため、それなりにご満足頂いております。
特にご高評頂いているのは、BCMへのコミットメントです。BCMとはマネジメント(Business Continuity Management)です。
計画を策定して終わりではなく、どのような対策をしたいかという構想を社内実装していく一連のコンサルティングを受託させて頂きますので、計画書提出では終わらないサービスがあることにご満足頂いていると思います。
『BCMは要らないので安く』ということで『では20万円で』といったこともあります。
自社の社員さんにBCPを勉強させて、何年もかけて策定するよりは安いとおっしゃる方もおりますが、20万円が高いか安いか、それぞれの価値観だと思います。
従業員の安否確認
費用感とも関連しますが、従業員の安否確認手段の準備が進んでいないという企業が多くあります。
弊社でも同様の声を聴くことが多いため、安否確認システムを用意していますが、既にシステムは何十種類も販売されており、またLINEなどSNSも発達したことで選択できる手段は多様化しています。
おわりに
企業BCPの策定は、自社のことですし経費を使わずに内製化したいというお気持ちは理解できます。
まずは取り組んでみようと思っても、何から手をつけて良いかわからず、やがて熱が冷めて策定を忘れてしまう、といった話をよく聞きます。
『コンサルって怪しい』という人も少なくないですし、実際に無形のサービスゆえに期待外れであったということもあるでしょう。
『怪しくないです』と言っても仕方ないので、良い仕事をして信頼を積み上げていくしかないかな、と思っています。