- 患家(かんか)
- ケアラーとリーダー
- 防災と減災
- 内閣府の推す『減災』
- これが減災(?)
- 患家防災リーダー・患家減災リーダー
- 療養住環境
- 患家減災リーダーのしごと
- 仙台市地域防災リーダー(SBL)
- 患家減災リーダーに番組を
- 防災女子にも番組を
- 患家の防災・減災に女性の力
- 患家では老若男女を問わず
患家(かんか)
患者が居る家庭のことを『患家』(かんか)と呼ぶことがあります。
病院と違って在宅医療では、医療従事者が常駐していないことから、患者のケアに家族が参画することが多くあります。
ケアラー(carers)やケアギバー(care givers)などと呼ばれる家族が、1人の患者のケアの中核人材となります。
ケアラーとリーダー
在宅医療では患者は1人、ケアラーは家族次第なので1人から数人程度です。
家族ゆえに一緒にいる時間が長く、仮に災害が発生した場合にも居合わせる可能性が高いのが家族です。
患家の防災や減災のリーダー的存在は、ケアラーである家族ということになり得ます。
防災と減災
地震などの自然災害は防ぎようがありません。
自然災害に限りませんが、それを災禍としないための『防災』として建物耐震化や防潮堤などが行われます。
ある程度の災禍は受け入れて、しかしながら生命や財産は守ろうという活動に『減災』があります。被害ゼロは目指していない点が重要です。
防災と減災の言葉に引っ張られる必要はありませんが、使い分けしているシーンもあるので、言葉の存在は知っておくと良いかなと思います。
内閣府の推す『減災』
内閣府では『やればできる!減災』をテーマに『今すぐできる7つの備え』を紹介しています。
地震、津波、台風、洪水など、待ったなしでやってくる自然災害に、地域みんなの力を合わせて立ちむかうために、私たちはどのような『備え』をすればよいのかを考え、行動しようと啓発しています。
『すぐできる7つの備え』は、大掛かりな準備や多額のお金を必要とするものではなく、日頃のちょっとした工夫・備え(気づき)があれば、災害被害を軽減することができるとしています。
- 自助、共助
- 地域の危険を知る
- 地震に強い家
- 家具の固定
- 日ごろからの備え
- 家族で防災会議
- 地域とのつながり
【参考】内閣府 防災情報のページ:減災のてびき(減災啓発ツール)
これが減災(?)
内閣府の推す減災グッズとして下図のようなものが掲げられています。
描かれているそのものを備蓄しておくことよりも、その意味をつかんで備えた方が良いと思います。
- 身元や連絡先を記したカード
- 自身が誰であるか認識してもらうことが目的
- 病院の診察券、病名・処方薬を書いたメモ
- 持病があるか否か、その病名や内服薬を確認することが目的
- ポケットラジオ
- 被災状況などがわかる情報ツール
- ラジオが適しているか要検討
- メモ帳・筆記具
- 情報の記録や、伝言するためのツール
- 掲示板に貼付することを考えるとサインペンが良い
- 笛
- 閉じ込められたときの救助要請が目的
- 閉じ込められる可能性のあるときには常に持っていなければならない
- 水・チョコレート等
- 閉じ込められたときの非常食としての飲食物
- 閉じ込められる可能性のあるときには常に持っていなければならない
- 口を覆うハンカチ
- 火災時は煙、崩落などがあれば塵埃から身を守ることが目的
ラジオが情報源になるのであればラジオを持つ必要性がありますが、ラジオ放送が無い地域ではあまり意味がありません。外出時にスマホを欠かさず持ち歩く人が多い現在、スマホの活用方法について深掘りした方が良いかもしれません。
水は喉の渇きを潤す、生きるために必要な水分であることは間違いありませんが、眼を洗ったり、傷口を流すためにも使うという意味があれば、清涼飲料水ではなく『水』であることが重要です。
COVID-19流行拡大以降はマスクを携帯している人も多いので、口を覆うのはハンカチではなくても良いと思います。ただし、止血目的で使うなど応用も考えるとハンカチが良いかもしれません。
患家防災リーダー
患家減災リーダー
言葉は防災でも減災でも良いと思いますが、とにかく患者生命を守ること、家族の健康を損なわないこと、できれば財産も減らさないことなどを目指すための、患家の中核的存在が必要になると思います。
1人で全責任を背負う必要はありません。
誰かがするだろうと依存する関係ではなく、防災や減災について切り出す人、実際に行動してみる人、スキルを高める人、どんな人物像でも良いので、リーダー的存在が居るとスムースに進みます。
療養住環境
患家は療養住環境です。療養もしますし、住生活もあります。
療養環境と住環境の両立は、平時であってもなかなか難しい問題があります。
患家減災リーダーのしごと
リーダーは責任者ではありません。牽引役や先導役が適した和訳かもしれません。
患家で何をすべきか、療養も生活も災害対応もすべてを包含した『業務リスト』を作るとわかりやすくなります。
するべき仕事のリストをつくり、その仕事の優先順位を決める、あるいは現在のリソースで対応できるか否か判断する、といった戦略会議を持つ事も必要になります。たとえ1人しか居ない状況であっても戦略会議は必要です。
使い得る戦術に応じた戦略が決まれば、それに則って仕事をしていくだけです。
弊社では、患家の戦略集となり得るBCP策定などをお手伝いするコンサルティングサービスを展開しています。
仙台市地域防災リーダー(SBL)
SBLとは、Sendaishi chiiki Bousai Leaderの略です。
仙台市では、市民一人ひとりの防災への取組みを一層促進させる必要性から、平成24年度より地域防災の担い手を育成する目的で『SBL養成講習』を開始しています。
SBLに期待される役割は、平常時には地域特性を考慮した防災計画づくりや効果的な訓練の企画運営、災害時には地域住民の避難誘導や救出・救護活動の指揮を行う、などです。
せんだい防災!SBLラジオ
『せんだい防災!SBLラジオ』は毎月、地域で活躍するSBLをゲストに迎え、特色ある地域防災の取組みについてご紹する番組です。仙台市内のコミュニティエフエム4局ネットで放送されています。
- 76.2MHz(ラジオ3):毎月第1土曜日10時30分~11時00分
- 79.7MHz(エフエムいずみ):毎月第2土曜日7時00分~7時30分
- 78.9MHz(エフエムたいはく):毎月第3月曜日14時30分~15時00分
- 89.1MHz(楽天.エフエム東北):毎月第4土曜日9時30分~10時00分
患家減災リーダーに番組を
仙台市の事例を見ると、患家減災リーダーにもラジオ番組を持ってもらいたいなと思いました。
患家減災リーダーを英語で書いてみると『Disaster Mitigation Leader in the Patient’s Home』、略称を『DLP』とした場合『DLPラジオ』とか『DLPの防災コーナー』などの名称でしょうか。
患家で困っていることとして、患家が何を欲しているのか、一般市民にもできる手伝いは何か、といったことが伝わらないことではないかと思います。
患者のケアは、家族がケアラー(ケアギバー)として専門的なことも出来るので、知識や技術がない素人が手伝う必要はありません。
ケアラーである家族の食事やトイレなど、生活に関わることでの支援を受けたいと思っている人が少なくないので、給水所へ行って水を取って来るとか、配給食を貰って来るとか、些細なことでも助かることが多いと思います。
防災女子にも番組を
患家減災リーダーの番組に並行して『防災女子ラジオ』のようなコーナーも良いなと思います。奇数月は患家減災リーダー、偶数月は防災女子、年1回は患家減災リーダーと防災女子の合同イベントを開催、といったことができれば、啓発にも役立つかなと思います。
そうしたことをラジオ番組を通じて発信できれば、より良い社会になるのかなと思います。
患家の防災・減災に女性の力
患家を守るのが女性だけという訳ではありませんが、家父長制が廃止されて久しい今でも女性の社会進出には限りがあり、生産年齢人口に占める常勤者の割合は圧倒的に男性が高いです。
現実問題として女性が家に居る可能性が高く、すなわち発災時に自宅に居合わせる可能性が高いのは女性であると言えます。
患家においてはケアラーの中で女性率が高いと言えるかもしれません。
地域で助け合うにしても、平日昼間の発災であれば女性のマンパワーが圧倒的に多い地域もあると思われます。
私たちは、女性に活躍して頂きやすい環境づくりに努めています。
患家では老若男女を問わず
患家では、何を言っても家族の生命や健康を守る事が第一、次いで財産を守ることを目標に『減災』に取り組むことになると思います。
患家で言う家族は患者本人、同居する家族が第一人称になると思います。
患者は健康弱者ゆえに守られる存在という意識が強いですが、家族が唯一無二のケアラーである場合には、その家族が倒れれば患者も共倒れする可能性が高いため、優先順位は同列になると思います。
建物が損壊しても、停電や断水が起きたとしても、訪問看護が予定通りには来なかったとしても、療養住環境の機能を維持することが『患家減災』の目指すところになり得ます。
目指すは堅牢な家屋ではなく、強靭な療養住環境です。