医療機関や福祉施設の『減災』についてご紹介するシリーズです。今回は『産科・婦人科』(産婦人科)にフォーカスします。

産科・婦人科(産婦人科)の特徴
産婦人科は分娩や産前産後の管理だけが仕事ではありません。不妊治療などの妊娠前の技術面、精神面のサポートも業務範疇です。妊娠を診断するのも産婦人科医の仕事です。
予定された通常分娩を主に行う産婦人科と、緊急の帝王切開などを含む幅広い分娩を担う産婦人科に大別されます。
分娩は母子に関わるので、産婦人科専門の医療機関では限界があり、小児科医や循環器科医など、専門連携できる医療機関で担う場合もあります。
婦人科領域になると更に幅広くなります。子宮筋腫や卵巣がんなど女性特有の疾患は外科との連携も多くなります。更年期障害は更に他科との連携も多くなり、患者との付き合いも長くなります。

脅威
分娩には、キレイなお湯やタオルなどが必要になります。災害が起きていても、生まれようとする生命に対し、産道を戻すような処置はできません。ケガをして止血するのとは訳が違います。
分娩自体は何千年も前から行われてきたので、特別な設備が無い自宅でも出来なくはないです。
新生児のケアを、現代の常識の範囲でできるかどかが重要であり、それを阻害する要因は特定しておく必要があります。
異常分娩になると、手術を伴うので手術設備が必要になります。
新生児に対する血液浄化や心臓手術が必要になる場合は、かなりの設備とスタッフが必要になります。平時でもハイリスクなこの業務を脅かす危害要因は非常に多く、脅威だらけかもしれません。
婦人科領域の手術や処置については、一刻を争うものでなければ、脅威が去るまで待つ余裕があるかもしれません。

減災の焦点
産婦人科の減災においては、緊急性の有無で分ける必要があると考えます。

分娩
分娩については、待ってもらえるものではないので、通常分娩であれば生むと言う選択肢以外に、あまり想定できないと思います。21世紀になっても電車の中で生まれた子が居たりするので、分娩自体は災害に関係していないかもしれません。
妊婦さんのケアは、ある物で済ませることになるかもしれませんが、生まれて来た児に対してはキレイなお湯と清潔なタオルで迎えてあげたいです。
異常分娩は高度施設
母子のいずれか、または両者に何らかの疾患があるなどする場合は、市中の産婦人科専門医院などではなく、手術室や集中治療室がある施設が望ましいと考えられます。
帝王切開を含めた分娩ができ、人工心肺装置など高度な医療機器を用いた手術に半日程度は対応でき、かつ、ICUやNICU、PICUなど専門的な治療室を維持できる電力や医療ガス、空調などが求められます。
妊婦は様子観察
東日本大震災でも、妊婦は街の避難所に居ました。
必要なケアは届けるべきですが、妊婦のための減災対策は医療機関の仕事では無いかもしれません。
減災実務(想定)
脅威分析を丁寧に実施する必要があります。
産婦人科は特殊性が強くあります。そもそも通常分娩は保険適用外、妊婦は患者ではないという見方もあるので、医療の中では特殊な診療科です。
産婦人科は独立した有床診療所であることが多く、通常分娩の担い手は民間の医療法人などであると想定されます。
弊社付近では2020年以降、複数の産婦人科医院が閉院し、年間1,000回分くらいの分娩が蒸発しました。他の医療機関でカバーされていますが、施設数が減れば分娩は集中し、その施設の被災が及ぼす影響が大きくなります。
外科手術後を除けば、産婦人科で人工呼吸器を使う患者が多い訳ではありません。酸素を吸うくらいはあるかもしれませんが、酸素が無ければ治療できないという訳でもないので、通常の在庫量を適正に管理すれば、酸素ボンベが枯渇する可能性も低いと思います。
不妊治療については、ある意味で生命を脅かす可能性もあるので、なるべく中断すべきではないと思います。対応できる設備を維持するための減災対策が求められます。
産婦人科では、予備の電源を充実させている施設が多いです。
弊社のお奨めはプロパンガスの発電機と給湯器の備蓄です。この組み合わせは実際に導入施設が多いようです。
産婦人科医と助産師、看護師のいずれかが欠けると業務に大きな影響を与えるため、ヒトに対する減災対策も不可欠です。

研修・訓練
医療機関やエッセンシャルビジネスに共通して行うべき教育研修メニューを用意しております。
産婦人科に特化した図上演習のシナリオなど、専門的な研修や訓練にも対応します。

実務経験とコンサルティング
弊社では大阪府立母子医療センターのBCP策定や院内研修をサポートしています。
代表(西謙一)が勤務していた国立循環器病研究センターでは循環器病を患う妊婦や患児の治療が多く行われていました。
産婦人科について知らないことも当然ながらありますが、現場で働いていた背景から、言葉数が足りなくても行間が読めるような、そのようなスキルも持ち合わせています。
産婦人科や母子医療を専門とする医療機関のBCP・BCMのコンサルティング実績もあり、弊社が得意とする診療科の1つです。

ご用命ください
弊社では医療機関や福祉施設などのエッセンシャルビジネス向けの減災コンサルティングサービスを提供しています。
補償金などカネで解決することが難しい、生命や健康、倫理など特殊事情に関わる現場に特化した、専門的なコンサルティングを展開しています。
コンサルタントには臨床経験があります。ある程度は医療用語が理解でき、実務が想像できます。実際、共感を得るような刺さる提案にご好評いただいております。
これまでに国公立病院、民間病院、災害拠点病院、ケアミックス病院、介護医療院など様々なタイプの医療機関で減災のお手伝いをして参りました。社会福祉協議会や訪問看護ステーション、医療的ケア児・者の患家などにも対応しております。
減災について、弊社には独自のノウハウがあります。
