先日、ある文書に対して通常使用されない用語や造語として『発災』や『受援』を挙げられました。
常用されない非・常用の用語であるのかどうか、改めて調べてみました。
発災とは?
『発災』は『はっさい』と読み、災害発生を意味します。
『発災時』(はっさいじ)と言えば、災害が発生した時点、特に地震のように明確にわかる災害発生で使われます。
例えば『発災時のこの建物に居た人』という具合に使うことで、その災害において一次的に巻き込まれた人を表すことができます。対して『発災後に駆けつけた人』とすれば二次的に関与した人であることがわかります。
復旧や復興の場面でも『発災から今日までに』といった具合に使い、延べ人数や復旧進捗などの説明が行われます。
受援とは?
『受援』は『じゅえん』と読み、救援や支援を受けることを意味します。
自治体によっては『受援計画』を策定しているところもあり、全国の自治体からの職員派遣の申し入れに対し、どのような職種をどのくらいの期間受け入れるかなどを計画しています。
医療、救急、消防、警察などエッセンシャルワーカーと呼ばれる職種や業界において、ある程度の専門性が求められる中で被災地が被災していない地域から受ける援助についても『受援』が用いられます。
弊社では受援の管理に利用できる多用途安否確認システム(AmpiTa)を開発しました。情報が錯綜する中、連絡に応じる暇もない被災地で、受援をフル活用できるようにするための情報ツールです。
辞書・辞典
『発災』は載っていません。読みで『はっさい』は『八災』と『髪際』が広辞苑に、『髪菜』がブリタニカ国際大百科事典に載っていました。
『受援』も載っていません。広辞苑に『寿宴』(じゅえん)は載っていましたが、他に『じゅえん』の読みはありません。
厚生労働省の資料にはある
厚生労働省の関連資料を検索していると『病院におけるBCPの考え方に基づいた災害対策マニュアルについて』(医政指発0904第2号)という通知が見つかりました。
この通知の中に『発災』が12回、『受援』が3回掲載されています。
【参考】厚生労働省医政局指導課長:病院におけるBCPの考え方に基づいた災害対策マニュアルについて, 医政指発0904第2号, 平成25年9月4日
関連して『医療機関のための災害時受援計画作成の手引き』というものが見つかりました。タイトルに『受援』が入っており、このPDFファイルには50回も『受援』が出てきます。
『医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き』にも『発災』が5回、『受援』が15回掲載されています。
【参考】医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き
厚生労働省のサイト内検索で『発災』と入れると32,500件のヒットがありました。
他省でも使用される
Google検索で『発災 go.jp』や『受援 go.jp』を検索してみました。
結果を見ると内閣府、国土交通省、気象庁、復興庁、総務省、消防庁、農林水産省、環境省、国立病院機構、首相官邸など様々なサイトが候補されます。
『発災』はEMISの項目名
広域災害救急医療情報システム(EMIS)のポータルにある一覧表には『発災/切替日時』という項目があります。『発災』が常用されています。
EMISの中にある災害医医療用語集には、解説の中で『発災』が2回使われています。
まとめ
『発災』や『受援』は辞書に載るほどの市民権を得ていないが、ある分野では使われている用語であることがわかりました。
災害について述べるときに、その関係者には伝わる用語ではありますが、広く国民が理解できる用語ではないようでした。
とは言いましても、医学用語辞典に載っている用語が一般の辞書に載っている訳ではないので、業界用語が『通常使用されない』と指摘されて、文書に用いることができないのは不便です。医学用語については、医学界において通常使用できるかどうかで判断されるので問題ないのですが、災害の業界は学問として確立していると言っていいのかわからないので、使いづらいままです。