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断水時の透析について考察した学会発表スライド(2023年12月発表) | NES株式会社

 2023年12月9日~10日に姫路で開催された第29回近畿臨床工学会において西謙一(弊社代表)が『大規模災害時の断水による大阪市および京都市の透析実施可能性と支援透析選択時期』の演題でBPA(Best Presentation Award)にノミネートされ、その発表を行いました。

 発表スライドについては弊社ノウハウも含むため公表しておりませんでしたが、令和6年能登半島地震を受け、断水が広がっていることを鑑み、公表に至りました。

 断水対応は様々であり、支援透析については賛否両論あると思います。
 スライドでは支援透析の具体的なところは示しておらず、学会では口述で意見をフロアーに投げさせて頂きました。

 被災地ではいまだ6万戸以上が断水、給水状況を見ていても『今日の給水は無くなり次第終了』ということで、1日1回の給水を被災者で分け合うというレベル、大晦日以降お風呂に入っていないという人も少なくないとの報道を耳にします。

 透析では1人あたり120リットル、浴槽1杯分くらいの水を使います。
 生命維持のための透析であるという人道性はゆるぎありませんが、断水している被災地で透析を受けるために費やされる労力や、給水の優先順位が下位になっている水洗トイレや入浴から遠ざかっている被災者について、平時に議論が進む事を願って学会にエントリーしました。

 医療における災害コンサルタントという立場ゆえに、医療や医学に精通した先生方と同じ土俵に上がることはできませんが、そのときどきで最適な選択ができる環境づくり、できると良いと思っております。

 透析患者が300~400人くらい京都や大阪に移動してきても診療枠は確保できそうな気もしますが、患者本人と家族の滞在先となるホテルやマンションの費用などを考えると、簡単なことではないことも理解できます。

【参考】近畿臨床工学会 ベストプレゼンテーションアワードにノミネート/パネルディスカッションのパネラー | NES株式会社




発表資料(要旨)

緒言
 大規模災害による断水時の水確保の可能性を調査し、水を起因とした支援透析の選択時期を検討した。

方法
 給水車保有数を大阪市16台・京都市11台、給水車受援を大阪北部地震の高槻市の実績値より発災日16台および翌日21台、被災者の応急給水量を3L/日/人とする。給水車は容量3t/台、6km(京都市役所と松ヶ崎配水池参考)を平均40km/hrで往復し受水と送水に300L/分のポンプを使用した場合の所要時間38分/回を標準運搬時間と仮定する。2020年度診療報酬J038(人工腎臓)算定回数を156回/人(3回×52週)で除して得た大阪市5,887人、京都市3,406人を透析患者数とする。  地域防災計画上の断水人口から応急給水量を換算すると大阪市122万人で1,220台分、京都市104万人で1,040台分となる。運搬に許容される所要時間は発災日の大阪市で38回/台/日(38分/回)、京都市で39回/台/日(37分/回)、翌日は両市33回/台/日(44分/回)となる。  市内半数の透析患者に透析用水120L/回/人で施行する場合、大阪市で353t/日(給水車118台分)、京都市で204t(同68)の需要がある。

結果
 標準運搬時間で稼働できた場合、市民への応急給水は理論上可能であった。発災日は給水車に余力が無く透析施設は受水困難、翌日は大阪市で182台分、京都市で173台分の余力があった。

考察
 信号消灯や給油などを無視したベストケースであっても発災日に透析施行不可施設が在り、順延すれば2日目の需要水量が倍増し供給不足となり得る。地域防災計画で想定された規模の災害発生時にはワーストケースに備え早急に支援透析の準備が必要であると考える。通信輻輳状態での受入先確保や患者調整は困難であるため、透析施行不可が想定される地域の透析施設は安否・参集確認システムなどを導入し、無連絡でも移動手段が確保できる協定締結、行動計画を可視化するタイムライン策定が必要であると考える。

結語
 大規模災害時の水確保困難を想定する透析施設は、支援透析の迅速な準備開始が必要である。

大規模災害時の断水による大阪市および京都市の透析実施可能性と支援透析選択時期




発表資料(スライド)