Press release
在宅医療機器の患者安全のための停電シミュレーターについて
在宅で医療機器に生命を預けている患者において停電は生命を危機にさらしかねない重大な事案です。弊社ではエビデンスに基づく適正な災害対策を目指し、このたび停電時の医療機器の電源状況を可視化するシミュレーションソフトウェア(以下『停電シミュレーター』という)を独自に開発しました。
この停電シミュレーターは、人工呼吸器等の消費電力や内蔵電池に関する情報を登録し、併せて発電機や蓄電池などの備蓄状況や性能を登録することで、全ての電源が途絶える時期を算出します。
算出結果は横軸に時間を示すグラフ、および時間などを示す数字や活字でレポートを出力します。
電源が途絶えた後は用手換気装置(Bag Valve Mask)による人工呼吸が続けられることになりますが、その長時間対応についてはメトロノームを利用する方法の有用性を示唆した自験例があります。弊社ではこのような実験に基づく対策、エビデンスベースドな災害対策の提案について努めて参ります。
本年1月にプレスリリースしたとおり、弊社では人工呼吸器使用の医療的ケア児に志向した災害対策支援を実施して参りますが、その現場でもこの停電シミュレーターを活用して参ります。
医療的ケア児の患家については、弊社から訪問や依頼した場合、または医療機関様から弊社宛へ直接ご依頼頂いた場合は当面の間、無償でレポートを提供いたします。患者様や業者様からのご依頼は有償になります。
停電シミュレーター開発の経緯は、発電機の燃料備蓄の適正値が具体化されていない課題を発見したことに始まり、自社で実験を重ねるも方眼紙に手書きでシミュレーションしていく作業の労務負荷が大きく複数種のシミュレーションを行うことが容易でないこと、精緻性に欠けることなどの新たな課題にぶつかりました。そこでMicrosoft Visual Studioを用いたC#言語でのプログラミングでシミュレーターを試作したところ良好な結果を得られたため、医療的ケア児の診療にあたる医療従事者の助言を受けて停電シミュレーターの開発を続けました。2024年2月にいくつかの発見があり、加速的に開発が進んだためプレスリリースに至りました。
この事業を通じ、1人の生命を失わない社会に一歩でも近づくお手伝いをして参ります。
プレスリリース: 在宅医療機器の患者安全のための停電シミュレーター(NES株式会社)
2024年3月1日
NES株式会社
本件に関するお問い合わせはこちらからお願い致します。
停電シミュレーション申込
期間中に医療機関様からご依頼いただいた分のシミュレーションは無償です。
患者様やご家族様、医療機関様にはExcelファイル(.xlsx)に必要事項を入力してお送り頂きます。
下記よりファイルをダウンロードすることができます。
設問詳細
設問 | 解説 |
Q01. 内蔵電池(バッテリ)のみで動作する期間 | 人工呼吸器の内蔵バッテリで動作する時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q02. 内蔵電池が空から満充電されるまでの期間 | 内蔵電池が空の状態になってからフル充電されるまでの時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q03. 消費電力(商用100V電源)※定格ではなく実効値が望ましい | 電力負荷としての人工呼吸器の消費電力。100V電源時のワット数を実効値で記載。実測値が望ましい。 |
Q04. 1分あたりの酸素消費量 | 患者に処方された人工呼吸療法の設定における1分あたりの酸素消費量(酸素ボンベから減る量)。21%のroom airを差し引いた分。 |
Q05. 最も少ない日の酸素保管量 | 患家へ酸素ボンベが配送される直前の、最も在庫が減る瞬間の備蓄量。過去最低量を基準。 |
Q06. 加温加湿器を使いますか? | 人工呼吸器に加温加湿器を併用するか否か、災害時であっても使用しつづけるか否かを記載。 |
Q07. 充電機能(電池内蔵)はありますか? | 加温加湿器の充電機能の有無を記載。 |
Q08. 内蔵電池(バッテリ)のみで動作する期間 | 加温加湿器に充電機能がある場合、その充電池のみで動作する時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q09. 内蔵電池が空から満充電されるまでの期間 | 加温加湿器に充電機能がある場合、内蔵電池が空の状態になってからフル充電されるまでの時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q10. 消費電力(商用100V電源) | 電力負荷としての加温加湿器の消費電力。100V電源時のワット数を実効値で記載。実測値が望ましい。 |
Q11. 電気式喀痰吸引器を使いますか?(非電源型を除く) | 電力を使う喀痰吸引器の使用有無を記載。停電対策であるため、足踏式など非電動の吸引器を除く。 |
Q12. 充電機能(電池内蔵)はありますか? | 喀痰吸引器の充電機能の有無を記載。 |
Q13. 内蔵電池(バッテリ)のみで動作する期間 | 喀痰吸引器に充電機能がある場合、その充電池のみで動作する時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q14. 内蔵電池が空から満充電されるまでの期間 | 喀痰吸引器に充電機能がある場合、内蔵電池が空の状態になってからフル充電されるまでの時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q15. 消費電力(商用100V電源) | 電力負荷としての喀痰吸引器の消費電力。100V電源時のワット数を実効値で記載。実測値が望ましい。 |
Q16. 何分毎に使用しますか?(例:1時間に1~2回ならば30分) | 喀痰吸引器の使用頻度。30分毎に使用などの間隔。 |
Q17. 1回に使用する時間は何分程度ですか? | 喀痰吸引器使用時の1回あたりの使用時間を記載(単位は分)。 |
Q18. 電化製品を使いますか?(電子レンジなど生活家電を想定) | 生活家電や調理家電などの電化製品の使用予定を記載。発災後に余剰電力があれば使うという程度であれば不使用(不記載)でも構わない。 |
Q19. 消費電力(商用100V電源) | 電力負荷としての当該電化製品の消費電力。100V電源時のワット数を実効値で記載。生命に関わらないのでおおよそでも構わない。 |
Q20. 何分毎に使用しますか? | 電化製品の使用頻度。30分毎に使用などの間隔を記載。 |
Q21. 1回に使用する時間は何分程度ですか? | 電化製品使用時の1回あたりの使用時間を記載(単位は分)。 |
Q22. 発電機を使いますか? | 発電機の充電機能の有無を記載。 |
Q23. 燃料1回分で発電する期間 | 発電機の燃料交換までの発電(出力)時間を記載(単位は分)。カタログ値でも良いが実測値が望ましい。 |
Q24. 交換用燃料備蓄量(補充できる回数) | 交換用燃料の備蓄量。ガソリンであれば発電機燃料タンクを満タンにできる回数、カセットボンベであれば本数。 |
Q25. 出力電力(商用100V電源) | 発電機の出力電力を記載。カタログ値でも良いが実測値が望ましい。 |
Q26. 汎用蓄電池(ポータブル電源)を使いますか? | ポータブルバッテリなどの汎用蓄電池の充電機能の有無を記載。 |
Q27. 何Wの電力を1時間使用し続ける能力がありますか? | 汎用蓄電池を使用して何ワットの出力を何時間継続できるかを記載(単位はワット・時)。実測値が望ましい。 |
Q28. 内蔵電池が空から満充電されるまでの期間 | 汎用蓄電池が空の状態になってからフル充電されるまでの時間を記載(単位は分)。実測値が望ましい。 |
Q29. 充電時の本体消費電力(商用100V電源) | 汎用蓄電池の充電に係る消費電力を記載。実測値が望ましい。 |
Q30. 給電時の最大出力電力(商用100V電源) | 汎用蓄電池の最大出力電力を記載(単位はワット)。実測値が望ましい。 |
Q31. 専用蓄電池(人工呼吸器機種専用/付属電池)を使いますか? | 人工呼吸器メーカー品の専用蓄電池の充電機能の有無を記載。 |
Q32. 何Wの電力を1時間使用し続ける能力がありますか? | 専用蓄電池を使用して何ワットの出力を何時間継続できるかを記載(単位はワット・時)。実測値が望ましい。 |
Q33. 内蔵電池が空から満充電されるまでの期間 | 汎用蓄電池の充電に係る消費電力を記載。実測値が望ましい。 |
Q34. 充電時の本体消費電力(商用100V電源) | 専用蓄電池の充電に係る消費電力を記載。実測値が望ましい。 |
Q35. 給電時の最大出力電力(商用100V電源) | 専用蓄電池の最大出力電力を記載(単位はワット)。実測値が望ましい。 |
目標は50軒
在宅で人工呼吸器を使用する医療的ケア児の数は5,000人前後です。
これからの半年でその1%、50軒での停電シミュレーションの実施、および停電対策の実装を目指します。
医療的ケア児に限定しなければ約2万人の在宅人工呼吸療法患者が居ると推定されるため1%で200軒、全体ではこの数値目標に向かって計画を立てて参ります。
開発者
停電シミュレーションシステムの開発者は第一種/第二種電気工事士であり、臨床工学技士でもある者です。
電工職人としての建設現場経験、臨工としての臨床現場経験、2つの現場経験に基づいてシステム要件を検討しました。
自らプログラミングも実行し、細かな調整を経てプレスリリースに至っています。
企画、開発、制作、運用のすべてを弊社が行っているNES株式会社独自のシーズです。
停電シミュレータ詳細
本シミュレータは人工呼吸器や発電機などの電力や電池に関する情報を登録することで、停電発生後にどのような経過を辿るのかシミュレーションすることができます。
弊社が扱う入力画面は下図のようなビジーな画面です。入力文字は小さく、かつ、それぞれの説明はありません。自社開発であり、社内用であるため作業を省略しています。このシステム自体を一般公開する予定はありません。
諸設定後にシミュレーションを実行するとシステムのタブが切り替わり、下図のようなグラフ中心の画面に切り替わります。
この画面は一時確認用なので、このあとでウェブファイルに変換してレポートになります。
レポートになるとグラフは拡大され、1つ1つが見やすいように配置されます。
実際の画面はこちらの見本ページをご参照ください。
患者様やご家族様、医療機関様にはExcelファイル(.xlsx)に必要事項を入力してお送り頂きます。
いただいたExcelファイル(.xlsx)は、セル位置などの体裁が崩れていなければ自動取込に対応しています。転記ミスなくシミュレーションを実施できます。
一度設定をすると、10種類のシミュレーションを並行して実施することができます。発電機、汎用蓄電池、専用蓄電池のいずれかを優先する設定で比較試験します。
その結果、レポートは10種類作成されますが、それらを一度に見ることができるビューページを出力することもできます。
複数ページをまとめたウェブページは下図のようになります。画像をクリックすると、実際の画面を参照することができます。
出力レポートのサンプル
本システムから出力されるレポートは下記のようなものになります。随時アップデートしているため、お手元にお届けするレポートとは書式が異なる場合があります。
過去のプレスリリース
医療的ケア児の居るお宅において、非常時の対応は重要です。その対策を練るお手伝いをする弊社サービスのフライヤーです。
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