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医療的ケア児対応の保育所の災害時安全確保(BCP) | NES’s blog

 『医療的ケア児』への支援が手厚くなりはじめていますが、従前の手薄感から見ての差分なので、児にとって充足しているとは言い難い状況ではあります。

 医療的ケア児に具体的な策を掲げているのが厚生労働省とこども家庭庁です。文部科学省は調査結果や通知を掲載するページはありますが厚労省ほどのコンテンツではありません。




本ページの目次

  1. 厚生労働省
  2. こども家庭庁
  3. 保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究 報告書
  4. 保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン
  5. 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン
  6. まとめ




これはブログ上の私見です。




厚生労働省

 厚生労働省の医療的ケア児に関するサイトには以下の項目が記されています。

  1. 医療的ケア児について
  2. 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律
  3. 医療的ケア児等への支援に関する施策・予算等について
  4. 医療的ケア児等コーディネーター等育成研修
  5. 医療的ケア児等の地域支援体制構築に係る担当者合同会議
  6. 医療的ケア児等の支援に係る調査研究等
  7. 医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)について
  8. 医療的ケア児の障害福祉サービスの利用について

 コンテンツが増え続けているので、数年内にはページ構成が大きく変わっていると思います。

 既に特設ページがあるのは『障害時支援施策』と『喀痰吸引制度』です。これらは医療的ケア児の法律制定前からあります。


 これまで厚生労働省が担ってきた障害児に対する施策の一部は、こども家庭庁の発足に伴って所轄が移りました。




これはブログ上の私見です。




こども家庭庁

 こども家庭庁では『医療的ケア児等とその家族に対する支援施策』と『障害児支援部会』のページが設けられています。
 これは、厚生労働省の『医療的ケア児等とその家族に対する支援施策』と『障害者部会』のコンテンツに近い内容が掲載されています。


 厚生労働省で行われていた『子ども・子育て支援推進調査研究事業』はこども家庭庁に所掌が移りましたが、同様に調査は行われています。
 今回、この調査報告書をベースに記事を書いていきます。




これはブログ上の私見です。




保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究 報告書

 『保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究』は厚生労働省やこども家庭庁が公式見解として出している物ではなく、国庫補助の調査研究事業です。
 成果物として添えられているガイドラインについては、厚生労働省やこども家庭庁が発行を認めているものですが、省庁内で検討した末に作成された公式ガイドラインではなく、調査研究事業を受託した企業が策定したものであることに留意する必要があります。

 この資料は『報告書』なので、調査した結果が記載されているものです。目次は以下のとおりです。

第1章 調査研究事業の概要
 1.調査研究事業の背景・目的
 2.事業実施内容
 3.事業実施体制
 4.成果の公表方法
第2章 医療的ケア児の受入れ状況に関するアンケート調査
 1.調査概要
 2.調査結果
 3.調査結果から伺える主な課題
第3章 医療的ケア児の受入れに関する市区町村ヒアリング調査
 1.調査概要
 2.ヒアリング調査の結果
 3.調査結果から伺える主な課題
第4章 保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン改訂案の検討
 1.実施概要
 2.ガイドラインの改訂ポイント
第5章 医療的ケア児の保育のより一層の促進にあたって
 1.看護師の確保と離職防止
 2.就学支援
 3.医療的ケア児支援センター、医療的ケア児等支援コーディネーターとの連携
 4.災害対策における計画策定支援
 5.災害時の具体的な状況を想定したシミュレーション

成果物
・保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン
・保育所における医療的ケア児のための災害時対応ガイドライン
・保育所における医療的ケア児のための災害時対応ガイドライン 業務継続計画(ひな形)


 この資料では『BCP計画』『BCP(業務継続)計画』などと出て来るのですが、推敲で指摘が無かったのが残念です。BCPとはbusiness continuity plan、日本語に訳せば事業継続計画や業務継続計画です。”plan”は中学生でも知っている英単語です。

 すなわち『BCP計画』は『業務継続計画計画』、『BCP(業務継続)計画』は『事業継続計画(業務継続計画)計画』のように計画が重複してしまいます。

 自治体向けのアンケート調査票を確認すると第37問(PDFファイルの305ページ)の選択肢は以下のようになっています。

<公営保育所>(全て選択)

  • 個々の保育所に委ねている
  • BCP(業務継続)計画の策定支援等を行っている
  • 災害時に必要な機材、物品の確保を行っている
  • 災害時の電源の確保を行っている
  • 避難訓練等を実施している
  • 公営保育所がない
  • その他(具体的に)
自治体調査票 医療的ケア児に関する保育実態調査, 37.貴市区町村では、認可保育所等の医療的ケア児の災害時への備えとしてどのような対応を行っていますか。

 用語のミスについては校閲の問題なので仕方ないですが、何人の目を通ったのか気になります(所感)。
 このように基本的で重要な用語を取り違えてしまうレベル感で推敲や校閲が行われているのであれば、国民として残念に思いました。

 調査事業の実施体制を見ると医師、看護師、教育大学教授、保育園長、団体職員、関係省庁、事務局企業が名を連ねています。医療や保育、行政の専門家が揃っていると思います。
 ただし、災害対策、保育の災害対策、医療の災害対策、これらの災害関連の専門人材は居なかったのではないかと推察します。

 調査報告だけであれば、研究班の仮説に基づいて作成された調査票への回答がこうであった、我々ばこう解析した、といったディスカッションで終えて良いと思います。学会発表や論文投稿するのと同じような、意見の主張で良いと思います。
 今回、『ガイドライン』を謳い、『こども家庭庁公認』で資料が配布されることに触れると、研究班の見解という域を超えて、国が示す指針となってしまいます。


 報告書の中では医師ら専門家の指示や助言を得るようガイドしていますが、この研究班が専門家の助言を得ずにガイドラインを作成したのであれば、説得力に欠けそうです。

 調査の生データなので仕方ないですが、都道府県向け調査の第11問(PDFファイルの294ページ)は『n=2』(PDFファイルの20ページ)、すなわち2件の回答に基づく結果を『記載がない 100.0%』としていたので、注意して読まないといけないなと思いました。2件しか無ければ小数点を示す意味があるのかわかりませんが、何となく『100.0%』が独り歩きしそうで怖いです。

 調査報告書なので、調査結果について研究班がコメントも付けています。災害に関しては103ページ(PDFファイルの107ページ)に『3.調査結果から伺える主な課題』の項を設けています。

 調査結果を受けてガイドラインの記載を改める動きもありました。災害に関しては報告書143ページ(PDFファイルの147ページ)にその旨が記載されています。
 その中に『医薬品、医療材料の備蓄』がありますが、これについては深掘りする調査が必要ではないかと思います。備蓄するからには責任と費用が発生しますが、それは誰が負うものなのか、滅菌期限などの管理はどうするのか、対象の患児が卒園したあとはどうするのか、といったことも要検討課題です。

 患児個別でも、病態別でも良いのですが、受け入れる患児に合わせた備蓄が必要になりますので、基本的な部分と個別対応が必要な部分を分けて考えるガイドラインが必要なのではないかと思います。

 電源については調査方法を見直すと良いのではないかなと思いました。ここで言われる『電源が必要な医療的ケア児』のデータは第37問『認可保育所等の医療的ケア児の災害時への備えに関する対応』(PDFファイルの65ページ)で得られたものだと思いますが、その実態について個別事情を勘案する必要がると思います。

 非常用電源については、「電源が必要な医療的ケア児はいない」と回答した施設は 43.9%であったため、半数程度の保育所には電源が必要な医療的ケア児がいると考えられるが、電源を確保している保育所はその 4 割程度(調査回答施設全体の 21.2%)であった。

調査結果から伺える主な課題, 第3章 医療的ケア児の受入れに関する市町村ヒアリング調査

 まず、設問にある『災害時の電源の確保を行っている』については、『何の電源』という定義がありません。これが回答者を悩ませているのではないかと思います。

 USB電源で動く機器に対しては、汎用的なモバイルバッテリがあれば給電できます。

 人工呼吸器など多くの医療機器では12Vの電源ポートを備えており、自動車のシガーソケットから給電することができます。

 持続時間についても定義がなく、半日の持続なのか、1週間の持続なのかで備蓄品が全く異なります。
 弊社では1週間のシミュレーションを一瞬で出すシステムを開発しましたが、それで試すと発電機が無ければ1週間は厳しいなと思われます。


 せっかく公費(税)を使って調査しているのであれば、ぜひ実態を反映するようなデータを公開してもらえるとありがたいです。

 筆者は災害対策が生業の中核、患児についてはプロボノも実施しているので、ぜひ精緻なデータを拝見したいです。




これはブログ上の私見です。




保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン

 保育所等における医療的ケア児への支援に関する研究会が策定した『保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン 改訂版(令和6年3月)』を拝見し、内容を確認していきます。

こども家庭庁令和5年度子ども・子育て支援推進調査研究事業:保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究 報告書(みずほリサーチ&テクノロジーズ)
保育所等における医療的ケア児への支援に関する研究会:保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン

これはブログ上の私見です。


ガイドライン目次

  • 第1章 ガイドラインの趣旨・目的
    • 1.ガイドラインの趣旨・目的
    • 2.医療的ケア児の受入れに関する基本的な考え方
  • 第2章 保育所等における医療的ケアとは
    • 1.医療的ケアへの対応と保育
    • 2.保育所等において行うことができる医療的ケアの概要
    • 3.医療的ケアを実施する際の留意事項
  • 第3章 医療的ケア児の受入れに向けた環境整備
    • 1.関係機関等との連携体制の整備
    • 2.医療的ケア児の受入れ方針の検討・周知
    • 3.地域における医療的ケア児の保育ニーズの把握
    • 4.受入れ可能な保育所等の把握・整備(予算確保、体制確保、研修等)
    • 5.マニュアル等の作成
  • 第4章 医療的ケア児の受入れまでの流れ
    • 1.医療的ケア児による保育利用までの流れ
    • 2.受入れ可能性の検討
    • 3.受入れに際しての確認・調整事項
    • 4.支援計画の策定
    • 5.受入れ・支援体制の確保
    • 6.受入れ後の継続的な支援
    • 7.医療との連携
    • 8.保護者等との協力・理解
    • 9.他分野・その他関係者との連携
  • 第5章 受入れ保育所等における医療的ケア児の生活
    • 1.一日の流れ
    • 2.行事・園外活動
    • 3.日常の保育実施にあたっての留意点
    • 4.就学に向けた支援
  • おわりに
  • 参考資料
    • 1.モデルケース
    • 2.喀痰吸引等研修
    • 3.自治体取組み事例集

これはブログ上の私見です。


第1章 ガイドラインの趣旨・目的

 1ページ目で『医療的ケア児』とは『日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児』と定義しています。具体的には下記のようなケアを受ける児であるとしています。

  • 喀痰吸引(口腔・鼻腔内)
  • 喀痰吸引(気管カニューレ内部)
  • 経管栄養(胃ろう・腸ろう)
  • 経管栄養(経鼻)
  • 導尿
  • インスリン注射
  • その他医行為

 児童福祉法(1947年)は、約70年後(2016年)に大幅に改正され、『守られる』『育てられる』という保護権の対象から、最善の利益の享受を優先した養育が保障される権利の主体へと変わりました。

 『社会的共同親』(corporate parenting)という考え方についても触れられています。

これはブログ上の私見です。


第2章 保育所等における医療的ケアとは

 医療的ケア児に限らず『すべてのこども』一人ひとりの育ちを保障することの重要性を述べて第2章が始まります。

 医療的ケアを行う際の留意事項が示されています。この4項目は看護師にとって普遍的な内容ですが、保育士らにとっては不慣れな部分が多く『アセスメントする』『指示を仰ぐ』の意味や意義を理解しなければ実践されづらいのではないかと思います。
 また、『実施結果は記録、保管することが望ましい』となっていますが、医療機関ではカルテ記載が当然の仕事ですので『望ましい』という表現ですと記録しない者が現れて、現場に混乱を来たすのではないかと思います。
 医療事故については、『望ましい』だと生ぬるい感じがします。『再発防止に関する報告』というのも、どのレベルの人が事故を検証したのか、再発防止策を考えたのかによって、有用な解決策ではない可能性もありますので、医療機関で行われている医療安全(患者安全)のレベル感を取り入れるべきだと思います。

  • 登園前の健康状態や登園中の様子に関する保護者への聞き取り、保育所等での様子や他の保育士等への聞き取りや観察等により、当日の健康状態を確認したうえで、医療的ケア実施の可否についてアセスメントする必要がある。
  • 実施可否について疑義が生じた場合は、あらかじめ定めた連絡方法により、保護者あるいは指定の医療機関等に連絡し、指示を仰ぐことが求められる。
  • 医療的ケア児の安全確保、医療的ケアの質の担保のためにも、日々の健康状態や医療的ケアの実施結果は記録、保管することが望ましい。
  • 事故の初期対応を含む危機管理に関する事項、事故発生時の報告や再発防止に関する報告の仕組みをあらかじめ用意しておくことが望ましい。

 医療的ケアについて概要が示されています。

経管栄養 自分の口から食事を取れなくなった人に対し、鼻あるいか口から胃まで挿入されたチューブや、胃ろう・腸ろう(胃や腸から皮膚までを専用のチューブで繋げる)を通じて、栄養剤を胃や腸まで送る方法。
服薬管理 主治医の処方箋に基づき、薬の管理を日々行い、指定された時間に服薬援助を行う。処方された薬を処方通りに正しく服薬できる習慣を身に付け、薬の飲み忘れの防止、受診への意識付けを図る。
吸引 痰や唾液、鼻汁などを自分の力だけでは十分に出せない場合に、器械を使って出す手伝いをすること。吸引は、本人にとって決して楽なものではないが、痰や唾液を取り除くことで、呼吸を楽にし、肺炎などの感染症を予防するために必要。
導尿 排尿障害により、自力で排尿が難しい場合に、膀胱にカテーテルを留置し、排尿するもの。
 こどもの場合、成長に伴い自分で導尿ができるようになる場合もある。その場合でも、身体介助や清潔操作の介助が必要になる場合があるが、その際の介助は医行為には当たらない。
酸素療法の管理
(在
宅酸素療法)
 呼吸機能の低下が原因で、体内の酸素が不足している場合、酸素供給器等を使い、酸素を補う。
気管切開部の管理 気管とその上部の皮膚を切開してその部分から気管にカニューレを挿入することで気道を確保している者について、気管カニューレ周辺の管理を行う。
吸入 呼吸器系の疾患を持つ患者が薬剤の吸入をしたり、スチームの吸入をしたりする。
人工呼吸器の管理 人工呼吸器(肺を出入りする空気の流れを補助するために用いる機械であり、その目的は適切な換気量の維持、酸素化(酸素が血液に取り込まれること)の改善、呼吸仕事量(呼吸のために呼吸筋群が行う仕事量)の軽減を図るもの。)の動作確認や設定等の管理を行う。
インスリン注射
(皮下注射の管理を含む)
 糖尿病によりインスリンの分泌が十分でない場合等、定期的なもしくは、身体状況や医師の指示に合わせて主に皮下注射によりインスリンを補う。
人工肛門
(ストーマ)
 病気などにより自然に排便が難しい場合に、腹部に排便用のルートを造るもの。
 装具の開発が進み、生活上の不便や不快感は少ない。
 人工肛門の装具の交換、排泄物の処理は医行為には当たらない。
医療的ケアの概要, 保育所等での医療的ケア児の支援に関するガイドライン: p8


 保育士らが対応できる医療的ケアについて、一定の研修を受けて認定証を受けた者は以下の行為が実施できるようになりました(社会福祉士及び介護福祉士法・2011年改正)。
 できるようになったということは、責任や危険も伴います。患児にとってのメリットだけにフォーカスせず、行為者の責任に見合った教育の機会、待遇や身分保障なども整備していく必要があります。

  1. 口腔内の喀痰吸引
  2. 鼻腔内の喀痰吸引
  3. 気管カニューレ内の喀痰吸引
  4. 胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養
  5. 経鼻経管栄養


 看護師は診療の補助と療養上の世話を生業とするため、医療的ケアの実施は本業です。病院でも在宅医療でも医行為は日常的に繰り返されています。

 近年のトピックとして抜けてしまった気管カニューレを再挿入することは保助看法第37条の『臨時応急の手当』として認められています。

 福祉、教育、保育等、あらゆる場において子どもの気管カニューレが事故抜去し、生命が危険な状態等のため、緊急に気管カニューレを再挿入する必要がある場合であって、直ちに医師の治療・指示を受けるととが困難な場合において、看護師又は准看護師が臨時応急の手当として気管カニューレを再挿入する行為は、保健師助産師看護師法第37条ただし書の規定により、同法違反とはならないと解して良いか。

気管カニューレの事故抜去等の緊急時における気管カニューレの再挿入について(厚生労働省医政局看護課長宛照会)

 貴見のとおり。また、気管カニューレの再挿入を実施した場合は、可及的速やかに医師に報告すること。

気管カニューレの事故抜去等の緊急時における気管カニューレの再挿入について(回答)

第三十七条
 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

保健師助産師看護師法

これはブログ上の私見です。


第3章 医療的ケア児の受入れに向けた環境整備

 適切な医療と保育の提供のために、医療・保健・福祉・教育などの関連機関との連携が望まれています。

 設置が進んでいる都道府県のは医療的ケア児支援センターが連携の核となり、触媒となり、患児のためにより良い環境を作ることが進められています。

 受け入れ側として、以下のような方針を検討すべきとしています。

  • どのような医療的ケアについて対応できるか
  • 看護師等、医療的ケアを実施する者の確保・配置方策
  • 各保育所等において受入れられる児童の年齢
  • 各保育所等における医療的ケア児の受入れ(保育)時間
  • 保育における活動範囲(施設外の活動への対応等)

 自治体には『地域における医療的ケア児の保育ニーズの把握』が求められています。どのように把握していくかが難しいですが、そこはあまり深掘りされていません。

これはブログ上の私見です。


第4章 医療的ケア児の受入れまでの流れ

 本章の冒頭では保育利用までのフローが示されています。
 4月入所の場合、前年9~10月頃に保護者から相談となっていましたが、市町村の支援体制などを鑑みると、半年で保育所内の体制を構築できるのか、難しいかなと思いました。

 このガイドラインでは『一人ひとりの発達・発育状況に応じた保育』『一人ひとりの育ちを保障』『一人ひとりの状況に応じて適切な医療と保育』と幾度も『一人ひとり』の個別性について述べられていますが、半年の間に個別対応ができるのか、といった点を受入側となる保育所は検討しておくべきだと思いました。

 確認事項として以下のようなリストが出されていました。

  • 医療的ケアの範囲、手順
  • 医療的ケアの実施者
  • 看護師、保育士等と保護者等の役割分担
  • 医療的ケアのために必要な環境整備(スペース、衛生管理等)
  • 必要な物品の用意・管理方法
  • 廃棄物の取扱い
  • 保育所等の外部での活動時の対応
  • 安全確保策
  • 緊急時の対応、連絡先
  • 医療的ケアの担当者不在の際の対応
  • 災害時の対応

 支援計画の策定についても記載があります。

 『支援計画の内容は保護者と共有し同意を得る』は基本的なところですが、その目標をしっかりと決めてから保護者と話し合わなければ上手くいかない場合があると思います。
 保育所の都合を押し付けるものではありませんが、保護者を満足させるものでもないと思います。互いに妥協点を探さざるを得ない場合があると思いますので、早めの相談開始が重要であり、どこをゴール(目標)にするのかが重要であると思います。
 保育所において、すべてが対応可能ではないと思いますので、この保育所では何ができるのか、マンパワーやスキルを鑑みて取捨選択しながら、個別の支援計画を策定していく必要があると思います。
 まずは患児が保育所へ通うことができることが『目標』になると思います。

 計画を作る前に支援体制の確保が必要ではないかと思います。
 保育士らの教育を進め、ここまで出来るという目安をつけた上で保護者らに『このレベルであれば受入できます』といった説明が必要だと思います。
 今後、経験者が増えれば受入レベルも高まると思いますが、現状では黎明期、手探りなところもあると思いますので、身の丈に合った体制の可視化が必要だと思います。

 医療との連携や保護者との協力などが本章の最後の方に出てきますが、実務としては早めに協議をしておかないといけない部分だなと思います。

これはブログ上の私見です。


第5章 受入れ保育所等における医療的ケア児の生活

 本章では1日の流れやケアの実施など実務について紹介されています。

 第7項では『防災計画および事業継続計画』が示されています。
 事業継続計画の作成が求められていますが、保育所としての全体計画だけではなく、患児に合った計画が必要になります。患児の生命維持が重要業務になりますので、それを目指す計画が必要になります。保育所には健常児も含めて多くの子どもが居るため、全員の生命や健康の維持を目指せる計画策定が求められます。

 災害時において、医療的ケア児の安全を確保するとともに、医療的ケア児の保育を継続、または、可能な限り早期に再開するために、事前に防災計画および事業継続計画を作成する必要がある。


 第8項では『ヒヤリハット事例の蓄積・分析、事故防止策の検討』が示されています。
 ヒヤリハットについては、医療面と保育面のいずれかによって対応を分ける必要があると思います。保育所ですので保育のエキスパートは多く在籍していると思いますが、医療従事者は少ないと思いますので、医療系のヒヤリハットについては医療従事者の意見を聴くことができる体制が必要になると思います。




これはブログ上の私見です。




保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

 調査報告書の成果物として『保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン』(PDFファイルの234ページ)が掲載されています。ガイドライン自体は30ページほどです。本編以外に『ひな形』が20ページほどあります。

 報告書全体で計376ページある『保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究 報告書』では『事業継続計画』や『業務継続計画』は80回以上出てきます。今回の調査ではBCPに一定のエフォートを割いていると思います。

保育所における医療的ケア児のための災害時対応ガイドライン

これはブログ上の私見です。


ガイドライン目次

  1. はじめに
  2. 平常時の備えについて
  3. 災害時の対応 ~想定にとらわれずに行動する~
  4. 業務の継続
  5. 業務継続計画(BCP)の検証
  6. おわりに
  7. 参考資料

    これはブログ上の私見です。


    I.はじめに

     まずガイドラインの狙いが説明されています。

     保育所なので、基本要件として『保育所保育指針』をチェックする必要があります。


     保育所保育指針の第3章では『健康及び安全』について述べられています。ここに『災害への備え』が示されています。

    4 災害への備え

    (1) 施設・設備等の安全確保

    ア 防火設備、避難経路等の安全性が確保されるよう、定期的にこれらの安全点検を行うこと。
    イ 備品、遊具等の配置、保管を適切に行い、日頃から、安全環境の整備に努めること。

    (2) 災害発生時の対応体制及び避難への備え

    ア 火災や地震などの災害の発生に備え、緊急時の対応の具体的内容及び手順、職員の役割分担、避難訓練計画等に関するマニュアルを作成すること。
    イ 定期的に避難訓練を実施するなど、必要な対応を図ること。
    ウ 災害の発生時に、保護者等への連絡及び子どもの引渡しを円滑に行うため、日頃から保護者との密接な連携に努め、連絡体制や引渡し方法等について確認をしておくこと。

    (3) 地域の関係機関等との連携

    ア 市町村の支援の下に、地域の関係機関との日常的な連携を図り、必要な協力が得られるよう努めること。
    イ 避難訓練については、地域の関係機関や保護者との連携の下に行うなど工夫すること。

    保育所保育指針 第3章

     ガイドライン4ページ目(PDFファイルの241ページ)で『業務継続計画(BCP)とは』と題してBCP(business continuity plan)について述べられています。

     保育所に立ち位置については『非常時においても継続的なサービスが求められる』と定義しています。その上で『業務を継続する体制を整えることが重要』としています。

     保育所等は、こどもの生命及び心身の安全等を支えるために必要不可欠な施設となっており、非常時においても継続的なサービスが求められることが想定されます。そのために、まずは保育所の職員等、利用するこどもや保護者の災害対策等に目配りし、職員や保護者とともにこどもの安全を確保し業務を継続する体制を整えることが重要です。

    2.業務継続計画(BCP)とは, I.はじめに, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     次の段落では厚生労働省が『児童福祉施設における業務継続ガイドライン』を示しているとありますが、これはおそらく間違いなのではないかと思います。

     厚生労働省においては、保育所を含む「児童福祉施設における業務継続ガイドライン」を以下のとおり示しております。本ガイドラインにおいては、令和4年3月 31 日「児童福祉施設における業務継続ガイドライン」をもとに特に医療的ケア児の受入れを行う保育所等が留意する点について記載致しました。
     業務継続計画(BCP)作成にあたっては、本ガイドラインと合わせて「児童福祉施設における業務継続ガイドライン」を参照しましょう。

    2.業務継続計画(BCP)とは, I.はじめに, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     『児童福祉施設における業務継続ガイドライン』は厚生労働省の国庫補助事業(令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)として民間が実施した調査の成果物の1つであり、厚生労働省の委託事業などではないと思います。厚生労働省公式として公開もされていません。
     もう一点注意しておきたいのが『児童福祉施設における業務継続ガイドライン』には編集委員や発行者など人名や社名の記載がまったくありません。
     参照することに問題ありませんが、あくまで参考資料であることを認識し、順守すべき内容では無い事を前提として読み進めた方が良いかなと思います。

     次の5ページにある『業務継続計画(BCP)と防災計画の違い』については筆者の無知ゆえに『防災計画』の定義がよくわかりません。

     防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」にありますが、その目的はBCPの目的の大前提となっています。BCP においては、防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、または早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり、親密な関係にあります。

    2.業務継続計画(BCP)とは, I.はじめに, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     この文章だけ見ると、下記の『介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』とよく似ています。下記は令和2年12月には公開されていますので、令和5年度事業より先です。
     

     防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」ですが、その目的は、BCPの主な目的の大前提となっています。つまり、BCPでは、防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、または、早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり密接な関係にあります。

    2-3.防災計画と自然災害BCPの違い, 2.BCPの基礎知識, 介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省老健局)

     完全コピーではないのですが『密接⇒親密』『BCPの主な目的⇒BCPの目的』など少しだけ文字を変えているだけでほぼ同じです。『厚生労働省の許可を得て転載』などの表記がなく『参考』にしているだけということですが、これが論文等であれば倫理的に許されないレベルかもしれません。

    保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省老健局)
    防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」にありますが、その目的はBCPの目的の大前提となっています。防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」ですが、その目的は、BCPの主な目的の大前提となっています。
    防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、または早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり、親密な関係にあります。防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、または、早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり密接な関係にあります。

     厚生労働省の『介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』では図表を用いて防災計画とBCPの違いを説明しているので意味が伝わりやすいと思いますが、『保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン』では活字だけなので理解しづらいです。
     もし『防災計画』という言葉の意味を理解せずに記載しているのであれば、問題は根深いと思います。個人的には『防災計画』の意味を教えてもらいたいです。

     筆者らが仕事で使う『防災計画』という言葉は主に、災害対策基本法の定義に従って使います。


     災害対策基本法の第二条『定義』では、第七項に『防災計画』が定義されています。

    (定義)
    第二条

    七 防災計画 防災基本計画及び防災業務計画並びに地域防災計画をいう。

    災害対策基本法

     防災計画に定義される『防災基本計画』『防災業務計画』『地域防災計画』は以下の通り定義されています。

    (定義)
    第二条

    八 防災基本計画 中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画をいう。

    九 防災業務計画 指定行政機関の長又は指定公共機関が防災基本計画に基づきその所掌事務又は業務について作成する防災に関する計画をいう。

    十 地域防災計画 一定地域に係る防災に関する計画で、次に掲げるものをいう。

    イ 都道府県地域防災計画 都道府県の地域につき、当該都道府県の都道府県防災会議が作成するもの
    ロ 市町村地域防災計画 市町村の地域につき、当該市町村の市町村防災会議又は市町村長が作成するもの
    ハ 都道府県相互間地域防災計画 二以上の都道府県の区域の全部又は一部にわたる地域につき、都道府県防災会議の協議会が作成するもの
    ニ 市町村相互間地域防災計画 二以上の市町村の区域の全部又は一部にわたる地域につき、市町村防災会議の協議会が作成するもの

    災害対策基本法

     第四十二条では『地区防災計画』で出てきて、その詳細は第四十二条の二で規定されます。

    (市町村地域防災計画)
    第四十二条

    3 市町村地域防災計画は、前項各号に掲げるもののほか、市町村内の一定の地区内の居住者及び当該地区に事業所を有する事業者が共同して行う防災訓練、地区居住者等による防災活動に必要な物資及び資材の備蓄、災害が発生した場合における地区居住者等の相互の支援その他の当該地区における防災活動に関する計画(同条において「地区防災計画」という。)について定めることができる。

    災害対策基本法

     施設別の『防災計画』として検討する場合、この『地区防災計画』を拡大解釈して検討するかなと思います。法定義と混同したくないので『防災計画』とは言わないと思います。
     自治体に『計画提案』する訳ではありませんが、法人内や施設内など一定の『自治』があり、特に非常時には孤立したり要塞化して『自治』が重要になるエッセンシャルビジネスでは、『地区防災計画』的なものを持つ必要があります。

    (市町村地域防災計画)
    第四十二条の二

     地区居住者等は、共同して、市町村防災会議に対し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めることを提案することができる。この場合においては、当該提案に係る地区防災計画の素案を添えなければならない。

    2 前項の規定による提案は、当該計画提案に係る地区防災計画の素案の内容が、市町村地域防災計画に抵触するものでない場合に、内閣府令で定めるところにより行うものとする。

    3 市町村防災会議は、計画提案が行われたときは、遅滞なく、当該計画提案を踏まえて市町村地域防災計画に地区防災計画を定める必要があるかどうかを判断し、その必要があると認めるときは、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めなければならない。

    4 市町村防災会議は、前項の規定により同項の判断をした結果、計画提案を踏まえて市町村地域防災計画に地区防災計画を定める必要がないと決定したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該計画提案をした地区居住者等に通知しなければならない。

    5 市町村地域防災計画に地区防災計画が定められた場合においては、当該地区防災計画に係る地区居住者等は、当該地区防災計画に従い、防災活動を実施するように努めなければならない。

    災害対策基本法

     法律上に『防災計画』の定義があるので、現場で『防災計画』という言葉を使ってしまうと混乱するため、専門的に災害対策に携わる人はむやみに使わない言葉かなと思います。

     『保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン』の策定委員の方々がどのように『防災計画』を定義なさったかわからないという点が問題になるかな、と思います。

     言葉については『BCP計画』という言葉も問題でした。『業務継続計画計画』と訳さなければならないので、違和感があります。

     次の6ページでは『個別避難計画』について述べられています。

    これはブログ上の私見です。


    II.平常時の備えについて

     『医療的ケア児の基本情報』(PDFファイルの244ページ)という項から始まります。適時適切な情報伝達が必要である旨はそのとおりだと思います。

     MEISについては厚生労働省からこども家庭庁に所掌が移管されていますが、リンク先URLが厚生労働省のままになっているので注意が必要です。今日現在、リンク切れにはなっていません。

    医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)について こども家庭庁
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09309.html


     新しいURLは『https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/meis』です。


     第2項目は『災害リスクの把握』(PDFファイルの245ページ)です。ここはBCPの方向性が決まる重要な部分ですが、本文は500文字程度しかありません。

     ハザードマップについて強く書かれていますが、医療的ケア児のためのBCP策定においては自施設が直接的に被災するか否かも重要ですが、ハザードマップで見てわかる被害が発生する確率よりも社会的な非常事態の方が影響を及ぼすことの方が多い可能性があります。

     リスク把握ばかりではなく、ハザードや脅威といった原点から結果までを見たBCP策定が必要になるため、弊社では脅威分析に重きを置いています。

     ガイドラインにつけられているリンクは切れているので、最新のものを示しておきます。


     第3項目は『災害対応体制構築』(PDFファイルの246ページ)です。前項の半分程度、244文字しかありません。

     迅速かつ確実に避難を完了させるためには、それぞれの役割ごとの適切な人員と責任者を配置する必要があります。役割ごとの配置人数や責任者(リーダー)を記載しましょう。
     夜間等、勤務している保育所職員の人数が少ない場合は、迅速に参集が可能な職員等を緊急参集者として定めておく必要があります。
     また、保育所職員だけでは医療的ケア児の避難支援要員を確保することが容易ではない施設も想定されることから、地域の方や医療的ケア児の家族、その他関係機関等の外部の避難支援協力者の協力体制を確保することが重要です。

    3.災害対応体制構築, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     この文章が避難に傾いているのでおかしいなと思ったのですが、ここも引用元を明示せず書き写している感じです。

     災害が発生する前に迅速かつ確実に避難を完了させるためには、それぞれの役割ごとに適切な人員と責任者を配置する必要があります。本項には、役割ごとの配置人数や責任者(リーダー)を記載しましょう。
     具体的には、全体を指揮する「統括指揮者」に加えて、各役割を担うグループや班ごとに、適切な人員を配置し、そのリーダーも配置しましょう。人員は、防災体制のレベルによって異なる場合があるため、それぞれの段階ごとの人員を記載しましょう。
     また、夜間や休日など、勤務している施設職員の人数が少ない場合は、迅速に参集が可能な施設職員等を緊急参集者として定めておく必要があります。
     なお、施設職員だけでは施設利用者の避難支援要員を確保することが容易ではない施設も想定されることから、地域住民や施設利用者の家族、地元企業等の外部の避難支援協力者の支援体制を確保することが重要です。本項には、外部の避難支援協力者の人員や召集のタイミング等も記載しましょう。
     施設職員を参集させる場合や外部の避難支援協力者を召集する場合は、施設職員や外部の避難支援協力者の身の安全を確保することが重要であるため、安全が確保できる早い段階で参集や召集を行うことが必要です。

    (4)防災体制確立時の人員配置, 第3章 防災体制に関する事項, 要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き(国土交通省 水管理・国土保全局)

     参考文献としてガイドラインの最後にリストはされていますが、この部分については丸写しに近いので『参考』ではなく『転載』である旨を記載すべきではないかと思います。
     著作者側の立場を考えてみると、文字を少し変えているあたりが、悪意でないことを願うばかりです。

    保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き(国土交通省 水管理・国土保全局)
    迅速かつ確実に避難を完了させるためには、それぞれの役割ごとの適切な人員と責任者を配置する必要があります。役割ごとの配置人数や責任者(リーダー)を記載しましょう。迅速かつ確実に避難を完了させるためには、それぞれの役割ごとに適切な人員と責任者を配置する必要があります。本項には、役割ごとの配置人数や責任者(リーダー)を記載しましょう。
    夜間等、勤務している保育所職員の人数が少ない場合は、迅速に参集が可能な職員等を緊急参集者として定めておく必要があります。夜間や休日など、勤務している施設職員の人数が少ない場合は、迅速に参集が可能な施設職員等を緊急参集者として定めておく必要があります。
    保育所職員だけでは医療的ケア児の避難支援要員を確保することが容易ではない施設も想定されることから、地域の方や医療的ケア児の家族、その他関係機関等の外部の避難支援協力者の協力体制を確保することが重要です。施設職員だけでは施設利用者の避難支援要員を確保することが容易ではない施設も想定されることから、地域住民や施設利用者の家族、地元企業等の外部の避難支援協力者の支援体制を確保することが重要です。

     第4項目は『安否確認』(PDFファイルの246ページ)です。ここは250文字です。

     ここでは安否確認の目的が示されていません。安否確認することが目的化してしまいそうです。もし、安否確認がルールになってしまうと、本質的に必要な業務を差し置いてでも安否確認をしなければ叱られる、糾弾されると恐れてしまいますので、目標志向で行動できるよう安否確認の位置づけが重要になると思います。
     保護者との連携(第6項目)でも『状況を報告する必要があります』と強めに書かれていますが『必要』であるかは各園、各児によって異なると思います。

     おそらくですが、安でも否でも、保護者にできることは限られていると思います。現場の保育士らにとって、保護者へ連絡をしたから業務が軽くなることは無いと思いますので、安否連絡を重要と位置付けてしまうのは危険かもしれません。
     非常事態を乗り切るために保護者の存在有無は状況を大きく変えますので保育所に来る努力をしてもらう必要はあると思います。
     弊社では、保護者が預け先、ここで言うと保育所へ安否連絡を入れるように促しています。併せて、参集連絡も入れてもらいます。保護者が何時間後に保育所へ来てくれるのかを予定できるだけでも保育所の負担は変わります。来所が絶望的であれはスタッフを温存しますし、半日程度であれば休憩なしでも頑張れるかもしれません。


     第5項目は『人員確保』(PDFファイルの247ページ)です。ここは381文字です。

     ここでは保育所以外の所に支援や協力を求めることについて述べられています。理想的な内容ですが、どう実現したら良いのかわからないのではないかと思います。
     また、喀痰吸引等研修を修了する保育士を増やすと『緊急時への備えになります』と書かれています。確かに備えにはなりますが、医療行為ができる人材の確保が目的化しないように、どのような業務にどれだけの人員を割かなければならないのかをしっかりと洗い出す必要があります。


     第6項目は『保護者との連携』(PDFファイルの247ページ)です。ここは434文字です。

     ここは、患児個別のBCP策定と深く関わります。社会全体でこどもを育てるという考え方で言えば、保護者には無事に子どもを引き渡すことが目標となります。
     ただし、現状では環境が整っておらず保護者に過度な期待を持たせられないため、保護者の意向を聴きながら、保育所でどこまでできるのか、何時間までなら安全に預かれるのか、危険な時間帯に差し掛かってしまった場合の対応レベルや責任はどうするのか、具体的に話し合う必要があります。弊社では、時間帯別のケア水準の策定まで行います。


     第7項目は『地域のつながり』(PDFファイルの247ページ)です。ここは313文字です。

     『隣保協同』は災害対策基本法にも書かれている、国民ができる減災において重要事項です。
     保育所は公営と民営があり、立地も住宅街や駅前、企業内など多種多様です。保育園を騒音の源泉とみなされ対立してしまっている地域もあります。駅前のテナント型では昼間人口と夜間人口(住んでいる人)の差が激しく、保育所が近所付き合いするということも簡単なことではないと思います。
     さらに、医療的ケア児についてどのようにして理解を求め、協力関係を築くのかについても非常に悩ましいところです。

     筆者は住宅街の近くにある保育所に通っていた類いです。大人になる頃には保育所から半径500mに100人以上の知り合いが居ましたし、同級生が保育士として働いたりもしていたので、あの保育所であれば隣保協同は実践できるかなと思います。


     第8項目は『関係者・関係機関との支援体制の構築』(PDFファイルの248ページ)です。ここは271文字です。

     関係者や関係機関がずらりとリストされていますが、これだけの面々とつながり、患児のために働いてくださいとお願いするための費用や労力は、とくに初めての患児受入時には相当に重くのしかかると思います。
     『行政職員』や『医療機器取扱従事者』はだいぶざっくりした表現です。
     『医療機器取扱従事者の人、手を挙げて!』と言っても誰も手を挙げないかもしれないくらい珍しい言葉を使っています。製造や販売であれば会社が業許可などを持っていれば扱うことができますが、操作や保守点検は個人の免許等が必要になります。取り扱いといっても様々です。
     『行政職』『自治体に雇用されている』など広義に見れば教員も消防署員も行政職員です。下記リストは東京都教育委員会が募集した『行政系職員』です。

    • 非常勤看護師
    • 非常勤看護師(専用通学車両乗車)
    • 医療的ケア専門員
    • 学校介護職員
    • 非常勤介助職員
    • 学校特別支援教室専門員
    • 教育電話相談員
    • 監察指導専門員
    • 都立学校車両運行管理業務支援員
    • 都立学校ICT支援員(デジタルサポーター)
    • スクール・チャレンジド・スタッフ
    • 教育事務サポーター
    • 事務支援員
    • アシスタント職員
    • 都立学校経営企画室支援員
    • 給食指導支援員
    • 都立学校図書館専門員
    • 臨時的任用職員

     第9項目は『安全対策・点検』(PDFファイルの249ページ)です。ここは643文字です。

     ここも『参考』というレベルを超越し『転載』に近い記述が目立つように思います。

    保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き(国土交通省 水管理・国土保全局)
    保育所等における医療的ケア児の迅速かつ安全な避難支援を実現するためには、避難に必要な整備を確保しておく必要があります。施設利用者の迅速かつ安全な避難支援を実現するためには、避難に必要な設備を確保しておく必要があります。
    風水害は地震や火災とは異なり発災までの時間が様々であることから、早めの避難が原則となりますが、施設利用者の身体的負担の軽減や避難支援者の労力軽減、避難時間の短縮等を図る方法を確保しておくことが必要です。
    風水害は地震や火災とは異なり発災までにリードタイムがあるため、早めの避難が原則となりますが、施設利用者の身体的負担の軽減や避難支援者の労力軽減、避難時間の短縮等を図る方法として、平時にも利用できる「エレベーター」を避難設備として確保することが望ましいといえます。
    エレベーターは平時の移動方法としては確保しておくことが望ましい一方で、地震や火災の際には、閉じ込められる危険や避難が完了する前に停電等が発生する可能性もあります。避難時間の短縮等を図る方法として、平時にも利用できる「エレベーター」を避難設備として確保することが望ましいといえます。エレベーターは、避難が完了する前に停電等が発生すれば、避難に使用できなくなることも考えられます。
    こうした事態への対応方法として、エレベーターの代替えとなるスロープの設置、階段昇降機の設置、車いす等を保育士・看護師等が持ち上げることも想定した階段幅の確保等が考えられます。こうした事態への対応方法としては、停電対策としての非常用電源の設置やエレベーターの代替えとなるスロープの設置、階段昇降機の設置、車椅子等を支援者が持ち上げることも想定した階段幅の確保等が考えられます。
    避難に必要な設備については、医療的ケア児や移動を支援する保育士・看護師等の身体的負担や避難に要する時間等を考慮し、避難訓練の結果等も参考にして個々の施設の特性に応じたものを選択する必要があります。避難に必要な設備については、施設利用者や避難支援者の身体的負担や避難に要する時間等を考慮し、訓練結果等も参考にして個々の施設の特性に応じたものを選択する必要があります。
    停電対策として非常用電源装置を備える場合には、浸水を防ぐための設備として、土のうや止水板といった浸水防止用設備が考えられます。建物や非常用電源装置などへの浸水を防ぐための設備として、土のうや止水板といった浸水防止用設備が考えられます。
    非常用電源を設置する場合は、稼働時間に応じた燃料の確保にも留意が必要です。非常用電源を設置する場合は、稼働時間に応じた燃料の確保にも留意が必要です。

     第10項目は『避難について』(PDFファイルの249ページ)です。

     ここも『参考』というレベルを超越し『転載』に近い記述が目立つように思います。

    保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き(国土交通省 水管理・国土保全局)
    避難の実効性を確保するためには、災害の種別に対応した避難先を具体的に定めておく必要があります。避難の実効性を確保するためには、災害の種別に対応した避難先を具体的に定めておく必要があります
    避難先は、災害の種別によって異なる場合があります。避難先は、災害の種別によって異なる場合があります。
    洪水と土砂災害は降雨を起因としているため避難先は同一の場所になることも想定されますが、高潮は暴風、津波は地震を起因としており、避難先が変わる場合もあるので留意が必要です。洪水と土砂災害は降雨を起因としているため避難先は同一の場所になることも想定されますが、高潮は暴風、津波は地震を起因としており、避難先が変わる場合もあるので留意が必要です。

     福祉避難所についても記述があります。間違ったことは言っていませんが、理想的な内容かなと思います。患児が保育所に在籍する数年間、発災時に患児が保育所に居る確率、保護者と合流したあとの行動などを鑑みると、その児のために平時から福祉避難所について備えてもらうには、相当な努力が必要かなと思います。
     災害対策基本法施行令を掲載して『規定されています』と書かれていますが、その整備が進んでいるのかどうか、収容人数に患児を加えることができるのかどうか、しっかりと確認する必要があります。平時に確認が取れていても、福祉避難所の運営者も被災者である可能性が高いため、弊社では実現可能性を評価する取り組みを行っています。


     第11項目は『災害対策備品整備』(PDFファイルの251ページ)です。

     備蓄品管理について『避難所に予め整備しておく』方法を知りたいです。どのようにすれば個人向けの備蓄品を避難所に置く事ができるのか、これがスマートに実現すればガイドラインとして引用しやすくなります。

     『必要な医療機器を備えましょう』は非現実的ではないかと思います。ここで言う『医療機器』は何を指すかにもよりますが、医療機関でもなく患家でもない保育所に医療機器を備えることは容易なことではありません。

    保護者と話し合い、医師・看護師等話し合いの上必要な医療機器を備えましょう。

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     聞き方にもよりますが、医療機器メーカーが医療機関以外からの問い合わせに対して対応することは難しいと思います。基本的に医療機器を操作できるのは医療有資格者のみです。メーカーの者であっても患者使用時に直接操作することは法令違反です。
     用語の取扱いについても課題があると思います。人工呼吸器は専門用語を使わないと通じない内容が多いですが、それを理解できるリテラシーが無い人に、どれだけ説明しても理解は及ばないのではないかと思います。そもそも、医療機器の目的を理解することも簡単なことではありません。

    使用している医療機器については、あらかじめ災害時の対応方法について各医療機器メーカーに問い合わせ情報を得ておきましょう。

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     人工呼吸器については下記の記述があります。『自動変圧機能』とは何を指しているか筆者はわかりません。
     商用電源である交流100V入力で平時利用されますが、自動車からも電源が取れるよう直流12Vのポートを兼ね備えている機種が多くあります。

    人工呼吸器を使用する医療的ケア児

     災害時に、充電場所までの時間等を考慮して外部バッテリーで継続的に人工呼吸器が駆動できるか確認をしましょう。人工呼吸器の多くの機種は自動変圧機能が搭載されています。事前に何 V の自動変圧に対応しているか把握しておきましょう。
     また、内部バッテリーと外部バッテリーの併用で、どれぐらいの時間対応できるかをあらかじめ確認しましょう。
    ・外部バッテリー
    ・無電池呼吸器(蘇生バック等)
    ・加温加湿器
    ・予備の呼吸回路一式

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     持続時間については、弊社では独自のシステムを開発して、患児を守る取り組みを実践しています。人工呼吸器の停電対応について弊社代表が学会発表した演題が優秀演題賞を受賞しています。
     弊社では『どんぶり勘定』や『まことしやか』で患者の生命を失わないように、フィージビリティに真剣に向き合っています。


     予備バッテリの話題の所に『無電池呼吸器(蘇生バック等)』や『加温加湿器』などの記載がありますが、これらはバッテリではありません。もしかすると、何なのかわかっていないのに掲載したのではないか、と思ってしまいました。
     『蘇生バック』は英訳すると”Resuscitation back”で直訳すれば『蘇生に戻る』です。正しくは”back”ではなく”bag”です。Bag Valve Mask(BVM)という器具を使った用手換気という方法で、人工呼吸器の代替をすることができます。
     弊社では用手換気(BVM)の持続可能性、適正な換気の実施に向けた実証実験を行っています。メトロノームを使うことで、その精緻性が高まるという結果を得て、学会発表もしっています。


     おそらく医療機器個別の説明が始まっているものと思われます。吸引器には商用電源(AC100V)と車載電源(DC12V)が使えますよ、という事を言っていると思います。
     手動式や足踏式は少し使えば慣れますが、シリンジを用いる方法は看護師でも難しいので、保育士らがどこまでできるのかわかりません。

    吸引器を使用する医療的ケア児
    シガーライターケーブル等を利用して車から電源確保をすることもできます。
    ・外部バッテリー
    ・手動式吸引機、足踏み式吸引器
    ・吸引チューブと注射器(シリンジ)
    ・予備の吸引チューブ

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     酸素療法に用いる酸素の確保は重要ですが、最悪のケースでどのような代替手段が取れるのか、まずは患者に必要な酸素を送るという点に志向しての計画や訓練が必要だと思います。

    在宅酸素療法中の医療的ケア児
     酸素ボンベを使用しているこどもについては、予備の酸素を用意し、酸素の残量がなくなった場合には切り替えができるようにしておきましょう。また、在宅用液体酸素装置を使用している場合には、親器から子器への充填方法を習得しておきましょう。
    ・携帯用酸素ボンベ
    ・予備の酸素ボンベ
    ・予備のカニューレ
    ・予備の延長チューブ
    ・在宅用液体酸素装置(親機)

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     ここは更に雑になってきたような気がします。先ほどまで診療材料にまで及んでいた記述が、体内に注入する物だけになりました。
     経管栄養には栄養剤(食事)を入れるボトルやバッグ、それを身体まで送るチューブ、落差式ならばボトル類を吊るす器具、電動式であれば経腸栄養ポンプが必要になります。ポンプを使うならば電源が必要になります。

    経管栄養が必要な医療的ケア児
    ・経管栄養材
    ・経管注入用の水

    11.災害対策備品整備, II.平常時の備えについて, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     非常食については1日3食、最低3日分、大規模災害を想定した場合1週間分となっていますが、大規模災害を想定しない合理的理由はないので、非常食だけでも1週間分は備蓄してしまって良いと思います。

     食事は良いですが、内服薬を1週間分も保育所が預かって良いのかという点は疑問が残ります。もし紛失した場合にどうするか、発災時に期限切れの薬しかなかった場合どうするか、そういった管理責任を問われても医療従事者ではないがゆえに、責任を負えないとなるといったい誰が管理者になるべきか、といった未解決課題があります。


     第12項目は『ライフラインの対応策』(PDFファイルの256ページ)です。

     停電対策についての対応は重要です。
     外部電源の確保について、蓄電池の説明で『無停電電源装置(UPS)の活用』とありますが、蓄電池とUPSは同じではありません。UPSは蓄電池ですが、UPSではない蓄電池も多くあります。UPSを使うとなると、商用電源と医療機器の間にUPSを挟んで使う必要があるので、取り回しが大変です。
     発電機の注意点が一酸化炭素中毒とオイル交換になっていますが、それ以上に燃料備蓄が重要です。目標とする持続時間に合った備蓄量が必要です。ガソリンの場合、貯蔵量に法的規制があります。

     電気を使わない方法で『加温加湿器の代わりに人工鼻を使用』は医師の指示が必要なレベルの処置なので、保育所で判断するのは難しいかなと思います。

     断水対応について『ペットボトル等の飲料水を備蓄』はどのくらい必要になるのか、ちょっと恐ろしい量だなと思いました。100人の保育園児が居る保育所で1人あたり500mLのペットボトル3本としても300本、24本入りで12.5箱です。スタッフが20人、動き回るので1人6本だとして120本、5箱です。
     断水対応において『地域の災害拠点病院の活用』と書かれていますが、災害拠点病院には災害医療という仕事がありますので、断水を理由に患児を連れて行くというのは、救い得る生命を落とし得ることになるので、ガイドラインに載せるべき内容では無いと思います。

    これはブログ上の私見です。


    III.災害時の対応 ~想定にとらわれずに行動する~

     まず『災害発生』(PDFファイルの259ページ)から始まります。

     医療機器の確認について、主語が無くわかりにくいです。第3段落の『に注入を止めましょう』は経管栄養の話題だと思いますが、同じ段落で人工呼吸器の話になっています。津波避難の際に『蘇生バッグに切り替える』となっていますが、もしスタッフ1人で患児1人を運ぶとなると、人工呼吸器で自動的に換気した方が良い場合も多いので、この文章には注意が必要です。
     第4段落は医療機器とは直接関係ない全般的なことだと思います。

     第2項目は『災害直後』(PDFファイルの260ページ)です。

     情報収集の手段として下記とおり例示されています。このリストはよくあるものなので例示すること自体は問題ないですが、医療的ケア児の保護に必要な情報がどこから、どのタイミングで、どのくらいの信頼性で入手できるのは、平時から検証しておくべきです。
     弊社では、その訓練を実施するために多くの音源や動画を用意しています。

    主な情報収集の手段
    ・ TV 放送(ケーブルテレビを含む)
    ・ ラジオ放送(コミュニティ FM を含む)
    ・ 市町村防災行政無線(同報系)(屋外拡声子局、戸別受信機)
    ・ IP 告知システム
    ・ 緊急速報メール
    ・ X 等の SNS(Social Networking Service)
    ・ 広報車、消防団による広報
    ・ 電話、FAX、登録制メール
    ・ 消防団、警察、自主防災組織、近隣の居住者等による直接的な声かけ

    2.発災直後, III.災害時の対応, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

     安否確認については、システムの導入も検討すると良いですが、既に保育管理で使われている連絡システムで十分だと思います。

    これはブログ上の私見です。


    IV.業務の継続

     本章は1ページ(PDFファイルの262ページ)で終わります。

     冒頭は何となくわかるような、粒立てて説明するほどでもないような、そんな感じです。

     業務の継続は初動より大変なことですが、1ページでサラっと終わります。参考資料が建物関係の1つなので、建物関係で紙面の半分くらいを使っています。

    大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針
    内閣府(防災担当)
    https://www.bousai.go.jp/jishin/kitakukonnan/kinkyuutenken_shishin/index.html

    3.施設建物・設備の被害箇所と記録, IV.業務の継続, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

    これはブログ上の私見です。


    V.業務継続計画(BCP)の検証

     本章は2ページ(PDFファイルの263ページ)で終わります。

     BCPの見直しが必要である、PDCAを実施するという点は、そのとおりだと思います。

     途中、避難計画や避難訓練を実施してBCPの更新をするという内容になっていますが、避難よりも保育所に留まることの方が保育所固有の対応が必要になると思いますので、BCP的には留まることに重きを置いた方が良いと思います。

     第2項目の『教育・訓練』でも移動が中心的な話題になっています。前述と同様、移動よりも保育所に留まるための訓練が必要だと思います。

    医療的ケア児の避難計画はあらかじめ関係者・関係機関、地域の方々等へ共有し、避難訓練等を計画します。訓練実施後、BCP の課題を洗い出し、BCP の見直しや改善により BCP の更新を行います。

    1.業務継続計画(BCP)の検証の継続, V.業務継続計画(BCP)の検証, 保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン

    これはブログ上の私見です。




    まとめ

     調査報告書としての『保育所等における医療的ケア児の受入れ方策及び災害時における支援の在り方等に関する調査研究 報告書』は、そういうものかなという所感です。

     用語の使い間違いは、ミスタイプなのか、理解不足による誤用なのかによって、この報告書の見方は変わります。もし、知識不足などであれば、その分野に明るい人材を招聘して、調査をしてもらいたいです。

     調査報告やガイドラインのすべてに問題がある訳ではありません。非常事態への対応の部分に、違和感を覚えたという『私見』『所感』です。
     攻撃ではありません。誹謗中傷でもありません。私見です。炎上も拡散も希望していません。

     今回は調査だけでなく『ガイドライン』と謳って資料を付けているので、読み手側のリテラシーが低ければガイドラインを鵜呑みにして医療的ケア児の受入体制を構築してしまいます。リテラシーが低いからガイドラインを頼りにするという基本的な形を想像すると、鵜呑みにするケースは少なく無いと思います。

     災害について読み進めていくと、核心的な、専門的な領域に行くほど情報量が少なく、読み手からすれば選択肢がすくなく見えるため『この状況下ではこれしか選択肢がない』と勘違いする可能性もあります。もし、制作側に非常事態に精通した人材が無く、専門領域についてはコンテンツが少なくなってしまったのであれば、その旨を明らかにして欲しいです。あるいは、この選択以外はあり得ないということであれば、その根拠を明示して欲しいと思います。

     あくまで私見ですが、読み手側が注意して読まないといけないな、と思います。

     今回、うがった見方になってしまっているのは、随所に度を越えた参考、要するにコピペかと疑いたくなるような文章が複数で見つかったためです。
     読んでいて『どこかで見た文章』というのが多く、その一部は例を示して載せておきました。

     読み手である保育所の皆さんにはぜひ、体制構築や維持において非常時対応の専門家を招聘して頂きたいです。

     弊社でももちろん対応できます。
     人工呼吸器などの医療機器を臨床使用してきた医療従事者がコンサルタントであり、特に患児については研究成果もあり、受賞歴もありますので、他社さんには劣らぬ実力があると自負しております。

     弊社以外でも適任者は居るかもしれないので、患児のために、ぜひ専門家を招聘して頂きたいです。

     研修や訓練などのマネジメント(BCM)にも専門家の存在は重要です。どのようなシナリオで進めるのか、どのような課題を認識するのか、その課題に対し保育所としてどう対応していくのかといった対応力を磨く場面でもあるので、重要です。

     弊社では『目標志向行動』(GOA: goal-oriented action)を基本的な考え方として、途中の工程を学ぶのではなく、課題とゴールを示して、途中の工程を受講者に創作してもらいます。4チームあれば4通りの答えが出ることもあります。その4つの方法を受講者間で共有すれば、1回の研修で4つの手段を学べますし、その方法を創作した過程も後に役立ちます。
     弊社は実装される対応力の提供に努めています。

     我が子を預ける保護者の皆さんも、必要に応じてプライベートなアドバイザリーボードとして専門家を雇い入れても良いのではないかと思います。

     今回、非常時対応について専門感が薄かったので、もしかすると間違ったBCPやBCM(マネジメント)になってしまうかと心配になった、というのが結論です。

     まとめの途中、自社PRのようになってしまいましたが、患児に向いて仕事をしているので、この分野については熱が入ってしまいます。

     お話を聞いてみたいと思った方、お気軽にご連絡頂ければと思います。

     最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。

    これはブログ上の私見です。