地域に密着した医療を提供する阪神淡路大震災を経験した民間医療機関
特徴
こちらの医療機関様の特徴は以下のとおりです。
- 地域密着型の民間病院
- 在宅医療・訪問看護が充実
- 関連施設や附属診療所などを有する
- 病床規模は100~199床
- 3km圏内に海・山があり、10km圏内に100万人以上が住む都市部
地域の拠り所
地域の生活習慣病や慢性疾患を持つ患者らに頼られている病院です。
CT、MRI、エコーなど高額な医療機器を備え、標榜診療科は内科や外科以外にリハビリテーション科、精神科、緩和ケアなど幅広い病院です。
災害拠点病院とのすみ分け
同県の基幹災害拠点病院まで直線距離で5km、他の災害拠点病院も10km圏内の複数あるため高度な災害医療はそれらの医療機関が担うと考えられます。
大病院も多く立地する都市であるため平時は大病院志向の患者が多く5~10km先にある病院まで患者が流れて行っているが、災害時にはそこまで移動することが考えづらいため、当院にも患者が押し寄せることが想定されます。
南海トラフ地震
太平洋が近いため、南海トラフ地震は想定せざるを得ません。
一方で、過去に直下型地震で大きな被害に遭っている地域でもあります。
この医療機関様の特徴としては徒歩圏内、およそ2kmも歩けば『○○浜』という住所がある海まで行けます。
津波が発生した場合、そのエリアにある医療機関は使えなくなる可能性があり、少し山手にあるこちらの医療機関へ患者が殺到することも想定しなければなりません。
BCP方針・戦略
脅威の定義
津波を伴う南海トラフ地震のような大震災は想定すべき脅威でした。
直下型の大震災を経験している地域のため津波を伴わない地震も想定すべき脅威でした。
BCP策定当初は災害名を決めず、大きな震災を脅威としました。
提供すべき医療
地域の患者を守る、地域で発生する外傷患者を極力治療する、当院の努めはこのあたりにあると考えました。
重要業務は何であるかを検討してもらいました。
患者想定(シミュレーション)
地域防災計画では同院の立地するエリアが最大の震度となる想定であったため、患者発生率も高いと想定しました。
救急車で運び込まれるよりも、近隣住民が何らかの方法で連れて来る患者が多いであろうと想定しました。
当社にはシミュレーションした数値に基づき、後述する戦略や計画を策定しました。
BCP上の戦略と方針
災害という非常事態にも屈せず医療機関として提供すべきサービスを継続するためには戦略が不可欠となります。
シミュレーション
生活習慣病・慢性疾患
平時からインスリン注射などで来院する患者が多いため、慢性期疾患の患者に対する医療は規模を縮小することがあっても完全停止は難しいと想定されます。
外傷数
地域の人口は数十万人、震度予測はエリア最大、災害拠点病院までは5km以上という条件から負傷者数と自院への負荷を想定しました。
この数値をBCP上の仮説として、全体の調整にも用いられました。
救急搬送
想定外傷患者数と救急車稼働数は桁違いであると考えられるため、救急車が正常に運行していても台数不足になることがわかり、ウォークインで『近医受診』として当院にも患者が押し寄せるであろう予想が立ちました。
行動計画
大綱
ヒト・モノ・情報などそれぞれについて非常時に何が起こり、どのような行動を起こすのかを書き込んでいきました。
その行動に必要となる備蓄なども併記しました。
重要業務
戦略策定時に掲げた重要業務に対する行動計画を立てました。
例えば人工呼吸療法を重要業務とし、その継続を計画する場合、患者の安全が確認できたあとで装置の正常性を確認、次に酸素ガスや電源の確保を確認することになります。
どれか1つでも欠落すると本業務の継続は困難となりますので、確認方法やバックアップ手段について深掘りすることになります。
職員参集と受援
病院自体が地域に根差しているため、スタッフも比較的地域性が強いため、比較的高い率で参集可能と想定されました。
大枠で関連する医療機関が全国に点在しているため、発災3日後には多くの受援を得られることが考えられました。
情報発信
災害時の情報収集は当然のこととして行われると思います。BCPにもその手段や頻度などを明記しています。
当社では情報発信の重要性についてもご案内しております。
BCM
マネジメント
BCPは計画です。希望も含めた内容を盛り込んだ文書であるとも言えます。
その計画が最適に実践されるためにはマネジメントが必要になります。
当社ではBCP策定のみならず、BCMについてもお手伝いさせて頂いております。
調整
マネジメントの重要業務として各種調整があります。
院内調整としては備蓄量の調整や職種横断的な役割分担など多種多様です。
院外にも調整先があり、例えば市役所の水道局や交通局、医薬品卸会社や門前調剤薬局、同じ診療科を持つ近隣の医療機関も調整相手となることがあります。
訓練
災害訓練に立ち会いました。
訓練を実施することで課題が抽出できるだけでなく、スタッフの皆さんが自身の進捗を把握でき自信を持つ事につながる場合もあります。