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薬剤師のトリアージ・保険調剤薬局の判断 | NES’s blog

高熱患者に薬を渡さない??


薬剤師トリアージ

 保険調剤薬局に処方箋を昼前に持参した患者。

 店内に客は2人しか居ないが、処方薬が用意できるのは2時間半後との事。
 お昼に飲みなさいと言われた薬はスキップしなければならない。

 『お昼のお薬を飲まなくても大丈夫なのですか?』と訊ねる患者。
 すぐには用意でに無いの一点張りの薬局。
 患者は諦めて一旦帰宅。

 あとで薬剤師に聞くとトリアージをして、微熱だと思ったと言います。
 今のやり取りの中で熱の話題は一言も出て来ないそうです。
 しかも、事務員としか会話をしていないそうです。
 どのような方法で微熱と判断したのか、まったくわからない、というのが現状です。

 慢性期のお薬で数時間の差もあまり関係なく、また残薬もあるような状況とは違い、急性期の患者で薬が手元に無くて困って受診し、診察の結果処方されたお薬が手に入らない、この状況は危機的であると考えます。



配達不可

 高熱の中、薬を取りに調剤薬局まで行くことが困難な病状になりました。

 保険調剤薬局に電話して配達できないか聞いたところ、不可能という回答。

 保健所に電話して、処方薬を配達してもらえる店舗は無いか訊ねたが、既に処方箋を渡してしまっているのであれば、その原本を取り戻して配達可能な調剤薬局に依頼しなければならないとのこと。
 結局、調剤薬局に行くという行為は同じ

 配達さえしてもらえれば。

 



1錠でも….

 最初に処方箋を持参したとき、解熱剤を1錠だけでも先に渡すということは考えなかったかと薬剤師に聞いても、プロとしてトリアージした結果、この患者には必要がないと考えたとのこと。

 保健所の方々や、病院の医師・看護師は異口同音に『1錠だけでも先に』といった言葉が聞かれた。

 この患者、高熱を理由に救急搬送されました。
 処方薬が用意できている時間に調剤薬局を訪れましたが、お薬を受取る前に倒れて救急搬送。
 解熱剤を投与されて回復、主な処置はそれだけでした。

 やはり、昼食時の分の解熱剤さえ貰えていればと悔やまれます。



患者の自己責任

 この調剤薬局では『○○時頃になります』と言われて帰宅した患者に対し、『帰ったのは自己判断なので薬を出さなかった薬局に責任はない』『○○時とは言っていない』との見解があとから示されました。

 帰ったという自己判断、患者の責任となったので、すぐに薬を出さなかったのはトリアージしたからという話題はどこかへ消えました。

 時刻を言っていない、勝手に勘違いして帰ったとも言わんばかりの口撃もなかなか強かった印象が残ります。

 ただでさえ高熱で判断力が乏しい患者、医学や薬剤の知識に乏しい患者、それを多忙が理由で薬の提供が遅れたはずが、自己判断で帰ったので調剤薬局に責任は無いという主張は、いまのところまかり通る事になっています。




薬剤師の対応は適法か!?


 薬剤師たる者を基底する法律には薬剤師法があり、その業務には療養担当規則が適用されます。

 高熱患者を、自店の多忙を理由に帰らせることは適法なのでしょうか。
 患者が自己判断で帰宅すれば適法化してしまうのでしょうか。

 法解釈には専門知識が必要ですので、ここでは患者から聞いた話と法律の条文を比較するにとどめておきます。

薬剤師法

薬剤師法施行令

薬剤師法施行規則

保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則



薬剤師法

 薬事法第一条は以下のとおり。

第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

 法律ですので、解釈により曖昧さもあります。『国民の健康な生活を確保』については幅が広いですが、『薬事衛生をつかさどる』はわかりやすいです。

 一般国民は、処方薬を薬問屋から直接買う事ができません。
 処方箋に基づき、調剤薬局で受け取るしか方法がありません。
 すなわち、保険調剤薬局の薬剤師が処方薬を受け渡す事のできる唯一の存在と言っても良いと思います。

 薬事衛生をつかさどる立場にあって、患者が持つ限られた手段であり一般的に普及もしている保険調剤薬局へ出向いて薬剤師から適正な医薬品の供給を受けようとする患者に対し、その供給を適正に行わなかったことで患者の健康危害が生じた事は看過できない問題かもしれません。



保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則

 第一条および第二条は以下のとおり。

第一条 保険薬局が担当する療養の給付及び被扶養者の療養(以下単に「療養の給付」という。)は、薬剤又は治療材料の支給並びに居宅における薬学的管理及び指導とする。

第二条 保険薬局は、懇切丁寧に療養の給付を担当しなければならない。

 保険薬局とは、どのような仕事をすべきかといった事が規定されています。