看護業務は多種多様
1人の患者に対する診療をみても、いくつもの業務が関わります。採血や血圧測定、問診、点滴、食事、精算、ベッドメイクなど1泊の検査入院でも数十はあります。
一般病棟であれば50床分の業務が並行して行われます。
病院全体でみれば病棟や外来以外に、手術室、検査室、処置室、中央材料室など専門分化された部門ごとに業務があります。
日常業務としての看護はマルチタスク、さまざまな事を習得していなければ業務ができません。
ME機器は多種多様
医療機器の高度化や普遍化により診療水準は底上げされてきましたが、機器を扱う側にとっては覚える事が増えました。
聴診器、体温計、血圧計、パルスオキシメータなどは以前から測定原理が変わらず形状も似ているため新機種が発売されても学習すべき差分は少ないです。
バイタルサインモニタ(ベッドサイドモニタ)や人工呼吸器などもさほど新しい機能は加わっていませんが、メーカー毎に操作性が異なるため機種毎に覚えるべきことが発生してしまいます。
また、心電図や呼吸管理について自信がない看護師にとっては機種間の差の前に、そもそもの原理や用語の理解にも苦しむ場面があります。
専門性の高い医療機器は、専門家にとって『普通』のレベルではありますが、関わりの薄い人にとっては難解な機器である場合が多くあります。
生命維持管理装置の動画マニュアル
COVID-19で知られるようになったECMO(エクモ)は体外に血液を導き出して酸素を加え、再び体内に戻す治療法ですが、これに使われる装置はPCPS(percutaneous cardiopulmonary support, 経皮的心肺補助法)と呼ばれる物です。
心臓や肺が著しく機能を損なっている患者に対して使われるので救急やICU(集中治療室)で使われます。
ときには1分1秒を争うときもあり、PCPSを組み立てる作業(プライミング)はミスなく最短で行わなければなりません。
PCPSの保有台数は大病院であっても何十台もある訳ではなく関わるスタッフは限定的です。実際の患者に使用される物でプライミングを経験できるスタッフも限定的です。
緊張感ある臨床でミスなく、時間通りに作業ができるようにと動画マニュアルを制作した事があります。
弊社代表の西謙一もこの研究に参加しています。約10年前の研究です。
平時に見るマニュアルは教育的、要点を説明しながら本番でのミスを回避しようと制作されています。
実時間バージョンのマニュアルもあり、こちらはベテランスタッフが落ち着いて作業している様子を撮影しており、ノーカットで実際にかかる作業時間分の動画となっています。
慌ててしまう場面ではありますが、並走者が居る感覚で動画を見ながらプライミングができる、何よりもミスをしては時間ロスが大きいのでミスを生じさせないことが第一、それを実現できる動画を私たちは制作しました。
[Link] 上園惠子: PCPSプライミングにおけるDVDによる教育効果, 2012(平成24)年度循環器疾患看護研究助成研究業績報告集, 公益財団法人循環器病研究振興財団
ミスのポイントをおさえる
マニュアルづくりで注意を払う点は、予見できるミスを回避することです。
機器が動作するための方法については習得は早いです。機能しなければ使えない訳ですから、その点は関心事です。
機器に対する危険予知ができない状況を、危険予知もできるオペレーターに育成するために、動画にも工夫を凝らします。
現在は国立循環器病研究センターを離れて企業として仕事をしていますが、その生業の中でも看護業務マニュアルの制作に関わることがあります。
過去の経験を活かし、業務が円滑に進むように、そして安全が守られるように、陰ながらサポートさせて頂いております。