今日の昼前、近所の中学校で熱中症の集団発生がありました。
体育大会の練習中に吐き気や頭痛を訴える生徒が複数発生したということで、ほとんどが女子生徒だったそうです。
昨日は大阪女学院中学・高校で同様の熱中症集団発生があったところでした。
NHK: 熱中症か 学校で搬送相次ぐ “本格的な暑さ前に汗かく機会を”
カンテレ: 生徒22人が病院搬送 熱中症か 体育大会の練習中に 生徒は「マスクは皆していた」 尼崎市立中学校
NHK: 中学校で熱中症か 生徒22人搬送 体育大会の練習中 兵庫 尼崎
毎日新聞: 体育大会練習中10人熱中症か うち6人歩けず 兵庫・尼崎の中学校
MBS: 【速報】中学校の体育大会練習中に生徒10人が熱中症の疑い 兵庫・尼崎市
いつもと違う
1.救急車
今回の熱中症集団発生の現場の隣は、尼崎市消防局北消防署です。今週だけでも、この前を通るのは3回目です。
この消防署のすぐ南には『桂木』という交差点がありますが、私が通る直前にこの桂木交差点を救急車が右折していきました。
北署は市内の最北端の消防署、これより北側には消防署はないので、救急要請があれば北署から出発すると思いますが、このときに北署には2台の救急車が停まっていました。
普段、2台停車しているのを見る事はありますが、3台目は見る事はなかったです。しかも最前列に2台あるので、あの3台目はどこから来たのか気になりました。
救急車についてはもう1つ気になったのが、車体です。
正面から見て左側に停まっていた救急車は見慣れない感じの車体でした。
消防署には、普段は使わないが有事に対応できるように古い車を残していたりしますので、そのような車両なのかなと思いながら、このときは通り過ぎました。
2.病院に女子中学生が複数
今日は予約していた検査の日でしたので、近くの総合病院へ行きました。
まずは血液検査ということで2階に行くと、救急外来前に中学生らしき子が居ました。
表情は元気そうでしたが、点滴がつながっています。
普通の外来待合で点滴をうち、落としているのは特に難しいことも書いていない輸液なので、何となくですが補液して水分調整しているのかなと思いました。
中学生が他にも居たのと、付き添っている人が親というよりはお姉さんというくらいの年齢で、ジャージっぽい服装だったので、熱中症かなというくらいで通り過ぎました。
ただ、同じ制服を着た子が他にも居たこと、時間が13時なので定期通院の予約を入れるような時間でもないことから、もしかして集団での熱中症かなと思いました。
ワイドショー
近辺をヘリコプターが飛んでいるということで、おそらく近くの学校で何かあっただろうと思いました。
飛んでいたヘリはテレビ局のものだったようで、学校前からの中継もありました。
そして、帰りにも同じ道を通って帰るので中学校の前を通ると救急車やパトカーはありませんでしたが、校門には先生らしき人が立っていて、少し北側にマスコミが歩道を塞いでいました。
熱中症の集団発生は防げるか?
熱中症は毎年発生しています。
高温・高湿の日にあちらこちらで同時多発的に熱中症患者が発生しています。
一カ所で集中的に発生している訳ではありませんが、救急隊や病院から見ると短時間に10件も搬送があれば多いなと感じることでしょう。
条件が揃えば老若男女を問わず熱中症が発生するので、その条件下に多人数が居れば同時に熱中症になってしまいます。
防ぐためにはどうするかと言えば、熱中症になる条件下に集団で居ないことです。
まずは『集団』に注目して、同じ環境下に置かないようにすることで被害を軽減できます。
近隣他施設の情報も重要です。
保健所や教育委員会などからアラートが発せられると良いのですが、ニュース報道も重要です。
この日の前日、大阪女学院では30人程が搬送、入院者も出る程でした。
予見可能性
熱中症を警戒することができます。
環境省では熱中症予防サイトを立ち上げており、翌日の熱中症の警戒レベルを公表しています。
明日6月4日は西日本では『警戒』のレベルです。対応として『積極的に休息』ということなので、あまり活発な行動はしない方が良さそうです。
建築職人などは生業として身体を動かさなければならないので、休憩や水分補給を挟みながら体調管理して、暑い中でも動き続けます。
学校の行事や部活は、それをしないという選択も採れるはずですので、勇気ある撤退を積極的に採用すべきです。
今回の体育大会の練習というのも、翌週には大会があるから事前練習が必要だという考えが職員間にあったのかもしれませんが、そこに『明日は止めましょう』と言える勇気があり、その勇気を称賛できる環境があれば防げたかもしれません。
重要業務と脅威
弊社のBCPコンサルティングでは、最初に重要業務のリストアップと脅威の同定を行います。
学校という環境であれば教育が重要業務ですが、教育を提供する側と受ける側では優先度が変わってくると思います。
教育を受ける側としては、学校は休まず通学して漏れなく受けることに意義があるかもしれません。
その通学を阻む要因に体調不良が在ります。
熱中症になれば、その日の授業は受けられない、入院すれば数日は受けられない、重症の場合は一生授業に出られないかもしれません。
生徒からみれば、体調維持のために校庭での行進の練習に参加したくないと思っても、従順な中高生は先生に意見することもないでしょう。
しかしながら結果を見ると、11時頃に発症して救急搬送されて13時頃はまだ病院で点滴、15時頃にようやく会計をして病院を出れた子も居たのですが、この時点で学校に戻っても授業は残っていないでしょうし、頭痛などもあるので部活動もできないでしょう。
教員が40年の勤務の中で1度の失敗だったとしても、生徒にとっては3年間の中の1日、そして横並びに100万人規模の受験ライバルたちが居る中で、生徒にとっての重要業務である授業への参加機会が奪われたことは大きな損失です。
体育大会での入場行進が揃っていないことで逸する利益と、20名以上が受診し授業を受けられないことで逸した利益とを比較する必要があります。
それを教員、生徒、保護者ら立場の違う者が、平等な立場で考えをぶつけることに意義があります。
意見交換の末、何が重要であり、何が脅威となるのかが見えてくると思います。
熱中症リスクは校庭に
2022年6月3日は気温が30度に迫る予報でした。
そして、神戸気象台の前日の最高気温は28.6度、前々日は25.7度、その前は24.9度ということで、30度級の気温にはまだ慣れていない時期でした。
さらに、前日の湿度は60%、前々日は48%と乾燥傾向でした。
最高気温は百葉箱での温度なので、炎天下の校庭では35度を超えることを予想すべきです。
下図は自験例ですが、日陰の気温が30度程でも、日なたは45度くらいになるというものです。
どのような服装で、何分くらい校庭に居たのかわかりませんが、もしかすると40度に迫る気温だったかもしれません。
このエリアでは数日、局所的に短時間の雨が降ることが多々あったので、校庭の土には水分を含んでいた可能性があります。
高温に多湿、熱中症リスクは高まります。
マスク
2022年5月末、屋外で2m以上の距離が保てる場合などではマスクを外しても良いという見解が政府から示されました。
ただちに学校でもマスクを外せるかというと、そう簡単なものではありません。
2mの距離を保ち続けることはできるのか、会話を『ほぼしない』というのはどの程度のことを言うのか、そもそも数百人が校庭という限られた場所に居るときは密に近いのではないかなど、考え方はまとまっていない時期です。
実際、風上に感染者が10人居たとして、風下の人にウイルスが飛んでこないかと言われて、安全を宣言できる人は居ないと思います。
安全でない環境であれば、安全を確保するためにはマスクを着用することで、身の安全を守るでしょう。当然の行動です。ここで教員が『マスクをしてはいけない』という方がアカハラのような問題になると思います。
しかしマスコミの見方は違うようで、マスクを外させなかったことを責めているようなシーンを見かけました。
日本経済新聞:コロナ政策転換へ一歩 入国検査、8割免除 屋外で距離2メートルならマスク不要に(2022年5月21日)
以前とは異なる状況を理解
昭和の時代の体育大会といえば秋、10月10日の体育の日に合わせて開催されるイメージでした。
ところが、9月や10月は暑い、受験シーズンにも近いといった背景もあり5~6月に開催されるケースが多くなりました。
農村部では稲刈り時期を外して開催していたので、そのノウハウが活かされたこともあったようです。
しかし今は6月でも30度を超す気温、身体は暑さに慣れていない時期、その上マスク生活ということで、熱中症リスクは非常に高くなります。
せめて『全員水筒持参で校庭集合』としたり、『日向には3分しか居てはいけない』というルールを作ったり、熱中症に対する危機管理を改めていくべき時期でもあると思います。
雑にBCP
少々雑ですが、熱中症BCPについて実例を考えてみたいと思います。
対象者や脅威を何にするのかでだいぶ内容が変わりますが、今回は未来ある子供たちを中心としたBCPを考えてみます。
学校熱中症BCP(参考例)
目的
熱中症を遠ざけ、教育の機会を逸しない。
方針
熱中症による機会損失を生み出さない。
脅威
熱中症により現場を離れなければならないこと。
現場を離れた事で受けられるはずの授業が受けられず、食べられるはずの給食が食べられず、共に過ごせるはずの友人らとの時間を過ごせないことなどが、生徒にとって不利益である。
生徒に不利益を与えないことが教員や保護者の務めである。
重要業務
学生生活をつつがなく送ること。
優先事項
熱中症と密接に関わる気温や湿度などの気象情報を把握し、条件が良くない場合には運動などを実施することで得られる利益と、熱中症によって失われる利益を比較検討する。
教員や生徒が注意しても避けがたいリスクがある場合は、そのリスクについて生徒らに説明をし、理解の上の同意が得られた場合に限り実施する。
年次計画や教育方針などを優先してはならない。
熱中症リテラシー
教員、生徒、保護者のいずれも熱中症に関する基本的な知識を身に付け、共通した情報に基づいて個々が判断できるように教育を受ける。
熱中症指数や気象条件など科学的データが示すことは、経験則より優先されることを共有する。
必要に応じて医師や看護師、保健師ら有資格者からの適切な指導を受ける。
主訴尊重
体調不良がある者の訴えを聴く事は当然のことである。
体調を崩しそうな予兆を感じた生徒らの訴えにも傾聴し、休憩など必要な対応を実施する。
暑さへの順応性には個人差があることに留意する。
水分補給の自由確保
身体を動かす場合や屋外等の過酷環境で実施される授業や部活動などでは、いつでも水分補給ができることを周知する。
水分補給を制限する場合、その理由を説明する。その場合、完全に制圧するものではなく、緊急回避的な逸脱行為が認められることを必ず説明する。
時間短縮の励行
指導や訓示などは短時間であっても相手に響く言葉を選び、簡潔に述べるよう努める。
屋内でのシミュレーションなども併用し、冗長な説明などは行わない。
失敗の許容
予定どおりに完遂することを結果とせず、失敗も許容する。
失敗を許さない風潮は、間接的に無理をさせることになる。
健康増進
熱中症に抗うために有用とされる健康状態があれば、それに近づくよう各人が努力する。
熱中症発生時
現に体調不良の者(体調不良群)、体調が悪くなりそうな者(予備群)、その他の者(健全群)などグループ分けし、それぞれのグループに担当職員を充てる。
新たな患者を発生させないために予備群や健全群は速やかに安全な場所に退避させ、互いに健康状態を観察し合うよう指示する。
特に予備群は教員による観察ができるよう目の行き届く場所に留まらせるなど保護するよう努める。
体調不良群は生命や健康に重篤な危害を与える恐れがあるため、速やかに受診の機会を与える。
体調不良群と予備群が大人の数に比べて多いと感じられた時点で消防や市役所に連絡し救援を要請する。
発生情報の共有
熱中症が発生した場合、教育委員会等を通じ近隣施設へ情報共有を行う。
情報提供を受けた場合は速やかに対応を協議する。判断がつかない場合は一時的に中止した上で協議を続ける。
ECPやSCPかも?
BCPのBはbusiness、事業や業務です。CPはcontinuity planなので継続計画です。
生徒を中心とするならば、EducationやSchool lifeなど教育や学生生活の継続計画とした方がスッキリするかもしれません。
教員の立場であれば、自らの生業である学校という組織の継続計画になるのでBCPで問題ないかと思います。
その場合、重要業務が『体育大会を計画どおりに実施』ということ、脅威が『秩序を乱す行為』などとされてしまうと、軍隊行事を想像するようなキッチリ揃った行進、誰一人として声を発しない静寂の式典などが理想とされて、その練習に参加しない、練習ができないことが問題になってしまうかもしれません。
『熱中症になる方が悪い』『熱中症にならないように努力しろ』などと竹やり式にBCPを作られてしまうと、熱中症にならないようにする方策が、努力と根性になってしまいそうです。
実際にBCPづくりをシミュレーションしてみると、議論すべき点が多い事象であることがわかりました。
もう少し、熱中症に向き合っていくべきかなと思います。
電力逼迫で更に危険
withコロナやpostコロナなどという言葉も耳にしますが、マスク着用などの新常態は今後も続いていくことでしょう。
ここにきて島根の原発再稼働が決まりましたが、北海道の泊原発では裁判が続いています。
原発が停まって以来、日本列島は電力不足が深刻な状況です。
2022年は夏・冬の電力ピーク時に計画停電が実施される可能性があるほど逼迫しています。
真夏に停電すれば、エアコンも扇風機も冷蔵庫も使えません。コンビニは臨時休業、自動販売機は停止、冷たい飲み物も買えません。
学校では高置水槽への揚水ポンプが停止して、水が出ない状態になるかもしれません。
もし生徒500人が3リットルのトイレ用水を使えば、1,500リットルの消費です。高置水槽の何割かが無くなります。
水筒持参とはいえ、エアコンが使えない中で授業となると屋外も屋内も関係なく猛暑になるかもしれません。
熱中症の兆しが出て身体を冷やそうと水道の蛇口をひねっても水が出なければ、それだけで切迫感が生まれます。
多感な中高生であれば、想定外の事が起き、解決策が見つからないことでパニックを起こすかもしれません。
1人が過呼吸になって、連鎖して何人もが発作を起こす事も考えるべきでしょう。
単に電力逼迫ということではなく、教育活動や学生生活に与える影響もしっかりと見据えなければなりません。
blog
今回は、偶然にも近所で熱中症の集団発生があり、偶然にも患者と接することがあったので、blogという形で話題に触れてみました。
会社の公式見解ではなく、blogでした。